※ネタバレあり 映画『バイバイマン』レビューとイラスト

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2017年に公開され、レンタルがはじまったばかりのこの作品。おかしなタイトルで興味をそそられて観たのですが、意外にもすごくしっかりした見ごたえのあるスリラーホラーでした。

でもやっぱり「バイバイマン」(原題ママ)っていう名前の悪霊おじさんにはなんかちょっと半笑いを浮かべてしまうし、特に謎解きもなくただただ「怖いやつが迫ってくる」という恐怖でしかなく、最後までちょっとよくわからないまま終わった感が・・・。

この映画を観るなら

※現在huluやnetflix等の配信サイトでは確認できませんでした。(2018/4/30)

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映画『バイバイマン』概要・あらすじ・キャスト

概要

2017年に公開されたホラー映画(アメリカ)。

ロバート・デイモン・シュネック(英語版)が2004年に発表したノンフィクション『The President’s Vampire』に収録された『The Bridge to Body Island』を原作としている。

原題は『The Bye Bye Man』。キャッチコピーは『考えるな 言うな』この名を知るだけでお前は死ぬ。

あらすじ

1969年、とある町で大量殺人事件が発生した。犯人は近所住民に向かって銃を乱射しながら、「誰かが名前を呼んでいるのか?」「名前を言うな、名前について考えるな」と叫び続けたのだという。

現代。エリオット、サシャ、ジョンの3人は都会から遠く離れた場所にある屋敷に引っ越してきた。その直後から奇妙な現象が3人の周辺で発生するようになった。サシャは咳き込むようになり、エリオットはベッドサイドテーブルに現れては消えるコインを発見した。屋敷を調べていると、エリオットは「バイバイマンという名前を口にしてはならない」という落書きを見つけた。その後、おふざけで降霊会が開かれたが、エリオットはその場でバイバイマンの名を口にしてしまった。

サシャの病状は悪化する一方で、ジョンとエリオットは幻覚を見るようになった。そんな状況下で、エリオットはサシャとジョンが自分をからかっているのではないかと疑い始めた。そんな折、3人の友人でもあったキムが電車に轢かれて亡くなるという事件が発生した。ショー刑事から尋問されたエリオットは、キムがエリオットら3人を殺害する計画を立てていたと聞き知ることになった。

自分の周辺で起る奇怪な現象を調査するべく、エリオットは地元の図書館へ向かった。そこで、彼はバイバイマンに関する逸話の存在を司書から知らされることになった。かつて、青年が自分の家族を皆殺しにした容疑で逮捕された際、彼は「バイバイマンにこうするよう仕向けられたんだ」と主張したのだという。青年から直接報告を受けた人物は1969年に大量殺人事件を起こしたが、人々がバイバイマンの存在を知っていると確信するや自殺したのだという。エリオットは報告者の妻であったレッドモンの元を訪れた。彼女はエリオットに「あの呪いは人を幻覚で狂気に陥れ、やがては死に至らしめる。呪いを免れる道は名前を口にしないか、名前について考えないことしかない。もしも名前を知ってしまった者がいたなら、その者は死ななければならない。」と語った。

エリオットが何とかして呪いを解こうとする一方、呪いの影響はどんどん深刻になっていくのだった。

(Wikipediaより)

監督

ステイシー・タイトル

キャスト

●ダグラス・スミス:エリオット

本作の主人公。

親友ジョンと恋人サシャの3人で、なんか気持ち悪いけど広い、古い家を借りて住み始める。
はじめはバイバイマンどころか霊やオカルトに対して否定的な生意気ボーイだが異常事態に否応なく巻き込まれていく。ガリガリ。

どうでもいいけどマイケル・シャノンとノラ・ジョーンズを混ぜたような顔。ガリガリ。

 

●ルシアン・ラヴィスカウント:ジョン

エリオットの親友で、ルームメイト。

サシャに手を出してる疑惑があったりキムと寝たりと、プレイボーイのお調子者。
今作はバイバイマンが「幻覚」を多数仕掛けてくるのですが、その「幻覚」のおかげで
(どこからどこまでが幻覚なのか混乱させるつくりになっているため)
彼が実際にどういう人物なのかはぶっちゃけよくわかんない。

まぁそんな悪いやつでもないっぽい、たぶん一番かわいそうな役回り。細マッチョ。

 

●クレシダ・ボナス:サシャ

エリオットの恋人。

最初からこの家を気持ち悪がるものの結局住み始める。
ジョン同様、この子の言動もどこからどこまでが事実で幻覚なのかわかりにくい。

要するに怖がり要員のヒロイン。ガリガリ。

 

