映画『トム・アット・ザ・ファーム』レビューとイラスト

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トム・アット・ザ・ファーム(字幕版)
カナダの俊才グザヴィエ・ドラン監督が、劇作家ミシェル・マルク・ブシャールの同名戯曲を映画化したサスペンスドラマ。性的マイノリティへの偏見というテーマを、ミステリータッチに描く。ドランは監督と主演だけでなく、編集や衣装も自ら手がける多才ぶりを発揮。「世界一の映画作曲家に依頼したい」と熱望した『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』のガブリエル・ヤレドによるオリジナルスコアが、物語の抒情性を増幅させている。...

映画『トム・アット・ザ・ファーム』概要・あらすじ

監督第3作「わたしはロランス」の劇場公開によって日本でも注目を集めるカナダの若き才能グザビエ・ドランが、カナダ東部ケベック州の雄大な田園地帯を背景に、閉鎖的な家族と地域を舞台に描いた心理サスペンス。恋人の男性ギョームが亡くなり悲しみに暮れるトムは、葬儀に出席するためギョームの故郷を訪れる。しかし、ギョームの母アガットはトムの存在を知らず、息子の恋人はサラという女性だと思っている。トムの存在を唯一知るギョームの兄フランシスは、トムに恋人であることを隠すよう強要。当初は反発を覚えたトムだったが、次第にフランシスの中に亡きギョームの姿を重ねるようになり……。カナダの人気劇作家ミシェル・マルク・ブシャールが2011年に発表した同名戯曲の映画化。(映画.comより)

映画『トム・アット・ザ・ファーム感想

「若き天才」と呼ばれ、自身も数々の作品に出演する美貌の持ち主グザヴィエ・ドラン監督。
個人的には2014年の『Mommy /マミー』しか鑑賞したことがなかったんですが、
それでも堂々と「私はグザヴィエ・ドランが好き!」と言っちゃうにわかファンでございます。

グザヴィエ・ドラン。
映画好き界隈でその名前言っときゃおしゃれな奴だとかちゃんと映画観てんなとか思われるようなアイコン的存在。
なんかドランに失礼な言い方だけど、マジでそう思う。

鮮やかな映像美に詩的なセリフ、ドランの闇が見え隠れする倒錯した愛。
『Mommy /マミー』しか観たことないのに、もうドラン映画ってそういうもので満ちてるものだと思ってたのです。

この『トム・アット・ザ・ファーム』も、観賞後には「私のおしゃれHPが1UPしたぜ」と
思うこと間違いなしと軽い気持ちでチョイスしたのですが。

やべぇ、めっちゃ重え。

詩的なセリフや倒錯した愛は描かれていたけれど、映像が暗く、閉鎖的な田舎の空気に息が詰まるし、
倒錯した愛というより倒錯しまくった共依存の関係じゃないか!

ゲイの主人公トム(グザヴィエ・ドラン)と亡くなった恋人の兄でホモフォビアであるフランシスの
反発しながらも惹かれ合う関係。

あぁ、こんな軽い気持ちで観るもんではなかった・・・とちょっと後悔したことを告白します。

何より暴力的にトムを支配しようとするフランシスよりも、
彼の母親がめっちゃ怖くて。

亡くなった息子の彼女(息子がゲイだとは知らない)が葬式にも来ないことに憤り、
トムが用意した偽の彼女に対して、「なぜ遺品を見て顔色ひとつ変えないんだ!」と泣き喚く。

理想的な彼女であることを望み、それが叶わないことに感情を爆発させる母親。

フランシスに対しても、気に食わないことがあれば躊躇なく平手打ちを喰らわしていたので、
きっとこの人は子供を私物化し、息子らが自分の期待通りに生きてくれることで精神を保っているのではないのかなと思った。

私自身の母親とも少し重なる部分があったので、そういった意味でも後悔した。

でも、美しいグザヴィエ・ドランのお顔をたくさん崇められたから、結果観てよかったよ。
私はもっと見てるだけで汗の匂いが漂ってきそうな男臭い人が好きなんですが、
ドラン様は趣味嗜好関係なく美しいと思える天性の男前。

美しい男が田舎の農場で殴られ首を絞められタンゴを踊る映画。
そう思えばフェチの領域に入る作品なのでは。なんて。

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最後に、ネタバレありの感想書かかせてください。忘備録のためにも。

クライマックスでトムはフランシスの元から逃げ出すことに成功します。
元々いた都会に車でたどり着くのですが、車内から見える煌びやかなビルの明かり、
道端で話す男女、青に変わる信号・・・。

今までの閉塞的な景色から一転、ごちゃごちゃとした都会を見てホッとしたのは私だけではないはず。

私自身、大阪から徳島に移住した身ですが、たまに大阪や神戸のビル群や人混みを見るとすごくホッとするんですよね。
「帰ってきたなー」なんて思ったりして。

でも、徳島での生活が長くなればなるほど、都会にいると「居場所はここじゃない感」が生まれてくるんですよね。

帰る場所ができてしまったから。

信号が青になるシーンで作品は終わるのですが、果たしてトムはそのまま家に帰るのか、
それともフランシスの元へ戻るのか。

私はきっとトムも都会に戻ってきて「ここじゃない感」を抱いたのではないのかなと思ってます。

フランシスとの傾倒したもつれた関係は、きっとそう簡単には切れないはず。
あんなに苦しい暴力的な関係であったとしても。
トムにとっての居場所は、きっとフランシスなんだろうな。

アサミヤカオリ

イラストレーター/造形作家/映画コラムニスト/漫画家

大阪出身。
2018年より徳島に拠点に移して活動中。

AWAP『映画コラム』/ BRUTUS『赤恥研究所』連載中
B級映画/ラジオ/観葉植物好き。最近は20時半就寝4時起きで制作がんばってます。メキシコ行きたい。

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