あらすじ
セレステ(ラシダ・ジョーンズ)とジェシー(アンディ・サムバーグ)は一見理想的な夫婦だが、会社を経営し充実した日々を送る妻セレステに対し、なかなか芽が出ないアーティストの夫ジェシーは、あくまでも自分のペースで生活していた。そんなある日、永遠に親友でいられるようにとセレステの提案で離婚を決意。しかしある出来事をきっかけに、セレステはジェシーの存在の大きさに気付いて……。
『セレステ∞ジェシー』感想
こんちゃ!アサミヤです。
今回ご紹介するのは残念ながらB級ではございません。
全くもって真っ当な恋愛映画『セレステ∞ジェシー』。
真っ当と言いましたけど、実は中身は捻くりかえった作品です。
パッケージを一見すると確かによくありそうな恋愛映画っぽい様相なんですが、
ちょっと甘い気持ちになろうと手を伸ばすと火傷します。
特に過去にヤサ男に恋したりフラれたりしたことある方は大火傷かもね。
まず主人公のセレステはバリバリのキャリアウーマンで”自分は正しい!”って思い込んでるのがプンプン臭っくる正直アサミヤ苦手なタイプの人間なんですけど、
彼女がメインでお話は進んでいきます。
対するジェシーは見るからにダメ男というか、優しいだけが取り柄だよって感じのまんまヤサ男。
一応アサミヤと同じフリーのイラストレーターしてらっしゃるので、
「お前もっと営業とかしろよ」と日中からダラダラしてる彼にセレステ以上にお叱りの言葉を添えておきました。
この二人、オープニングでは図書館でチューしたり証明写真機で顔寄せ合って写真撮ったり(←ちょっと憧れる)、すっごくラブラブなんだけど、
いきなり月日が経って別居してることになってます。
別居中なんだけど向かいの家同士に住んでるから、なんだかんだ仲の良い二人。
それを「異常よ、あんたたち!」と共通の親友になじられてもお構いなし。
はじめはまだ未練タラタラのジェシーを子供のように軽くあしらってるセレステが優位に立ってる状態なんだけど、
ある事件をきっかけに立場が大逆転。
その事件とは・・・
ジェシーに子供ができたのです。
もちろん、セレステ以外の女性の、です。
この話を聞く少し前、喧嘩をしたことをきっかけにセレステはジェシーを受け入れようと決めてたもんだから、余計にダメージがでかい。
そして別居中だったとは言え、自分の知らない間に女性と行為に及んでいたなんて知って、これまたプライドの塊のセレステの精神ズタズタ。
ジェシーはセレステ以外の女性と結婚することに罪悪感というか後ろめたさを感じてる様子を隠さないんだけど、
セレステは素直に「私はやっぱりあなたが好きなの!」なんて言えないもんだから二人の距離はどんどん離れるばかり。
はじめは強気で可愛げもない(見た目は十分可愛いけど)セレステが、どんどん崩れ始める。
今までヨガ教室に通ってたのを、アドレナリン全開になるからと超遠距離ランニングしたり、
友人宅でたらふく飲んで食っては酔いつぶれたり(髪型も気にせずゲップ全開なのが情けないけどめちゃかわいい)。
ジェシーは父親になる責任感からか、セレステとは正反対で冷静な大人になっていく。
この対比が見ててもうたまらんのです。
今まで追いかけられてた立場なのに、振り向けば誰もいなくて、前を向けばその追いかけられてたはずの男がいるわけよ。
それも新しい彼女持ちで。
セレステよ、辛いよね。
どれだけ素直にならなかったあなたに非があるとしてもさ。
でもね、同情はできないのよ。
だって彼女恵まれすぎなんだもの。
もう一人男が現れてセレステに求愛すんだもの。
結局追いかけられる立場なのよ、セレステは。
感謝しなさいよ、その恵まれた美貌に。
これを見てて一番辛いのは観客の女性ですよ。
”そんなにモテんのにやさぐれてんじゃないよ!”って平均的一般女性なら思うわよ。
なんて書きましたけど、他に好きな男がいるのに好きでもない男につけ回られんのも辛いのよね。
傷口に塩を塗るようなもんでさ、もう誰も愛せないなんて余計悲観しちゃったりしてさ。
だから言い寄ってきた男にも心を開けない気持ちもわかるわけ。
はじめは一方的に強い態度を取るセレステが本当苦手だったんだけど、自分の気持ちに気付いて、でも素直になれずにやさぐれていくセレステが愛おしくて応援したくなってくるのよ。
ジェシーが他の女と子供作ろうが関係ねぇよ!くっついちまえよ!