●バイバイマン:ダグ・ジョーンズ

名前を呼ぶと、散々幻覚を見せ幻聴を聞かせてその人自身を事故死させたり、人を殺させたりしたあげく、最終的に変な犬と一緒にぬるっと現れる悪霊。

ほんで現れて何をするかというと別に何もしない。こっちを指差すだけ。
なんやねんこいつ。きしょ。

「首も手足もどんだけ長いねん」でおなじみのモンスターアクター、ダグ・ジョーンズが演じている。

とにかく長い長すぎる

ダグ・ジョーンズといえば、2018年のアカデミー作品賞「シェイプ・オブ・ウォーター」での半魚人役。このブログでもレビューしているのでよかったらご覧ください。

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●ジェナ・カネル:キム

3人の引越しパーティーで「この家なんかおかしくね」的なことを言い出す霊感女子。
その夜、4人で降霊会を行うが、エリオットと口論になり「バイバイマン」という言葉を知ってしまう。

結局自分のルームメイトにもそれを話してしまったために彼女を殺し、3人までも殺そうとしていた。エリオットの車で3人の家に向かう途中、幻覚によって踏切に飛び込んで事故死する。

 

●キャリー=アン・モス:警部ショウ

キムの事故現場にやってきた警察官。

エリオットを疑い連行し聴取するが、エリオットの鬼気迫る「あなたやあなたの家族にも危害が及ぶから言わせないでくれ」というセリフによって彼を釈放する。それでいいのか警察?

最後の最後、バイバイマンによってエリオットとサシャは殺され(殺し合いさせられ)、ジョンもなんやかんやで瀕死の状態に。

救急車に運び込まれる死にかけのジョンから「バ・・・バ・・・・バイバイマ・・・」的なことを聞き出してしまう。

言わずと知れた『マトリックス』シリーズのトリニティです。

 

●リー・ワネル:ラリー・レドモン

1969年に大量殺人事件を引き起こしたジャーナリスト。

実は彼も「バイバイマン」の名前を知ってしまったのだった。
被害をそれ以上拡大させないために、その名前を知っている人物を片っ端から殺し、自らも自殺した。

しかし彼が残したナイトテーブル(ベッドサイドテーブル)がどういうわけか3人が入居した家に置いてあり、そこに[考えるな 言うな]、[BYE BYE MAN]という殴り書きがあったためにエリオットがその名前を知ってしまう。

 

●フェイ・ダナウェイ:レドモン夫人

ラリーの未亡人。ラリーが決して彼女に「バイバイマン」という名前を教えなかったために、現代まで生き残っている。

昔はめっちゃ美人だった往年の女優、フェイ・ダナウェイが演じている。
整形なのかお注射なのかわからないけど顔の皮膚がこう、なんか、ひきつっている。

 

映画『バイバイマン』感想 

70点

面白いけどこわくはない

ネタバレも何も、って感じですが、主人公たちは全員死にます。
ジョンだけラストシーンまでギリ生きてますが、血をゴボォって吹き出しながら「バ・・・バ・・・・バイバイマ・・・」って言おうとする感じ、死にますねあれは(確信)

救いはありません。

じっとりとしたイヤ〜〜な空気感のある映像や、がんばる若手俳優たちとその脇を固める名優たちの演技など、見ごたえはあります。また不穏な音楽やカット割りによる驚かせ方などは深く考えずただただワーキャー見るためのホラー・スリラー映画としては十分面白かったと思います。

しかしながら・・・

なんなんだ!バイバイマンて!!なんだそのネーミングセンス!

まぁ、このネーミングのキャッチーさゆえに私も見てみようかなと思ったわけですから、その点においては大正解だったのかなと思います・・・。

でも、主人公たちが「バイバイマン」と口にするたびに、こちらは薄ら笑いをしてしまいます。

こ、こわくねぇ・・・・

バイバイマンが何をするかといえば、とにかく幻覚・幻聴の一辺倒。名前を知っている人間同士を疑心暗鬼にさせたりして傷つけ合わせ、殺し合わせます。
あとたまに彼自身と彼の変な犬がチラッと視界の隅に見切れたり、暗闇にたたずんだりします。

で、だいたい終わったかな〜っていうころに普通に姿を現して、こっちを指差します。

笑うセールスマンか!!

ってかあの血まみれの犬はなんだったんだ?なんの意味があったんだ?

ヘルハウンドやブラックドッグって言葉があるように、キリスト教文化圏にはなんとなく「犬」が悪霊に変化したものに対する恐怖心があるのかもしれませんね。

『ドント・ブリーズ』や『パーフェクト・トラップ』でも犬の存在によって恐怖心を煽る演出はされていましたね。わんわん!いうて。

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かといって本作の犬が効果的だったかといえば、まじでよくわかりません。てかいらなくね?

