Netflix映画『悪魔はいつもそこに』レビューとイラスト

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ここに出てくるクリスチャンや牧師は徹底して人間として落ちぶれている。

神に最も近く、信者からしたら神聖な人間のはずなのに。

天使かと思いきや、裏には悪魔の顔を持っている。

一方、トム・ホランド演じるアーヴィンは小さい頃のトラウマで神への祈りを捨てた。

一見どの角度から見ても良い奴で、最後まで決して悪い奴には思えない。

しかし彼はあるきっかけで一線を超えてしまう。

一度超えたら最後、次々と負のループに陥っていく。

この一線を超えた後の彼を、人によっては悪魔とみなすこともできるのだろう。

ラストに流れるカーラジオではベトナム戦争の徴兵についてアナウンスされる。

それを聞いて最終的に浮かんだテーマは「一方向からのみ人は判断できない」ということだった。

戦争に繰り出された人間の多くが人に銃を向けるだろう。

そして実際に引き金を引くかもしれない。

例え保身のためといえど、人を殺めることは許されない。

だからといって、彼を悪魔と言えるだろうか?

ただ国の都合で徴兵され、極限状態で死の淵に立たされた人間を責められるだろうか?

彼は家族にとっては優しい父親で、本来は穏やかに生きる平凡な人だったかもしれない。

なんだかウクライナ侵攻への思いと被るものがあって、今作を観てからずっと考えている。

人間は決して黒白をはっきりつけられるものではないけど、曖昧なままには受け入れ難い生き物なんだろうな、と思う。

アサミヤカオリ

イラストレーター/造形作家/映画コラムニスト/漫画家

1983年生まれ。大阪出身。
2018年より徳島に拠点に移して活動中。

AWAP『映画コラム』/ BRUTUS『赤恥研究所』連載中
B級映画/ラジオ/観葉植物好き。最近は22時就寝5時起きで制作がんばってます。メキシコ行きたい。

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2020年公開
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