って思ったりね。
ほら、こういう”後からあなたのこと大事だって気付いたの”パターンって恋愛映画にはありがちやない?
ナタリー・ポートマン主演の『抱きたいカンケイ』とかもそうだったけど、女性が強がって素直になれないけど、最後の最後に愛を叫んで結ばれるっていうやつね。
『セレステ∞ジェシー』の二人もそうなってくれれば・・・
なんて思うのと同時に、やっぱり子供の存在って大きいよな、って思ったり。
いきなし二人の結末書きますけど、結局は離婚しちゃうんですよね。
でもこの映画のクライマックスは離婚することじゃないんですよ。
痛みを受け入れて成長するセレステこそが、この映画の見所なんです。
セレステが周りの友人に支えられて、ジェシーに尊敬の気持ちがなく慢心してきたことを反省する人間にまで成長する姿こそがこの映画を見ていて一番心揺らぐポイントなんですよ。
だから最終的に離婚する二人を見ても、まぁ辛いんだけど、なんか爽やかな気持ちになるし、素直になれた二人だからこそ今まで以上に強い絆で結ばれるんだろうなって予想もできるわけで。
この映画がすごく心に残るのは、ちゃんと人間としての成長を描きながら別れという選択に至ったからなんでしょうね。
やっぱほら、映画の面白みって登場人物の成長物語が基本じゃない?
だから世にはびこるただ酸いや甘いといった感情だけに寄れ動く恋愛映画とは一線を画して、『セレステ∞ジェシー』はリアルに痛みを感じれるから名作なんです。
リアルに痛すぎて、結構引きずる作品でもありますな。
爽やかな気持ちにはなれるけど、古傷痛むような作品なのでお気をつけて。
脇を固める登場人物にも是非注目して欲しいです。
特に上司のスコット役のイライジャ・ウッドと共通の親友のスキルツ役のウィル・マコーマックはとてもいい味でした。
スコットは見た目完全男のゲイなんだけど、滲み出る男好き感やゲイだからこその距離感でセレステをサポートする姿に普通に友達に欲しいわって思いました。
スキルツはスキルツでセレステに寄り添って励ますんだけど、「なんなら俺が慰めるよ?」って言ってくる割には一切手を出してこないすごく良い距離間を保ってくれる親友で、これまたコイツ欲しいわって思いました。
ちなみにスキルツ役のウィル・マコーマックはセレステ役のラシダ・ジョーンズと元恋人同士だそうです。
そんな友人達も含め登場人物がみんなどこか抜けていてユーモアだから、すごく辛い恋愛映画なのに全然重くない作品なのです。
映像もおされ。
ありきたりな恋愛映画に飽きた人におすすめです。
繰り返すけど、過去にジェシーのようなヤサ男に恋したことがある女性は何日間かは傷がシクシク痛むと思うのでお気を付けてくださいませ。
でも恐れないで。
その痛みは成長のア・カ・シ♡
一つ気になったのはジェシーの新たなる彼女というか妻になる女性なんだけど、
旦那が元嫁と普通に会ってて仲良くしてんの平気なんかいなってこと。
セレステ目線じゃなくて新妻目線の映画を作ったら、それはそれで辛くて痛い映画ができるんじゃないかしら。
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