映画『バグダッド・カフェ』感想
95点
こんちゃ!アサミヤです。
今回ご紹介するのは1987年制作の『バグダッド・カフェ』。
きらびやかで豪華絢爛なラスベガスからルート66沿いにまっすぐ走り抜けると辿り着くのが荒野のバグダッド。
そこに存在するカフェに一人のおばさまジャスミンがやってきたことで、物語が始まります。
日本では1989年に公開されて大ヒットし、ミニシアターブームを代表する作品にまでなった今作ですが、話の内容はとてもミニマム。
周りに何もない砂漠のカフェに集う人々はやる気がなくただ1日1日を消費しているように見える。
そんな彼らがジャスミンの存在によって次第に溌剌とし、生きることを楽しむようになっていくのです。
ただそれだけの話。
殺人事件が起こるわけでも、トレマーズのようなモンスターが現れるわけでもない。
一つ物語に華を添えるとすれば、ジャスミンが習得したマジックくらいかな。
このとてもミニマムな世界観を、「面白くない」と一掃する人もいる。
きっとそういう人は、ジム・ジャームッシュ作品も嫌いなんだろうなぁ。
そうこれは『ストレンジャー・ザン・パラダイス』や『スモーク』といった小さな世界での、何も起こらない日常を描いた作品に通ずるものであり、“劇的な何か”を求める人には刺激が少なすぎる物語なのです。
じゃあ何が面白いんだいって聞かれると、私は「何も起こらないことが素晴らしいんじゃないか!」と言いたいけれども、きっとそれじゃあ伝わらないですよね。
一つ楽しむポイントとしては、登場キャラの味わい深さ。
主人公であるジャスミンのミステリアスさや、対峙するカフェの店主ブレンダのキレやすくも情にあつい姿、トレーラーハウスに一人住む老人ルーディのバンダナとウェスタンなファッションに身を包んだキザな風貌から垣間見える優しさ・・・。
みんながみんな個性がありながら、どこか荒んではいるけれど悪い奴は一人もいないという、砂漠に潤いを与えるようなキャラクターたち。
個人的に一番面白なと思ったのはカフェ近くのホテルにあるタトゥー屋のデビー。
登場キャラの中では一番と言っていいほどの美貌の持ち主でありながら、ほとんどセリフがなく、巻き起こるドタバタ劇をいつも側から興味津々に傍観している。
(ソッ)
付かず離れずの距離感で生活しているデビーは、しかしラストに荷物をまとめて出て言ってしまう。
彼女いわく「みんな仲良すぎ」だからだそうだ。
お決まりのように、みんなが仲良くなってめでたしめでたしでは終わらないところがこの作品に良いスパイスを効かせていて、味わい深いポイントでもあるのです。
刺激的な人生も良いけれど、たまには穏やかに生きるのもいいじゃない。
心の休息をさせてくれる『バグダッド・カフェ』に一度訪れてはいかかでしょうか。
あっ、主題歌でもある『I’m Calling You』、一度は耳にされたことがあると思いますが、乾いた砂漠に潤いを与える音楽として最高のマッチングなので、ご存知の方もぜひ劇中で聴いてみてください。
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おなじく何気無い日常に癒されたい人へ。
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