2018年アカデミー作品賞『シェイプ・オブ・ウォーター』レビューとイラスト ※ネタバレあり

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92点
 

アカデミー作品賞最有力候補! 祝・受賞!!

 

概要

『パンズ・ラビリンス』などのギレルモ・デル・トロ監督が異種間の愛を描き、第74回ベネチア国際映画祭で金獅子賞に輝いたファンタジー。米ソ冷戦下のアメリカを舞台に、声を出せない女性が不思議な生き物と心を通わせる。『ハッピー・ゴー・ラッキー』などのサリー・ホーキンスが主演し、『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』などのオクタヴィア・スペンサー、『扉をたたく人』などのリチャード・ジェンキンス、『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』などのマイケル・シャノンらが共演。(シネマトゥデイより)

あらすじ

1962年、米ソ冷戦時代のアメリカで、政府の極秘研究所の清掃員として働く孤独なイライザ(サリー・ホーキンス)は、同僚のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)と共に秘密の実験を目撃する。アマゾンで崇められていたという、人間ではない“彼”の特異な姿に心惹(ひ)かれた彼女は、こっそり“彼”に会いにいくようになる。ところが“彼”は、もうすぐ実験の犠牲になることが決まっており……。(シネマトゥデイより)

一昨日『スリー・ビルボード』のレビューを書いたところですが、続いてはもう一つの本年度アカデミー賞最有力候補『シェイプ・オブ・ウォーター』についてレビューしていきたいと思います!

すでにゴールデングローブ賞で監督賞と作曲賞、ベネチア国際映画祭金獅子賞をとっている本作。

3月5日(日本時間)に発表されるアカデミー賞にも最多13部門でノミネートされており、現在最も注目度の高い作品です。

3/5 追記 → アカデミー作品賞・監督賞・美術賞・作曲賞の四冠に輝いたそうです!

そんなわけで、アサミヤも気合を入れて昨日3月1日の日本公開初日に劇場で観て参りました!

ちなみに、『スリー・ビルボード』のレビューにも書きましたが、現在まで日本で公開されているアカデミー作品賞ノミネート作品については全て本ブログで紹介しておりますので、ぜひそちらもチェックでござる!

2018年アカデミー作品賞ノミネート作品

◆スリー・ビルボード(日本公開:2018/2/1)

https://thegeekstandard.com/2018/02/28/post-2369/

◆シェイプ・オブ・ウォーター(日本公開:2018/3/1)

◆ゲット・アウト(日本公開:2017/10/27)

https://thegeekstandard.com/2017/11/20/post-1942/

◆レディー・バード(日本公開:2018/6月)

◆ダンケルク(日本公開:2017/9/9)

https://thegeekstandard.com/2017/09/14/post-1605/

◆ファントム・スレッド(日本公開:2018/5月)

◆君の名前で僕を呼んで(日本公開:2018/4/27)

◆ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男(日本公開:2018/3/30)

◆ペンタゴン・ペーパー/最高機密文書(日本公開:2018/3/30)

孤独な人やモンスターへの愛に満ちた作品

この映画に出てくる人物はみんな孤独です。

主人公であるイライザは声が出ず、同僚であるゼルダは黒人であり、ホフステトラー博士はソビエトのスパイであり、イライザの隣人であるジェイルズはゲイで身寄りもない・・・誰もが事情を抱えながら孤独に生きている。

欠点を持ち、社会からはじき出された人々が、これまた孤独な半魚人を起点に繋がり、行動を起こしていくわけです。

ギレルモ・デルトロ監督はモンスター好きで知られていますが、なぜ彼がモンスターが好きかというと「嘘をつかず、あるがままに生きるから」なんだそうです。

ギレルモ監督は言います。

僕にはなにが”普通”かわからない。”普通”は恐ろしいと思う。だって完璧に普通な人なんていないんだから。

モンスターは完璧であることに迫害された聖人なんだ。

『シェイプ・オブ・ウォーター』に出てくる半魚人もしかり。

”普通”ではない半魚人は、”普通”に生きようとする人間たちに殺される立場のモンスター。

視点を変えると、イライザを始め先に述べた社会から外れた人々も決して”普通”ではないし、”普通”の人々から迫害される立場なのです。
ギレルモ監督が注ぐ愛はモンスターにはもちろん、迫害され孤独を抱えた人々にも優しく降り注いでいます。

真のモンスターは誰か?

映画冒頭でこんなナレーションが入ります。
 

または警告しておこうか?

