『残酷で異常』イラストとレビュー ※軽いネタバレあり

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『残酷で異常』あらすじ・キャスト

あらすじ

教師のエドガーは、ある日誤って妻を殺害してしまう。
自らも意識を失ってしまった途端、妻を殺害する数時間前に戻っていた・・・。

そして彼は永遠に妻殺害の現場を繰り返す、奇妙な部屋に閉じ込められてしまうのだが・・・。

監督・脚本

監督・脚本:マーリン・ダービズビック

キャスト

●デヴィッド・リッチモンド=ペック:エドガー

教師で女性に奥手な小太りおじさん。
妻を愛していたにも関わらず、ある日誤って妻を殺してしまう・・・。

●Bernadette Saquibal(読み方わからん):メイロン

エドガーと結婚するも、最近は彼の束縛がきつく喧嘩ばかり。
連れ子とエドガーの仲も気になるしで、めっちゃストレス溜まってそうね。

『残酷で異常』感想

90点

こんちゃ!アサミヤです。

みなさま、ループものの映画はお好きですか?
SF作品でよく見られる「登場人物が作中で何度も同じ日、同じ時間を繰り返す」というジャンルですね。

私は大好物なんでございます。
有名なループものといえば『バタフライ・エフェクト』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』などの大作がありますが、私はどちらかというと世にあまり知られていないB級作品の中から選りすぐって観るのが好きなのです。

なぜなら元々ループものって観客を納得させるだけの説得力が必要なわけですが、脚本力がないB級では大体がクS・・・いえ、駄作が多いわけで。
しかし、たまに、本当にたまのたまにその中でもピカリと光る良作が紛れ込んでいてい、それを観たときにはまさしく宝物を見つけたような気持ちになるのです。

一種のギャンブルに近いもんなんでしょうね。

時間という対価を支払っているわけですから。

 

そして今回ご紹介する『残酷で異常』は、ループものであり、タイトルに見合わない良作でございました。
カナダ産のループ物、主人公は太っちょおじさん、そしてお堅い漢字タイトルが一見さんお断り状態な今作は、蓋を開けてみればとてもよく練られた脚本と登場人物のキャラ立ちでまさしく掘り出し物でした。

今回は軽くネタバレもしておりますので、未鑑賞の方はご注意くださいませ。

 

軽いあらすじは、主人公の小太りおじさんエドガーが、妻メイロンを誤って殺害してしまうのですが、自らも息絶えてしまうとまた妻を殺害する数時間前に幾度と戻ってしまうという、まぁここまではよくあるループものですね。
しかし、突如エドガーは見知らぬ部屋に迷い込み、海外映画でよく目にする集団カウンセリングらしき場面に遭遇するのです。
なぜかテレビ画面に映った老婆がエドガーを呼び、みんなの前に出て自らの罪を告白しなさいと言うんだけれども、いやいや、自分は妻を殺す気なんてなかったし、あれは事故だったんだからなんて逃げようとするんですよ。

ここから段々不条理で不穏な空気が重くなっていくわけですが、同じ集団カウンセリングにいたアル中ジュリアンや70年代ファッションのドリスたちとの繋がりもあって少しずつ事を理解し始めるエドガー。
どうやらここはまるで”天国“か”地獄“のような場所で、みんなそれぞれに人を殺めて死んだ人間らしい。
罪を犯してるんだから地獄なんでしょうけどね。

それぞれに割り当てられた扉を抜ける事で罪を犯した日に戻り、何度も何度もその日の追体験をするという抜群に精神的にきつーい罰を与えられる場所だったのです。

 

今作の面白いところは、追体験を繰り返す度に最初は優男に見えたエドガーが実は妻を束縛し精神的な暴力を振りかざすDV夫だったということが少しずつ見えてくる点。

普通ループものは、そのループから抜け出すことに焦点を絞るものが多いと思われるんですがね。
確かにエドガーもなんとか生前に戻れないかと色々模索するのですが、しかし今作の一番の重きはエドガー自身がずっと蓋をしていた妻と妻の連れ後への醜い想いや言動に気付き反省していく過程にあるんです。

彼自身が変わる事で妻やとある人物を救う事になり、(ある意味)ループから抜け出すことになるんですが、決して「めでたしめでたし」で終わらない、しかし妙な爽快感がある独特の後味もいまだに尾を引いております。

 

ちなみに『残酷で異常』というのは『Cruel & Unusual』という現代をそのまま訳したものですが、「罪に対して異常なほど残酷な罰」って意味らしいです。

ぱっとタイトル聞いただけだとよっぽど残酷描写があるんだろうなと思われると思いますが(私もそう思いました)、全く残酷シーンございませんのでご安心くださいませ。

 

最後に、「地獄」や「罪と罰」というテーマからもキリスト教を思い浮かべると方も多いと思いますが、決定的にキリスト教を彷彿させるのが、自殺した者への過剰なほどの差別的な目線。

聖書では自殺は「罪」という認識であり、神への冒涜なのですね。

それを踏まえて観てみると、最後のシーンが附に落ちる。

 

ぜひ私同様ループものが大好きな方、タイトルや小太りおじさんに躊躇する事なくご覧くださいませ。

アサミヤカオリ

イラストレーター/造形作家/映画コラムニスト/漫画家

1983年生まれ。大阪出身。
2018年より徳島に拠点に移して活動中。

AWAP『映画コラム』/ BRUTUS『赤恥研究所』連載中
B級映画/ラジオ/観葉植物好き。最近は22時就寝5時起きで制作がんばってます。メキシコ行きたい。

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