衝撃のヒーロー像を描いた『アンブレイカブル』から18年・・・当時から構想していたという”その後“を描いた『ミスター・ガラス』が公開!
ちゃんと『アンブレイカブル』を復習するのはもちろん、実は何気にというかめちゃめちゃ繋がっている『スプリット』を観なければついていけないこと間違いなし!
『アンブレイカブル』も『スプリット』も超人モノだったから、もちろん今作もスーパーパワーを使って云々カンヌン的な話になるのかと思いきや、その想像を遥かに超えてきたシャマラン監督に屈伏!
今回はネタばりありなので、まだ未鑑賞の人はご注意を。
映画『ミスター・ガラス』概要・あらすじ・キャスト
概要
映画史に残る世界的大ヒット・スリラー作品『シックス・センス』(99)のM.ナイト・シャマラン監督が、世界を騒然とさせた『アンブレイカブル』(00)のその後を描く、衝撃のサスペンス・スリラー『ミスター・ガラス』。
あらすじ
フィラデルフィアのとある施設に、それぞれ特殊な能力を持つ3人の男が集められる。不死身の肉体と悪を感知する力を持つデヴィッド、24人もの人格を持つ多重人格者ケヴィン、驚くべきIQの高さと生涯で94回も骨折した壊れやすい肉体を持つミスター・ガラス。彼らの共通点は、自分が人間を超える存在だと信じていること。精神科医ステイプルは、すべて彼らの妄想であることを証明するべく、禁断の研究に手を染めるが……。(映画.comより)
監督
●監督・脚本:M・ナイト・シャマラン
キャスト
●ブルース・ウィリス:デヴィッド・ダン
不死身の肉体と悪を感知する能力を持つ。
十数年前にミスター・ガラスによってその能力を自覚するようになり、人々を救う為に使うようになる。
今は息子のジェームスと共に”群れ“を探している。
●ジェームズ・マカヴォイ:ケヴィン・ウィンデル・クラム
虐待された経験から24の人格を生み出し、超人的な存在のビーストを有する。
少女たちを誘拐し、世間からは”群れ“と呼ばれている。
●サミュエル・L・ジャクソン:イライジャ・プライス/ミスター・ガラス
94回も骨折をしてきた脆い体を持つ天才。
コミックオタク。
十数年前に鉄道事故を企て、ダンの不死身の能力を見出す。
自らを「ミスター・ガラス」と呼んでいる。
●サラ・ポールソン:エリー・ステイプル医師
自らをヒーローと思い込んでいる人間を研究している精神科医。
ケヴィン、ダン、ミスター・ガラスのそれぞれの能力を、”ただの人より優れた力“として否定していく。
●アニャ・テイラ=ジョイ:ケイシー・クック
ケヴィンによってかつて誘拐されるも、ただ一人生き残った少女。
ケヴィンと同じく虐待された経験から、唯一心を通わせていく。
●スペンサー・トリート・クラーク:ジョセフ・ダン
ダンの息子。
ダンをヒーローと信じ、共に自警活動を行っている。
スペンサー・トリート・クラークは18年前の『アンブレイカブル』から引き続き出演。
なんとも垢抜けない青年になっていて、おばさん感動!
映画『ミスター・ガラス』感想
90点
こんちゃ!アサミヤです。
今回ご紹介するのは、ナイト・シャマラン監督の最新作『ミスター・ガラス』。
ちゃんと『アンブレイカブル』と『スプリット』を復習して「よっしゃ!今年初の劇場映画観に行くで!」と意気込んだのは良いものの、私が現在居住区としている徳島でやってない!?だと!?????
ここで引き下がってたまるか・・と、足を伸ばしてわが故郷大阪まで観に行きましたよ。
朝5時起きで。だって朝9時半の上映しかなかったんだもん。
結果、高速代を入れても十分元は取れるほどの面白さ!そして号泣のクライマックス!
本当に劇場に観にってよかったと思っております。
私は正直ナイト・シャマラン監督のファンというわけでもなく、シャマラン監督作品の中で何が一番好きかと聞かれたらタイトルからネタバレしちゃってるB級色の強い『デビル』って答えちゃうほどのにわかなので、レビューはサクッと甘めにさせて頂きます。あしからず。
ヒーローは本当にいるのか??