真実とーーー愛と喪失の物語について

そしてすべてを壊そうとした

モンスターについて

この「モンスター」とは誰なのか?
普通に考えれば半魚人が「モンスター」なのかと思いますが、それはあえて告げられません。
 
私が思うに、おそらく本作における「本当のモンスター」というのは
●地位と権力欲にとりつかれ任務の遂行に異常なまでの執着を見せるストリックランド(マイケル・シャノン)
●部下に一切の失敗を許さないホイト将軍(ニック・サーシー)
●国家のためなら何をするのも躊躇しない冷戦化のソビエト工作員
(もしくはその緊迫した社会情勢)
 
といった、人間たちとその社会のことなのではないかと思います。
 
ところでマイケル・シャノン、すごい顔だよね。

私が初めて彼を目にしたのは『マン・オブ・スティール』のゾット将軍役なのですが、そのときも

「めっちゃこぇぇ、このおっちゃん」
 
と思ってました。
それが今回さらにパワーアップしてて、奥さんとセックスするときに「黙れ」と口を押さえたり、声の出ないイライザに「あえぎ声を聞いてみたい」と言ったり、嫌悪感満載で迫ってくる上にあの恐ろしい顔!
 
『シェイプ・オブ・ウォーター』で初めて観た方は「この人きらきらいきらいきらい!!」ってなってると思うんですが、ちょっと待って頂きたい。
 
マイケル・シャノンのプライベートな姿を観て欲しい。
↓↓↓

 
 
だっさぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!
 
 
なんか愛しさが湧いてきませんか?
見た目怖いおっちゃんがめっちゃ私服ダサいとか最高なんですけど。
ギャップ萌え。
 
という、マイケル・シャノン擁護はここまでにして、
 
『シェイプ・オブ・ウォーター』 での「本当のモンスター」は半魚人のことではなく、
”普通”ではない半魚人や人々を迫害する立場のストリックランドのような権力者やまたはその社会に生きる「普通の人たち」、そして緊迫した社会情勢そのものなのだろうと思います。
 
この映画は、ギレルモ監督得意のモンスター映画ではなく、それを取り巻く「片隅で生きる人々」を優しく見つめた人間ドラマなのです。
 

見事なクリーチャー像

『パンズ・ラビリンス』に出てくる手に目がついた盲目のクリーチャーが見事過ぎてトラウマ級に怖かったのですが、今回の半魚人の造形も見事。

キモさと”思わずキスしたくなる”美しさが同居しています。

まぁ、じつは、一緒にラジオ配信しているPと観に行ったのですが、普通に「キモかった」「くさそう」と言っていました。

「粘膜的なネバネバ系のキモさが無理」とも。

ひょっとしたら、私にとっては「ギリギリの魅力的なキモさ」に見えたクリーチャー造形も、男性陣には「余裕でアウト」のキモさだったのかもしれませんねw

しかしながら、実はこのPの意見の方が正解なのかもしれない、とも思います。

なぜならこの映画は「種族を超えた恋」を描いた作品です。

つまり「こんな人を好きになってしまうなんてありえない」と観客が思わなければストーリーの前提が成立しないのです。「イケるかも」と思ってしまった私は、ちょっとアレなのかもしれませんw

でもほんまに美しかったんやもん!!

ギレルモ監督と、およそ人間を超越した半魚人のしなやかな動きを演じたダグ・ジョーンズに心からの拍手を送ります。

さて、この「種族を超えた恋」のおとぎ話や、「美しくない」(とされる)もの同士の恋の物語というものに関して、少し真面目に考えてみました。

本当の「シンデレラストーリー」

皆様はこんなことを思ったことはないでしょうか?
つーか「シンデレラ」とか

「美女と野獣」って、

美人とイケメンじゃなきゃ

成立しなくね!?wwwww

皆様がギャル語を駆使されているかどうかはわかりませんが、そういう疑問は誰しもふと抱いたことがあるのではないかと思います。

実際に、本作の監督ギレルモ・デル・トロの着想はそういった部分にあったようです。

僕は「美女と野獣」が好きじゃないんだ。「人は外見じゃない」というテーマなのに、なんでヒロインは美しい処女なんだ? なんで野獣はハンサムな王子様になるんだ?   (シェイプ・オブ・ウォーター公式パンフレットより抜粋)
よく考えてみれば、おそらく誰もが知っているだろういわゆる「ディズニー的なおとぎ話」というものの多くが「美しい容姿」を前提とし、苦労の末に「地位」「名誉」「財産」を得るという構成になっていますよね。
 
いつか白馬に乗った王子様と結婚して、お城でいつまでも幸せに暮らすアレです。
 
わかりやすい例でいえば「みにくいアヒルの子」は「実は白鳥だった」ことがハッピーエンドとされますが、それは「白鳥がアヒルよりも優れている」という価値観を前提としています。
なんでやねん。アヒルかわいいやんけ、くちばしとか。と私は思います。
 
