感想
ある部屋で目を覚ました6人の男女。
彼らには一切の記憶がなく、暗示によって外に出ることができなかった。
初っ端から不穏な空気が流れる中、部屋に仕掛けられたトリガーによって徐々にルールが想起されていく。
それは男が悪いか女が悪いかを投票裁判することだった。
無名俳優さんで構成されたインディーズ映画のご紹介。
個人的に海外のいわゆるB級と呼ばれるインディーズ作品はよく観るのですが、
邦画は全くと言っていいほど手を出してこなかったんですよね(学生時代はVHSで極道モンや893モノのOV作品はよく観てたんだけどね)。
たまたま今日のんちゃん主演の『さかなのこ』を観てきたとこで、
「邦画ってやっぱええなぁ」と思ってたとこに、
今作の主演俳優さんからご紹介いただのがこの『ドラマクイーン フルコース』でして。
こりゃいっちょ観るかとまぁ正直期待せずに観たんですがね。
あれ、ちょっとナメテーターかも。
もちろん『さかなのこ』を観た後で無名俳優さんたちの演技の落差にはちょっとついていけないところもあったし、
低予算ゆえの安っぽさや脚本の荒さは目立つんだけど、
それを補うには十分の熱意に打たれましたね。
プロットのひねりやカメラワークへのこだわりに、
インディーズながらも良いものを作りたい!という作り手の熱意がびんびんに感じられましてね。
そうそう、私がB級を好きな理由はこれなんだよ!と思い出させてくれましたね。
どんなに安っぽくてもバカっぽくてもアサイラム作品やゾンビ映画を観てしまうのは、
作り手の一生懸命さや楽しいっていう感情が伝わってくるからなんですよね。
今作は特にテーマや設定へのこだわりがすごいんです。
テーマは「男と女」。
とある事件において、加害者であろう男性か被害者であろう女性のどちらが悪いかの投票をするのですが、
時間が進むごとに双方の立場が変わっていく、
果たして悪いのは男か女か・・・
これは一見普遍的なテーマでもあるのですが、監督が示したかった「答え」と照らし合わせると、
もっと大きな枠組みで考えることもできるのです。
LBGTや人種差別問題・・・今はSDGs運動のように、
「みんなが同じ目標(平等や平和、環境保全など)に向かって共に歩もう!」という風潮があるけれど、
下手するとそれは同じ方向に向かない者への差別にも発展しかねない、危険な思想ではないかとも思うのですよ。
それぞれの違いを受け入れようよ!という考えは至極まっとうだけれど、
それを運動にしてしまうとなんか違うなぁ、と。
一番良いのは、無関心であったり、理解できないならそれで構わない、という体なのではと私は思うのです。
共存と理解は別物で、理解できなければそのまま放っておけばいいし、
関わらないという選択をすることも可能なんだと。
それはLBGTでも男女でも、隣人も同じ。
作中に出てくる「理解できたと思った奴は理解できてない」っていう言葉がそれを示していると思うんです。
このテーマを斬新な設定に落とし込んだ監督はすごいなぁと感心さえしてしまいましたね。
その設定っていうのが、前述した通り密室に閉じ込められた男女がそれぞれ話し合い歪み合いながら男と女どちらが悪いのかを投票するっていうものなんだけれど、
結果によって悪いとされた性別に該当するものはみんな死刑になってしまう、という設定が『ソウ』や『キューブ』のようなホラー要素も持ち合わせてて面白い。
それぞれの男女の性格がいかにもフェミニストやいかにも女性差別主義者だったりと
際立っている点もキーになってくるから、ただただ「演出がわざとらしすぎん?」と侮ってはいけまんせんよ。
一見大根のようにも思える大袈裟すぎるくらいの演技も
ちゃんと意味ありげに見えてくるから。
そんな設定に前述のテーマを絡めて生み出された今作は、
一見難解だけれども観る人によっては感想が全く違うだろうから、
ぜひいろんな人と議論しながら観たい一作です。
今作のおかげでインディーズ作品もいいなぁって思えましたよ。
足りない部分はあるけれど、それを誤魔化すのではなく脚本や演出で足りない部分をカバーしようとする努力が見える。
作中でもアイドル上がりの女優の子に「(演技の下手さを)誤魔化してんじゃねぇよ!」って
監督がブチギレるシーンがありますけれども、ほんとその通り。
拙い部分があるのは仕方ない、それ以上に良いものにしたいという気持ちがあればよろしいと、
自分にも言いたい今日この頃。
万人受けする作品ではないけれど、ぜひこの時代だからこそ観てほしい作品です。ぜひ。
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懐かしいな、コレ。
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