ざっとあらすじを書きますと、不死身で怪力、触れるだけで悪人を見抜けるダンと、凶悪な”ビースト“を含む24の人格を持つケヴィン、94回も骨折をした脆い体を持つ天才ミスター・ガラス。
彼らは自身の特殊な能力を信じて行動してきたが、とある精神病棟に入れられたことから自らの力に疑問を抱きはじめる・・・・。
とこんな感じでしょうか。
『アンブレイカブル』ではミスター・ガラスがダンを見出し、ダンが自らの能力を受け入れてヒーローになるまで、『スプリット』ではケヴィンがビーストを出現させるまでが物語の核になっていたのですが、今作『ミスター・ガラス』では彼らの能力が本当に超能力的なものなのか?と疑問を抱かせることからストーリがどんどん展開していきます。
その能力への疑問を抱かせる存在が、精神科医であるエリー・ステイプル。
「ケヴィン、アンタただのちょっとした力持ちなだけなんやないの?」
「ダン、アンタも色んな視覚情報拾ってきて犯人探ししてるだけとちゃうん??」
なんて言いながら彼らの能力を否定していくのです。
最初は「ちゃう、ちゃうでー!ワイはちゃんとした能力者や!」とか「ちゃんとビーストは壁を登るし素晴らしい力をもってるワ」なんて否定していたダンやケヴィンだったけれど、洗脳されるように少しずつ気弱になっていきます。
観ているこっちも「あれ、もしかして全部彼らの妄想なの?」なんて疑ってきちゃう。
しかし、結局のところ彼らの力は紛うことなきものであり、ミスター・ガラスのある目論見によって彼らの力は世間にお披露目されようとしていたのです。
その目論見とは、完成間近の「オオサカタワー」(だっさ)でダンとケヴィンとを戦わせること。
まさしく『アベンジャー』な展開やん!
と、ここで興奮してはなりません。
なぜなら今作はルッソ兄弟監督作品でもジェームズ・ガン監督作品でもなく、ご存知M・ナイト・シャマラン監督作品だからです。
シャマラン作品のケレン味といえば、大胆なアクションでもヒーロー同士のいざこざでもなく、”大胆なラストのどんでん返し“ですよね。
今作もケヴィンVSダンの”力持ち“対決的なものはありますが、本当の見ものはそこではありません。
用意されているどんでん返しのキーマンが精神科医のエリー・ステイプル。
彼女は彼らの能力を信じていなかったのではなく、能力を封じ込めるための組織の一員だったのです。
『アンブレイカブル』から引き継がれている”コミック“の存在も重要で、コミックで書かれている内容は能力者の存在を記録してきたものだった!という驚きの展開。
しかし、世界の均衡を守るため、ヒーローもヴィランも根絶やしにしてしまえ!という組織がケヴィンやダンやミスター・ガラスを洗脳して力なき者に仕立てようとしていたものの、最終的に武力行使で殺すしかなかった・・・というなんとも悲しきお話。
最後にケヴィンが、唯一心を許しているケイシー(『スプリット』で最後に生き残った少女)の腕の中で死んで行く姿がもう号泣!
ダンも息子が見ている前で死んで行くし・・・この展開にはステイプル医師への怒りとヒーローたちの無念さで悲しくて仕方なかったですよ!!
しかーーし!
今作の主役はミスター・ガラス。
彼の本当の目的は「オオサカタワー」でヒーローたちを戦わせることではなく、監視カメラに映った彼らの戦いっぷりをネットに配信して「スーパーパワーを持つものがこの世にはいるんだ!」ということを世に知らしめることだったのです。
ダンの息子とケイシー、そしてミスター・ガラスの母の3人は、その動画が世間の人に届くのを見届けると、安堵の表情を浮かべてめでたしめでたし・・・。
シャマラン流ヒーロー像
『ミスター・ガラス』は当たり前のようにヒーローと悪役が登場する『アベンジャーズ』のような作品が溢れる現代に一石を投じた作品と言えます。
例えば『スパイダーマン』では蜘蛛に噛まれて糸が体から出てくるようになり、その能力を生かして叔父を殺した犯人を探しヴィランと戦うようになる・・・という一連の流れが派手なアクションと共に描かれていく。
ヒーローは当たり前に悪と戦い、というより悪がいること自体が当たり前であり、だからこそ彼らの存在が際立ってくる。
バットマンとジョーカーの関係のようなものです。
『ミスター・ガラス』ではどうでしょうか?
