1973年9月20日に行われたテニスの一戦、ビリー・ジーン・キング VS ボビー・リッグスの「バトル・オブ・ザ・セクシーズ(性差を超えた戦い)」を題材に、男性優位主義の人々と戦った女性を描いた作品。
主演にエマ・ストーンとスティーブ・カレル、監督に『リトル・ミスシャンシャイン』のジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス、制作に『28日後・・・』のダニー・ボイルという、間違いなしの組み合わせが実現。
『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』概要・あらすじ・キャスト
概要
「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーンが実在のテニスの女王を演じ、1970年代に全世界がその行方を見守った世紀のテニスマッチ「Battle of the Sexes(性差を超えた戦い)」を映画化。(映画.comより)
あらすじ
73年、女子テニスの世界チャンピオンであるビリー・ジーン・キングは、女子の優勝賞金が男子の8分の1であるなど男女格差の激しいテニス界の現状に異議を唱え、仲間とともにテニス協会を脱退して「女子テニス協会」を立ち上げる。そんな彼女に、元男子世界チャンピオンのボビー・リッグスが男性優位主義の代表として挑戦状を叩きつける。ギャンブル癖のせいで妻から別れを告げられたボビーは、この試合に人生の一発逆転をかけていた。一度は挑戦を拒否したビリー・ジーンだったが、ある理由から試合に臨むことを決意する。(映画.comより)
スタッフ
監督:ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス
脚本:サイモン・ボーファイ
制作:ダニー・ボイル
キャスト
●エマ・ストーン:ビリー・ジーン・キング
女性テニスプレイヤー。
ダサい。かわいいのにダサい。
●スティーヴ・カレル:ボビー・リッグス
すでに引退済みの男子テニスプレイヤー。
本人そっくり人間。
●ビル・プルマン:ジャック・クレーマー
テニス協会のお偉いさん。
男性優位主義者で今では考えられない発言をぽんぽんされます。
『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』感想
80点
こんちゃ!アサミヤです。
お久しぶりですねぇ。どうもどうも。
ここんとこ、引っ越しやら結婚やら撮影やら結婚やら、なんやかんやで忙しくてですね。まぁ、言い訳です。
映画はちょこちょこ見とったんですが、劇場に足を運んで新作を観る機会がパタッと途絶えてしまってました。
そんなときにふとツイッターで流れてきた情報が、エマ・ストーンとスティーブ・カレルがタッグを組んだ、実話を基にした作品が公開されているとのこと。
とても面白そうなメンツじゃないか・・・・それも世紀の茶番劇的な内容・・・なんぞその映画!?と興味津々だったものの、公開されてるのは東京と大阪の一部・・・。
私大阪から徳島に引っ越しましてね、映画事情がとっても不便になったんですよ。
今までは単館映画とか見放題だったのにね・・・。
歩いて30分圏内に映画館が3、4個はあったのにね・・・。
いや、愚痴ってませんよ!
徳島は徳島で映画の舞台にもなった眉山があったり、映画観るより感動する阿波踊りもあるしね!
必死で弁解してないからね!
まんず映画館があるだけでも満足だからね!
今の時代VODで映画観るのが当たり前だしね!!
とまぁ、心の内をブチまけましたが、結局言いたいのは『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』を観に大阪まで行ってきたよんということです。
結果、観てとっても面白かったよんということです。
何がどう面白かったかをいつものごとく荒く解説するので、おヒマな方は読んでね!
バトル・オブ・ザ・セクシーズって何?
タイトルにもなっている『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』。
これ、1973年に実際にあったテニスの試合のことなんですね。知らんかった。
セクシーズとは『Sexys』ではなく『Sexes』(「性」の複数形)で、すなわち『性別間』ってことなんだけど、男女対抗で行われた試合だからそう言うんですね。
主人公は、テニス界では伝説中の伝説であるビリー・ジーン・キング。
映画は彼女が、テニス大会の賞金が男性に比べて8分の1しかもらえないことに異議を申し立てるところから始まります。
彼女は臆することなく、時にあからさまに挑発しながら「男ども」に立ち向かうのですが、男性優位主義者である全米テニス協会のおじさん達は「男性の方が試合がパワフルだし面白いから金額に差があって当然じゃん」みたいな当たり前な口調で返すんですわ。
実際当時の世間はそんな考え方が主流だったのでしょう。
映画としても、個人としての悪者を立てるというよりは(まぁ、一応代表者として悪者いたけどね)「風潮」として男性優位的な考え方が普通だった、というような描かれ方がされています。
あぁ〜腹立つよね。
ちなみに、1983年に発表されたマイケルジャクソンの名曲「ビリー・ジーン」は彼女とは全く関係ないそうです。
ボビー・リッグスは女性差別主義者か?
