映画『ア・ゴースト・ストーリー』(2018)レビューとイラスト※ネタバレなし

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映画『ア・ゴースト・ストーリー』概要・あらすじ

概要

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」のケイシー・アフレックと「キャロル」のルーニー・マーラの共演で、幽霊となった男が残された妻を見守る切ない姿を描いたファンタジードラマ。
アフレックがシーツ姿の幽霊となってさまよい続ける夫役を、マーラがその妻役を演じる。デビッド・ロウリー監督がメガホンを取り、「セインツ 約束の果て」の監督&主演コンビが再結集した。(映画.comより)

 

あらすじ

田舎町の一軒家で若い夫婦が幸せに暮らしてたが、ある日夫が交通事故に遭い、突然の死を迎える。病院で夫の死体を確認した妻は、遺体にシーツを被せて病院をあとにする。しかし、死んだはずの夫はシーツを被った状態の幽霊となり、妻が待つ自宅へと戻ってきてしまう。(映画.comより)

 

映画『ア・ゴースト・ストーリー』感想

『セインツ 約束の果て』のデビッド・ロウリー監督が同作で主演も務めたケイシー・アフレックとルーニー・マーラと共に実験的にカメラを回し生まれた今作。

評価も高くてずっと気になってた作品なんですが、先日やっと鑑賞できました。
事前に情報を全く入れずに観たもんで、ジャケットとタイトルだけで「シーツ被ったおばけが出てくるB級ホラーなんやろな」って気軽な気持ちで観始めたら、あらやだめっちゃんこおしゃれで静かなアート寄りの作品じゃない、奥さん。
正方形の画角に淡い色彩の映像、そしてケイシー・アフレックとルーニー・マーラの姿を観た途端、「あぁ、こりゃB級どころかS級の作品だわ」と反省いたしましたよ。

 

シーツを被ったおばけが出てくることは間違い無いんですがね。

あえて言うなら「オバQ」のような簡素でコメディ寄りのビジュアルなのに、一貫して寂しげで、たまに情動的で、たまに恐ろしさも感じる佇まい。

ジャケットからは想像もできないような感情揺さぶられるゴーストに、今や私は愛情さえ抱いております。

 

このゴーストは時間を経ても尚存在し続けるけれど、決して場所を移動しようとはしない。

ずっと妻との思い出が染み付いた家に、場所にいつづけて、ゴースト自身が歴史となっていく。

 

現実の(?)幽霊も、地縛霊がいたり、心霊スポットが有名になったりと特定の場所に出現しますよね。

イギリスにいた幽霊が、ある日日本にやってきた!なんて聞かないものね。

だから今作は実験的で風変わりな作品ではあるけれど、ある意味幽霊像に忠実な作品でもあるのです。

昨今はゴーストと言っても「クリーチャー」や「モンスター」のような描かれ方をされ、激しく動き回り場所を移動するなんてこともやってのけちゃう奴も出てくるけど、誰もが想像しうる「幽霊像」を見事に表現した作品としても私は評価したい。

 

また、ケーシー・アフレックの姿が映るのはほんの束の間なのに、『インビジブル』のケビン・ベーコン並に、シーツの下にケーシー・アフレックの姿が透けて見えるような存在感も素晴らしい。 

大切な人を失ったはずなのに感情を表に出せず凍りついたような表情のルーニー・マーラの演技も良い。

 

とにかく『ア・ゴースト・ストーリー』は言葉で表現しがたく、観終わった後はわけもわからず涙が出てくるような作品なのです。

個人的に2017年の最高傑作『スイス・アーミー・マン』も同様で、感情にダイレクトに訴えてくる画力と理解など端から求めていないようなファンタジーな世界観。

優しさと愛に満ち溢れアート性に富んだ作品として、『ア・ゴースト・ストーリー』も個人的に最高ランクの作品となりました。

 

ホラー苦手な人も、大事な人を失った人も、現在霊の存在を感じている人も、幽霊への恐ろしい気持ちが和らぐよ、絶対。

むしろ愛おしくて仕方ないかも。

アサミヤカオリ

イラストレーター/造形作家/映画コラムニスト/漫画家

1983年生まれ。大阪出身。
2018年より徳島に拠点に移して活動中。

AWAP『映画コラム』/ BRUTUS『赤恥研究所』連載中
B級映画/ラジオ/観葉植物好き。最近は22時就寝5時起きで制作がんばってます。メキシコ行きたい。

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