ヴィランがいるとすればダンとケヴィンを”生み出しす“きっかけとなった鉄道事故を企てたミスター・ガラスではないでしょうか。
しかし、何百人も殺したミスター・ガラスも最終的にヒーローを世間に知らしめることで彼自身がヒーローのような存在として描かれています。
ここ!ここが賛否両論が出るところではないでしょうか。
人を沢山巻き込んでまでヒーローを生み出すって、なにが善なんだよ!と突っ込まずにはいられないでしょう。
しかし、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』ではヒーローであったとしても一般市民を巻き込んで戦うことは善なのかという問いや、『マン・オブ・スティール』や『バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生』ではスーパーマンがいることでより凶悪な敵が地球を襲うという、ヒーローを際立たせる為のヴィランの存在という矛盾が描かれています。
ミスター・ガラスはヒーローとヴィラン両方の側面を持った存在であり、相互に際立たせる存在を一人で体現しているのです。
その描き方が個人的には好きで、だからこそ今作のタイトルも『ミスター・ガラス』なんだと思うのです。
さらにミスター・ガラスはケヴィンやダンに「自分の力を信じろ」と諭すシーンがありますが、シャマラン監督の信念がここに現れていると思います。
最終的に超人的パワーを持った人物が戦うシーンがネットに配信されるところで今作は幕を閉じますが、その後、本当に人々がスーパーパワーを持った人間がいることを信じ、同じような能力者が出てくるかどうかは描かれていません。
今や一般人でも簡単に動画を作り編集できてしまう時代、この映像にどれだけの力があるのでしょうか。
大事なのはその映像を信じるかどうか、なのではないでしょうか。
つまり、ヒーローを生み出し、世間で認知させるには信じる心が必要なんだと思います。
ミスター・ガラスがヒーローであるかどうかも、私たちがそう信じるかどうかで変わってくるのです。
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』ではアベンジャーズの戦いに巻き込まれて死んだ青年の母がトニー・スタークを非難する場面がありますが、彼女にとっては例えヒーローたちが悪を倒したとしても、そのヒーローこそがヴィランなのです。
当たり前にアベンジャーズはヒーローだ!と疑わない我々の認識に、「ちょっと待て」と言われているような・・・。
もうすぐアベンジャーズシリーズが終わるからこそ、『ミスター・ガラス』は大きな意味のある作品になっているのではないでしょうか。
結果、マカヴォイ作品。
なんだかんだダラダラと書きましたが、私が最終的に言いたいことは、
『ミスター・ガラス』はマカヴォイ作品だ
ということ。
あんだけミスター・ガラスが主役だとか言っといて今更何言ってんだって感じでしょうが、24の人格を持つケヴィンを演じたジェームズ・マカヴォイが本当に素晴らしい!
最後にケーシーに見守れられて死んでいく彼の表情の変化の凄み!
いまだにその姿を思い出すだけで泣けてきます。
『スプリット』でも十分「マカヴォイやべぇ」ってなりましたが、今作ではブルース・ウィリスやサミュエル・L・ジャクソンという名俳優を抑えての存在感。
まじまじやべぇ。
24の人格といっても、本当の人格である「ケヴィン」とリーダー格の一人で物腰柔らかな女性「パトリシア」、服の汚れを気にする神経質な「デニス」、永遠の9歳「ヘドウィグ」を主に演じているのですが、常に眉間にシワを寄せたデニスからパトリシアに人格が変わる瞬間に空気までツンと張りつめるような緊張感があり、「え?こでCG?」と思っちゃうほどお見事なへんげ。
ナイト・シャマラン監督も、「毎日スタッフがマヴォイの演技を見るために集まってきたくらい、素晴らしいパフォーマンスが次々出てくる。次世代に残る演技」と絶賛しているほどです。
個人的に彼がジョーカー演じたらヒース・レジャーに匹敵するんじゃないかと思ってます。
『ミスター・ガラス』の内容がどうであれ、マカヴォイの演技を観れるだけでも百点満点!
まさにマカヴォイの為にある映画だと思いました。
まとめ
良くも悪くもシャマラン劇場。
賛否両論ある作品ですが、約20年にわたって構想し完結にまでもっていったシャマランの情熱だけで、私は泣きそうになります。
そしてダンの息子やミスター・ガラスの母、主要人物を取り巻く人物をそのままの俳優陣で引き継いでいる点も、涙腺が緩むポイント。
内容云々かぬんだけでなく、キャストのパワーが素晴らしい今作。
ぜひ劇場で涙をたたえながらご覧ください!
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