映画『プロスペクト』あらすじ
その惑星には何者かが潜み親子に危機がせまる。生き残りをかけた彼らに待ち受ける運命は!?(Filmarlsより)
映画『プロスペクト』感想
突然ですが、SFモノが好きな私。
でも、塵一つ落ちてなさそうな真っ白な宇宙船内や、
クリス・カニンガムが監督したビョークのMV『All is full of love』に出てくるような無機質でヌルッとしたAIとか、
“綺麗すぎる潔癖なSF像”ってちょっと苦手なんです。
人智を超えた存在のような、崇高なイメージで提示されると一歩引いてしまうんですよね。
逆に『スター・ウォーズ』のように土臭いアナログなSFを観るとホッとするし、
オリジナルなガジェットやクリーチャーを観ると興奮する、そんな性癖です。
今回ご紹介する『プロスペクト』はそんな私の性癖ど真ん中な作品で、
今にも壊れそうなほど手垢がついた宇宙船、チャージ式の組み立て式銃、
性能よりも見た目重視のレトロなヘッドフォン、惑星を満たす塵、謎の気持ち悪い卵、
そこから取れる美しい化石・・・。
オリジナリティあふれる舞台設定でほとんど説明なく進むにも関わらず、
監督のこだわりがぎゅっと詰まったガジェットが説得力に満ちていて、
ポンと謎の世界観に放り込まれた我々観客も妙に心地よく観てしまえるのです。
主役のシーを演じたソフィー・タッチャーの凛とした姿が美しいし、
シーと対立しながらも行動を共にすることになるエズラを演じたペドロ・パルカスは
『ゲーム・オブ・スローンズ』で演じたオベリン同様に危うい色気に満ちていて、
オヤジ好き女子はウハウハになること間違いなし。
この二人が徐々に心通わすことになるのですが、
とある出来事によって決定的に精神的な力関係が逆転することに。
その出来事はとても痛々しいんだけども、それまで恐れを抱きながら抑圧の中で生きていたシーが、
一人の自立した女性へと変化する大事なシーンでもあるので目を逸らさず観て欲しい。
そして、血の繋がりよりも、利害関係だけで生まれる強い絆もあるよね、っていうドライな目線もグッとくる。
静かなSFながら、最後には心の奥が熱くなる、エモい作品でした。
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