そんな彼女に試合を申し込んできたのが当時50代になっていた、国際テニス殿堂入りまでしている伝説の男子テニスプレーヤー、ボビー・リッグス。
ギャンブル依存症で、お調子者で、過去の栄光を感じさせない太ったボディ。会社員として退屈な日々を送っていました。
彼はビリー・ジーンが生み出したテニス界における「ウーマン・リブ」のムーブメントに、興行師(もしくはペテン師)として、一発逆転のアイデアを思いつきます。
それがタイトルにもなっている世紀のテニスマッチ「Battle of the Sexes(性差を超えた戦い)」なのでした。
この映画、とっても重いテーマを扱ってはいるのですが、舌触りは意外なほどライト。
というのも実は、スティーブ・カレルがコミカルに演じたこのボビー・リッグスという人物自身は(実際はどうだったかは別として)、性差別主義者そのものという感じではなく、「性差別という風潮を利用した興行師」という描かれ方をしていて、彼自身の言動もとてもコミカルで人間味に溢れていたから。
彼自身が作り出したコピーがそれを物語っています。
『男性至上主義のブタ vs モジャ脚のフェミニスト』
ブタwwww
まぁ彼に性差別主義的考え方が一切なかったとは思いません。
男である自分が、何十歳年下であろうと女性なんかに負けるはずがないと確信してのこの興行ですし、フェミニストをからかうような言動も繰り返されます。
しかもギャンブル依存症である彼は、仲間内で自分の勝利に賭けてたっていう、ゲスな戦いですよ。
しかしおそらく、この映画を見て、ボビー・リッグスに怒りを覚える人は少ないのでは?
私たちが怒りを覚えるのは、ゲスで情けなくてコミカルな道化だったエンターテイナー、ボビー・リッグスの後ろに見え隠れする、全米テニス協会のジャック・クレイマーをはじめとした「本当の男性至上主義者」達なのだと思います。あるいは「男性至上主義」になんの疑問も抱かない当時の世間、ですね。
印象的なのは、とてもにこやかにお互いを罵り合うビリー・ジーンとボビー・リッグスの記者会見シーン。
ビリー vs ボビー = 女 vs 男
なのではなく、二人はある種の代理戦争の演者として、共犯意識さえ持っているかのような意気投合ぶりが見て取れました。
で、実際に行われた試合なので結末をあっけなく言いますが、勝利の女神はビリー・ジーンに微笑みます。勝ったビリー・ジーンがなぜか悲しそうに泣き、負けたボビーがさわやかに笑って去っていきます。
スポ根映画ではない!
そんなこんなで世紀の一戦とまで言われた『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』。
映画の宣伝文句がこれ↓↓
『時代を変えた、<女と男の熱い戦い>!』
これだけ聞くと、男女対抗試合がメインのスポ根映画かと思いますでしょ?
でもちゃいますねん。
肝心のビリー・ジーンとボビー・リッグスの試合はとてもあっさり目に描かれているんですよ。
世紀の試合とも言われる一戦を当時の映像を基にカメラワークとか動きとかを忠実に再現はしているんだけど、なんせテレビの映像をまんま再現しているんでそこまで画力(えじから)もカタルシスもない。
(余談ですが、カタルシスをつくるのに制作陣は苦労したんじゃないかと思います。というのも、ビリーが勝った瞬間、ものすごい音量で感動的な音楽がかかるんですよ。なんかちょっとクスッとしてしまいました。)
つまり監督が伝えたかった、表現したかったのは結末がわかりきった(実話だからね)試合そのものではなく、そこに至るまでのストーリーやビリー・ジーンの心の変化やボビー・リッグスの破天荒だけど人間味に溢れた姿なんですよね。
本当の意味での『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』は試合そのもののことではなく、時代に抗って世の中の女性を奮い立たせ、男性に対して平等な権利を主張した、その流れそのもののことだったんですね。
女vs男だけじゃない
この映画に複雑さを加え、ビリー・ジーンという人物像にも彩りを与えたのが、彼女の「禁じられた恋」でした。
まぁ、事実なので彩りとか言っちゃうとアレなのですが。
ビリー・ジーンはラリー・キングという男性と結婚しているにも関わらず、女性美容師と恋に落ちてしまうのです。
この二人の演技が凄かった!! 表情や動きから、彼女達が本当にお互い惹かれあっているのが伝わってきます。
そんでまぁ〜〜〜このラブシーンのエロいことエロいこと!!!
