映画『82年生まれ、キム・ジヨン』レビューとイラスト※ネタバレなし

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映画『82年生まれ、キム・ジヨン』あらすじ・概要

平凡な女性の人生を通して韓国の現代女性が担う重圧と生きづらさを描き、日本でも話題を集めたチョ・ナムジュのベストセラー小説を、「トガニ 幼き瞳の告発」「新感染 ファイナル・エクスプレス」のチョン・ユミとコン・ユの共演で映画化。結婚を機に仕事を辞め、育児と家事に追われるジヨンは、母として妻として生活を続ける中で、時に閉じ込められているような感覚におそわれるようになる。単に疲れているだけと自分に言い聞かせてきたジヨンだったが、ある日から、まるで他人が乗り移ったような言動をするようになってしまう。そして、ジヨンにはその時の記憶はすっぽりと抜け落ちていた。そんな心が壊れてしまった妻を前に、夫のデヒョンは真実を告げられずに精神科医に相談に行くが、医師からは本人が来ないことには何も改善することはできないと言われてしまう。監督は短編映画で注目され、本作が長編デビュー作となるキム・ドヨン。(映画.comより)

映画『82年生まれ、キム・ジヨン』感想

日本でもベストセラーになったチョ・ナムジュの同名著書を映画化した『82年生まれ、キム・ジヨン』

著書はまだ未読なのですが、私自身83年生まれで同年代でもあり、
主演のチョン・ユミは以前たまたま観た韓国ドラマで好きになった女優さんだったのもあって何となく観たいなぁと思ってた映画です。

ちなみに、今作を観たのは『徳島でみれない映画をみる会』という、
徳島では上映されなかった映画を楽しむ会にて。
徳島は以前住んでいた大阪と比べて、地方ということもあり映画館の数も少なく、
上映されるのもビッグタイトルが主。
なので、こういう徳島での上映スルー作品を大画面で楽しめる会を月一で開いてくれるのはありがたいことです。

今回はご縁あって映画好きの知り合いの方に教えてもらって会に初めて行ったのですが、
大空間でみんなで映画を観るという経験はやっぱり良いものです。

徳島にお住みの方で映画がお好きな方はぜひHPご覧下さい。

 

さて、肝心の作品についてですが、バリバリ働いてた女性が結婚と出産を機に育児に専念するも、
徐々に精神に異常をきたし、突然誰かが憑依した様な言動を取り始める。
それもそのときのことを本人は覚えていない・・・・なんていうちょっと怖くも聞こえるストーリーですが、
子育て世代、働き盛り世代、主人公と同じ世代の女性にはどんな境遇であれ突き刺さるであろう内容になっています。

私自身、前述したように83年生まれで同年代、そしてジヨンと同じように2歳近くになる子供を育て、
外に出て仕事をするわけでもなく(一応イラストレーターとしてお家で仕事はしてますが)、
ほとんどの時間を子供と過ごしています。

ジヨンと違うのは旦那さんもフリーランスで家にいてくれること。
その点、ジヨンはまだ言葉でのコミュニケーションもままならない子供とずっと二人っきりでいるのだから、
本当に精神的に辛くてたまらないだろうな、と思う。

それでも私自身、たまに子供と二人っきりになった途端に急に恐怖に襲われることがある。
子供が可愛いのは当然なんだけど、イヤイヤ期に入りつつある子の泣き声を聞き続けるとこちらまで泣きそうになる。
一日中子供と向き合っていると、まるで自分自身が消え入るような、胸にぽっかり穴が空くような、
そんな虚無感に襲われることがある。

ジヨンのように憑依する、なんてことはもちろんないけれど、
自分を失いそうになるという比喩としては頷けるのです。

 

劇中では、子供や母親への風当たりがまるで昼ドラのように過剰に描かれているけれど、
そこから浮き彫りになるジェンダー問題がリアルです。

女性が社会で活躍するのが当たり前の時代であるものの、
出産によって仕事を一度離れなければいけないのは女性であり、
ジヨンのように長期的プログラムに参加できず、昇進できない女性が世の中にまだまだいるのではないでしょうか。

仕事の面だけではない。

女性としても母としても妻としても、「こうなくてはならない」という固定観念に締め付けられて苦しんでいる人は多くいるよな、と今作を観てて思いました。

特に胸にきたのは、ジヨンの父親が放った、「スカートが短いぞ、不注意の奴が悪いんだぞ」という言葉。

娘が襲われる一歩手前だったのに、よくもそんなことが言えるなと怒りが湧いてきましたが、
実際世の中にそういう考えの人は多数いるんだろうな、と。

「露出度の高い服を着る方が悪い」「派手な格好してる方が悪い」そんな言葉で二次被害をもたらしてなるものか。
絶対に悪いのは加害者なのだから。

女性は大人しくいるべき、必要以上に笑いかけず、相手に誤解されることのないように。
そんな父親の考えは古臭いと一掃したいけれど、私の父親もそんな考えを持っていたように思う。
他界してしまったので、今振り返ってなんとなく肌で感じるだけだけど。

同世代の30代後半の女性は、もしかしたら同じように女性像を押し付けられながら育った世代なのかもしれない。

だからこそジヨンと同年代の女性には『82年生まれ、キム・ジヨン』を観て欲しい。

女性や妻、母親という器の中で生きなくてもいい。
そして自分は一人ではない、子育てでずっと家にいたとしても、ちゃんと社会と繋がっている。
自分を見つめ、自分を大事にしてあげたい。

そんな希望を抱いて前に進める作品です。

 

なんか今回テーマがテーマだけに真面目に書いちゃったけど、
たまにはヒューマンで社会派な作品もいいわね。

あっ、最後に言っときますけど私の嫁姑事情はとっても良好です。

アサミヤカオリ

イラストレーター/造形作家/映画コラムニスト/漫画家

1983年生まれ。大阪出身。
2018年より徳島に拠点に移して活動中。

AWAP『映画コラム』/ BRUTUS『赤恥研究所』連載中
B級映画/ラジオ/観葉植物好き。最近は22時就寝5時起きで制作がんばってます。メキシコ行きたい。

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