イジワルな目でみればそれらは、非常に資本主義的・拝金主義的であり、容姿第一主義的であり、物質主義的なお話なのです。
 

シンデレラの正体

ギレルモ・デル・トロ監督はインタビュー等で何度も「これは様々な要素を持った新しい”おとぎ話”なんだ」と語っておられます。

確かに、「美女と野獣」や「シザーハンズ」と言った、種族を超えた恋愛ストーリーの系譜が見えますし、「人魚姫」の設定を「声の出ない女性と魚人のお話」へと反転させているのも明らかですね。

しかしおそらく本作の下敷きとして考えるのに最も適しているのは「シンデレラ」であろうかと思います。

特にギレルモ・デル・トロ監督が主人公のイライザ(サリー・ホーキンス)を単調で浮かばれない日々を過ごす清掃員と設定したのは、(もともとは作家のダニエル・クラウスという方のアイデアだそうですが)「灰かぶり姫」=「シンデレラ」に通じるものがあります。

 

シンデレラといえば「シンデレラストーリー」という言葉に象徴されるように、不遇の日々を送っていた人物があるきっかけで富と幸福を手に入れるというお話ですね。

まぁなんと、画一的で資本主義的で物質主義的で押し付けがましいんだろう、と私は思います。思いません!?

「なんやかんやいうても最終的にイケメンで金持ちの王子様と結婚したら幸せでっせ」

という価値観を、我々女子軍は幼い頃から植えつけられているような気がします。

でも実は、本当のシンデレラというのはそういう話でもないのです。

シンデレラの原型

シンデレラの元祖とされているお話は実は世界中に不思議なほどたくさんあり、最古のものは紀元前1世紀にまで遡るのだとか。

現在よく知られている「かぼちゃの馬車」やら「ガラスの靴」やらが出てくるお話は15世紀のフランスの作家ペローが作った『Cendrillon ou La Petite pantoufle de verre』というものなのです。

全然余談ですが、日本でよく知られている「おしん物語」は「シンデレラ」のことです。これ、豆知識な。

めんどいので詳しくはwikipediaにて→シンデレラ

そして、人類学者の中沢新一さんによると実はシンデレラの原型はもっと古い起源を持っているのだそうです。なんと数万年前、旧石器時代!

その多くの結末は決して「ハンサムでお金持ちな王子様と結婚できて幸せに暮らしました」といった物質的な幸福ではなく、よりプリミティブな「魂の幸福」を描いているのだとか。

なかでも、中沢先生自身が編集された”ネイティブアメリカンに伝わるシンデレラ”である「モカシン靴のシンデレラ」は象徴的です。

下手に解説すると野暮というか、大事な部分を間違えて伝えてしまいそうなくらい、繊細で抽象的なお話ですので、ぜひご自身で読んでみていただけたらと思います。

現代の我々が知っているシンデレラとは全く違う、本当の幸せとは何かを考えさせられるお話です。

中沢新一先生の、より詳しい文化人類学に関する著書はこちら。世界に伝わるシンデレラとその核の部分についても詳しく解説しておられます。

ギレルモ・デル・トロの描いた「シンデレラ」

ギレルモ・デル・トロ監督自身が語っている通り、本作が「シンデレラ」や「美女と野獣」「人魚姫」といった物語を「反転」させた設定とストーリーであることは明確です。

そしてそれらのさまざまなお話を一度「核」の部分までそぎ落とした上で「ごった煮」にしたような、舌がざらつくような、もしくは目を背けたくなるほど純粋な、”新しいおとぎ話”であるように感じます。

世間から虐げられ、無視される人々が自分自身の力で、たとえ周囲からどう思われようとも「魂の幸福」を見つけ、貫くという「本当のシンデレラ」が語ってきたことを実に先鋭に映像として描き出しているのではないでしょうか。


とまぁ、なんやかんや後から考えることも多かったのですが、アサミヤは映画館では純粋にエンターテインメントとしてハラハラ・ドキドキ・キュンキュンと、楽しめました!

『パンデ・ラビリンス』や『グリムゾン・ピーク』などのダークな世界観でありながら、すごくわかりやすい起承転結や声を持たない主役2人の恋愛模様など、今までのギレルモ監督作品とは違ってエンタメな作品に仕上がってるなと思いました。

しかし、ギレルモ監督らしからぬ作品なのではなく、モンスターの造形や非主流派の人物の描写などがより繊細で美しく仕上がっており、集大成とも言える作品なのじゃないかとも思います。

アカデミーを取ろうが取るまいが、素晴らしい作品です!

ぜひ劇場でご覧ください!

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コメント

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