普通に出てくるんかいバイバイマン

結局最後まで、バイバイマンが何をしたかったのかよくわかりませんでした。
それ自体はいいと思うんです。まぁ悪霊ってそういうことなんでしょうしね。

おそらく脚本家さんや監督さんは「理由のない超越的な悪意」や「わけのわからない恐怖」を狙っていたのだと思います。

「名前を知っただけで、なぜ狙われなければならないんだ」という理不尽さのなかで、問答無用に押し寄せる地獄のような体験、ですよね。

であれば、果たしてバイバイマンは、ふっっつ〜〜〜に姿を現してしまってよかったんでしょうか?

「超越的な悪意」や「わけのわからない恐怖」をもたらすはずの悪霊が、全然余裕で人間の形して出てきちゃったところで、私はもう冷めてしまいました。

バイバイマンは、怪優ダグ・ジョーンズが演じているため、たしかに迫力ある造形ではあります。

しかしながら「なんで?なんでそんなことされるの?」と、主人公たちと一緒にパニックになったつもりで見ている観客は、急に普通に現れたバイバイマンを見て「あぁ、こいつがやってんのね」「こいつがワルモノね」と中途半端に因果関係を納得してしまいます。
でも「なんでそんな悪いことするのか」はよくわからないので、残された怖がるポイントは「映像の迫力」のみとなってしまっているように思います。

うーーん、これは文化の違いなのかな〜〜。

アメリカやイギリスのホラー作品って、ときに宗教観を交えて、とにかく

  • なぜ(どんな因果関係があって)
  • どんな姿の悪霊/モンスター/サイコパスが
  • どんな手段で

人間を襲うのかをはっきりと見せる傾向があるような気がします。

ジャパニーズホラーでは、その辺はボカされますよね。
はっきりとは姿のわからない、どうやって害をもたらしているのかもわからない「霊」がいて
その本体の死体が実は自分のすぐそばにいた、みたいな。

恐怖っていうのは、いつの間にか忍び寄っていたり、誰に何をされているのかわからないところに生まれるものじゃないかと思います。

その点で、この映画は「恐怖」の設定が中途半端だったように思います。

「わけがわからない恐怖」でいくならバイバイマンはあんなにはっきりと姿を表すべきではなかった

ちゃんと「恐怖」の段取りを説明するなら少なくとも「かつてのおぞましい呪いがあった」とか、主人公たちが「やばい場所に踏み入って絶対悪を目覚めさせてしまった」とかそういう流れがないと、こちらはポカーンです。

名前を言ってはいけないあの人

「名前を言ったら/知ってしまったら最後」っていうことなんですが、不思議なものでこの「名前が禁忌」っていうのは世界中にある文化なんですよね。面白いですよね。

「名前」というのはある種究極の封印だったり呪詛だったりします。文字列ひとつで一人の人間を特定してしまう記号なわけですから、究極にパーソナルでプライベートなスペル(呪文)ですよね。

天皇陛下や皇太子さま、あるいは社長や校長先生のことを名前で呼ばないですよね。
なぜならそれはとっても失礼なことだから。役職や、その人がいる場所で呼びます。

わかりやすいところで言えば、日本の皇太子は「東宮」(宮殿の名前)と呼ばれます。

映画の中では、もちろん誰しも思い当たるのは『ハリー・ポッター』シリーズのヴォルデモート卿。

また『千と千尋の神隠し』で主人公の千尋が湯婆婆に名前を奪われるのも、この「名前が究極のパーソナルスペル」であることからきています。名前を奪うことによって、彼女を完全に支配することができるわけです。

この映画も「名前を言ったら/知ってしまったら最後」っていう設定は非常に面白いと思います。

思いますが、しかし・・・

いや言うてまうやろそんな名前

「バイバイマン」て!

こういう禁忌なワードとか呪詛みたいなものって、意図して言わないと言えない言葉じゃないといけないと思うんです。

例えば「ヴォルデモート」とか、「ゴリチャゾマルチンダメスポリヤンソ」(今適当に考えました)とかそういう。

会話の流れでポロっと出てくるような一般名詞とかが含まれてちゃいけないですよね?
子供とかが普通に友達にニックネームでつけてしまいそう。

前述した通り、映画のネーミングとしては非常にキャッチーですし、ある種大正解だと思います。

しかし「そんなん別に、普通に言うてまうやん」と思ってしまったが最後、もやもやした気持ちでその設定に入り込めないままこの映画を見終えることになるのです・・・・。

まとめ 

楽しみ方を間違えました

設定が面白そうだし、名前も変だし、意外なトリックが仕掛けられた隠れた名作かも、なんて思いながら鑑賞した私。

その期待は裏切られました。

この映画、もっと単純に、ホラー・スリラーでよくある「突然ドーーン!!」を楽しむ映画だったのだと思います。

余計な辻褄を考えず、ただただ視覚的・聴覚的にワーキャー楽しむことができれば、ちゃんと面白い映画だったと思います。

これから観る人はその辺注意してください!(手遅れ)

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