彼女は「女性であること」に対する差別と闘いながら、一方で「同性愛」に対して向けられる世間の目とも向き合っていくことになるのです。
葛藤しながらも性に捉われない新たなる愛に気づいていく過程にも、彼女なりのバトル・オブ・ザ・セクシーズがあったんではないでしょうか。
後年、彼女はレズビアンであることを公表し、夫と離婚し、元プロテニス選手であったイラナ・クロスという女性をパートナーとして生活されていたそうです。
根強く残る女性蔑視
70年代に活発さを増した、ウーマン・リブ。
60年代後半から始まった女性解放運動のことなんだけども、今回勉強不得意なアサミヤが自分なりに知識を入れてみたので、今作を見る上でも大事な時代背景の一つとして浅ーーーーくお教えするよ。
第二次世界大戦中に兵士として駆り出された男性は職場を離れなければならなかったんだよね。
でも生産現場を止めるわけにはいかないから、代わって女性が働き始めたのでした。
それまでは”外で働くのは男、家を守るのが女“という常識があったんだけども、いざ外で働き出した女性は「私たちも男性と同じように働けるんだ!」と自信を持ち、実際に社会を支えていたんだよね。
60年代後半になってベトナム戦争の反戦運動が活発になると同時に、女性たちが平等な権利を求めて社会運動を始めたのがウーマン・リヴってわ〜け(都市伝説の関暁夫風)。
そんな運動が勃発するってことは、それだけ女性は蔑視され、抑圧されていたんですねー。
まぁ今でもMe Too運動が盛んですから、結局女性への目線は根本では変わっていないのかも。
劇中でも幾度となく「女性はスポーツでも社会の中でも男性には勝てない」という発言を耳にします。
その度にキレてても消耗するだけだというくらいに。
スポーツの世界で女性が台頭することにすら偏見があった時代、ウィンブルドンで何度も優勝していながらも全米テニス協会を脱退し、「女子テニス協会」を創設したビリー・ジーンがどれだけ強い女性だったのかが伺えます。
エマ・ストーンがダサい!
実在の人物ビリー・ジーンを見事に演じたエマ・ストーン。
エマ・ストーンといえば『ララランド』や『アメイジング・スパイダーマン』の可憐なイメージ。
色白に金髪っていう、日本人女性が憧れる白人美人さんですよね。
対して『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』では、色黒の黒髪、化粧っ気のないスポーツ一色の女性を演じています。
正直ダサい!!
70年代のテイスト全開だから余計にダサい!
でもそのダサさを身にまとい、さらには体重も増量してトレーニングに打ち込んだっていうんだから、女優魂に恐れ入りました。
アカデミー女優として、確実に成長してらっしゃいます(何様)。
ダサいんだけど、真剣にテニスに打ち込む美しい姿に見惚れてくださいませ。
やっぱりスティーブ・カレル!
エマ・ストーンが素晴らしいのはもちろん、このお方抜きに『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』を語ることはできません。
そうです、スティーヴ・カレルです。
フォックス・キャッチャーでも実在の人物であるジョン・デュポンを演じてたけど、そのときも特殊メイクをしていたとはいえ、どこか空を見つめる目や狂気が一周回ってユーモラスになる様を見事に演じてたよね。
今作『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』でも、ちょっと人(女性)を小馬鹿にしつつも、どこか憎めない絶妙な嫌味な役で、スティーヴ・カレルにしか演じることができないと思わせるほどの演技力を見せてくれています。
何より容姿が本人とそっくり!
それはエマ・ストーンも同じなんだけど、二人をキャスティングした人、神かと思っちゃうくらいよ。
コメディからシリアスな役まで、幅広く変化するスティーヴ・カレルに脱帽しちゃってください。
まとめ
70年代を生きていない人にとって、耳慣れない言葉の『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』。
その試合に目を向け、またその試合を通じて女性差別問題にも目を向けるきっかけをくれる今作。
重いテーマではありますが、70年代のファッションやメイクの色鮮やかさ、軽やかなリズムのストーリーテリングなど、エンタメとして楽しめる要素も満載。
映画って本当楽しみながら勉強になるなぁと、『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』を観て思いましたよ。
皆様もぜひ、歴史に残る一試合を観に、劇場に足を運んでみてくださいな!
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