2018年アカデミー主演女優・助演男優賞『スリー・ビルボード』レビューとイラスト ※ネタバレあり

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92点

アカデミー作品賞有力候補!→主演女優賞・助演男優賞受賞!

 

こんちゃ!アサミヤです。

いよいよ3月5日(日本時間)に2018年(第90回)アカデミー賞が発表されますね。

そこで今回は現在日本で公開中の作品の中から作品賞最有力候補との下馬評の作品をご紹介したいと思います。

 

その名も

『スリー・ビルボード』

(原題:Three Billboards Outside Ebbing, Missouri)

あらすじ

最愛の娘が殺されて既に数ヶ月が経過したにもかかわらず、犯人が逮捕される気配がないことに憤るミルドレッドは、無能な警察に抗議するために町はずれに3枚の巨大な広告板を設置する。それを不快に思う警察とミルドレッドの間の諍いが、事態を予想外の方向に向かわせる。(filmarksより)

 

今回のアカデミー作品賞はこの作品か『シェイプ・オブ・ウォーター』のどちらかじゃないか、というのが映画評論家の皆さんの意見にも多いようです。

町山智浩さんの予想がこちらに詳しく掲載されていました。

町山智浩の映画塾
WOWOWがお届けしている映画から、映画評論家の&#3...

 

アサミヤの予想は、、、ぶっちゃけぜんっぜんわかりません!!!

アカデミー会員が好む傾向とか知らんがな!!そういうのは町山先生にお任せして、私は今日も勝手に絵を描き、感想を書きなぐるのである。

 

ちなみに、作品賞にノミネートされているのは以下の作品です。

日本で公開済みの作品に関しては全て本ブログでもレビューしております!

ぜひそちらも読んでいただけたらと思います!

 

2018年アカデミー作品賞候補作品

◆スリー・ビルボード(日本公開:2018/2/1)

◆シェイプ・オブ・ウォーター(日本公開:2018/3/1)

◆ゲット・アウト(日本公開:2017/10/27)

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◆レディー・バード(日本公開:2018/6月)

◆ダンケルク(日本公開:2017/9/9)

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◆ファントム・スレッド(日本公開:2018/5月)

◆君の名前で僕を呼んで(日本公開:2018/4/27)

◆ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男(日本公開:2018/3/30)

◆ペンタゴン・ペーパー/最高機密文書(日本公開:2018/3/30)

 

オバハン・アウトレイジ

この映画、最初から最後までどんよりとした空気が漂っています。なんとな〜くジットリとした感じ。

映像は非常に美しく、固定カメラでじっくりと奥行き感のある風景や状況の映像を見せたかと思うと不意に、小さく揺れるハンドカメラの緊迫した映像がカットインします。

そんな静謐な映像の中で突然繰り出される暴力!!暴力!!暴力!!

 

主人公のミルドレッドを演じた超名女優フランシス・マクドーマンド(1996年『ファーゴ』でアカデミー主演女優賞)は、常に不機嫌そうな様子で突然誰かを罵ったり、警察署に乗り込んだり、放火したり、高校生のキンタマを蹴り上げたり、もう無茶苦茶なんです。

でもそれが妙に心地いい。

ミルドレッドは終始しかめっ面で、何を考えているのか、何をするつもりなのか、怒っているのか喜んでいるのか、よくわかりません。なのでこちらも「ぶっ殺しちゃえ!」と思ったり、「何をするつもりなんだろう!?」と思ったりで、ハラハラドキドキさせられます。

淡々と、とんでもない暴力をかます。。

これって誰かの作品に通じるものがありますよね。

そう、我らが北野武監督です。

 

 

顔だけ見ると「おばはんウィレム・デフォー」って感じですが

ウィレムのおっちゃん(wikipediaより)

 

実は「女たけし」

私はこの映画に「オバハンアウトレイジ」というキャッチコピーを捧げることにしました。

 

じっとりとした静かな雰囲気の中で「笑うところかどうかギリギリのライン」のブラックジョークがふんだんに盛り込まれていて、それもどことなく北野映画っぽいんですよね。

そしてもう一つ、北野映画に通じる点が。

 

誰一人として正義ではない

主人公のミルドレッドが、レイプの末殺された娘のために

娘はレイプされて焼き殺された」「未だに犯人が捕まらない」「どうして、ウィロビー署長?

という「三枚の看板=スリー・ビルボード」を掲げるところからこの映画は始まります。つまりは警察批判であり、注目を集めることで捜査が進められることを期待しての行動ですね。

確かに、警察の内部が腐りきっている様子も描かれます。

それを象徴するのが名優サム・ロックウェルが演じるディクソン。思慮に欠け、人権意識に乏しく短気な彼はミルドレッドに対して怒りを募らせ、すぐに暴力や嫌がらせを働きます。

いやいや、やりすぎやし!!

と、誰もが思ったことでしょう。腹が立ったくらいで人を窓から放り投げるでしょうか?

こいつがとにかくバカなんです!笑

 

しかし、それに対する主人公ミルドレッドも負けてはいません。警察署に放火するし、自分に対して敵意を持った歯医者さんの指に穴を開けちゃったり。

そう、彼女も決して「正義」ではないのです。ていうかやりすぎ!

また、途中自殺してしまう(※超ネタバレ)、ミルドレッドに名指しで批判されていた警察署長だって、優しい人物に見えますが結局は自分のことしか考えていない身勝手な人物に見えました。

ミルドレッドに看板をやめるよう言いに行った時のセリフが印象的です。

「こんなこと言いたくないが、おれはガンなんだ」

それに対するミルドレッドの返答が痛快でした。

「知ってる。町中知ってる。あんたが生きてるうちにと思った」

 

ひど!!!

 

ミルドレッドの元夫もクズだし、その若い嫁はバカだし、殺された娘も不良だし、警察官たちも差別的で自分たちの保身しか考えていない。

あ、もちろん良心的な人物も(ちょっと)登場します。

看板業者の黒人青年や、新しく赴任してきた黒人の警察署長、看板を所有する広告会社の青年レッド、ミルドレッドに想いを寄せるジェームズなど。

しかし彼らも本当のところでは何を考えているのか、表情からはよくわかりません。

 

キャラクターの考えは説明されない

とにかくこの映画内では「行動」がひたすら提示されます。

どういうつもりでそういう行動をとったのかという「説明ゼリフ」や「表情による説明」が意図して省かれているように感じました。

ミルドレッドも、何か考えているような顔をするもののその後なにをするのか、こちらはうかがい知れません。

観客に提示されるのは「行動」と「視点」です。

物語内でとある重要なシーンがあります。

 

 敬愛する警察署長が自殺したことを知ったディクソンは怒りに震えたまま、問題の看板を所有するレッドという青年の元に向かい、ボコボコにした後二階から彼を放り投げてしまいます。完全に逆恨みです。

 しかしその後、ミルドレッドによって放火された警察署にいた彼は全身に重度の火傷を負い、入院することになります。そして皮肉にも同室にいたのが、彼がボコボコにしたレッドその人だったのです。

 顔じゅう包帯を巻いていたディクソンに気づかず、レッドは声をかけます。

「よう、オレンジジュースでも飲むかい?」

 その優しい言葉にほだされたディクソンは正直に「窓から突き落として悪かった」と伝えます。それを聞いたレッドがどうしたか?

 なんと彼は、ぎこちない動きでオレンジジュースをディクソンに差し出したのです。

 飲みやすいように、ストローの向きまで直して。

 

このシーンで印象的だったのは、ほとんどがディクソンの一人称視点で撮影されていた点です。包帯が少し上下にかかった画角で、レッドの行動をゆっくりと追いかけるのです。

レッドの顔も傷だらけで包帯が巻かれているため、あまり表情はわかりません。

その後、ディクソンの行動が変わっていくのですが、それも結果として「彼もあの件でちょっとかわったのかな?」程度です。

 

説明されないことで広がる意味

行動のみが示される、あるいは「何をするのか読めない」状態はラストシーンまで続きます。

ラストシーンはある「レイプ魔」らしき人物の元へ、ミルドレッドとディクソンがショットガンを積んだ車で走り去るカットで物語が終わります。

実際に行って何をするのか、本当に彼を殺すのか?

ミルドレッドが明るい表情で言います。

「道々、決めていこう」

 

えーーーーーーー、決まってないんや!!!

 

これはよくある「あなたの受け取り方次第ですよ」という映画の締めくくり方とはまたちょっと違ったもののような気がします。

この映画で終始描かれてきたのは、「行動」と「視点」、そしてそれによって生まれた「状況」だったと思います。

感情描写を抑え、三枚の看板を掲げたことによって奇妙に回り始めてしまった歯車が誰を巻き込み、誰を傷つけるのかを淡々と見せる映画でした。

この監督にとって、この作品にとって重要なのは

「この後何をするつもりなのか」ではなく「キャラが(何らかの)行動をおこすこと」であり、とにもかくにも何らかの決意を持って(たぶんね)二人が「行動を起こした」ことを描いて終わったのでしょう。

もしエンドロールで後日談なんかあったりしたら、ぶち壊しだったでしょうね。

というかそもそも、この映画は全編を通じて、ミルドレッドの娘を殺した犯人を探すことなんて追いかけていませんしね。

 

名優たちの凄み

あんなに差別的で暴力的だったディクソンも、なぜか終始、「ちょっとカワイイやつ」なんですよね。

それにはもちろんディクソンのスーパーマザコンぶりだったり(このお母さんがまた面白い!!)、なぜか大事な時にイヤホンで音楽を聴いていて何も気づいていない天然ぷりだったりという要素もあるのですが、なによりこのディクソン役を演じた名優サム・ロックウェルのうまさがあると思います。

不遜に見えたり、焦って見えたり、見る者によっていろんな捉え方ができそうな複雑な表情を見せてくれます。

余計な説明をせず「行動で見せる」映画というのは、演者の技術にかかっている部分が大きいですよね。

主演のフランシス・マクドーマンドや、自殺するウィロビー署長役のウディ・ハレルソンなどの名優たちが、「あからさまに感情を出さず、入り組んだ思いを含んだ複雑な人物像」を演じきっているからこそ、この映画には説得力が生まれているような気がします。

 

3/5 追記
アカデミー賞が発表され、本作は主演女優賞と助演男優賞を獲得しました。しかも助演男優賞には二人ノミネート! やはり俳優陣の凄みが発揮された作品だったんですね!

 

とにかく、アカデミー賞に選ばれるか選ばれないのか、知ったことではありませんが、シンプルなエンターテインメントとは違った演技の凄みを見せてくれる名作であったことは間違いありません!

ぜひ、劇場でご覧下さい!

 

あ、そうそう。サントラもとってもよかったので是非ぜひゲットしてみてください!!

 

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