アカデミー作品賞最有力候補! 祝・受賞!!
概要
あらすじ
一昨日『スリー・ビルボード』のレビューを書いたところですが、続いてはもう一つの本年度アカデミー賞最有力候補『シェイプ・オブ・ウォーター』についてレビューしていきたいと思います!
すでにゴールデングローブ賞で監督賞と作曲賞、ベネチア国際映画祭金獅子賞をとっている本作。
3月5日(日本時間)に発表されるアカデミー賞にも最多13部門でノミネートされており、現在最も注目度の高い作品です。
そんなわけで、アサミヤも気合を入れて昨日3月1日の日本公開初日に劇場で観て参りました!
ちなみに、『スリー・ビルボード』のレビューにも書きましたが、現在まで日本で公開されているアカデミー作品賞ノミネート作品については全て本ブログで紹介しておりますので、ぜひそちらもチェックでござる!
2018年アカデミー作品賞ノミネート作品
◆スリー・ビルボード(日本公開:2018/2/1)
◆シェイプ・オブ・ウォーター(日本公開:2018/3/1)
◆ゲット・アウト(日本公開:2017/10/27)
◆レディー・バード(日本公開:2018/6月)
◆ダンケルク(日本公開:2017/9/9)
◆ファントム・スレッド(日本公開:2018/5月)
◆君の名前で僕を呼んで(日本公開:2018/4/27)
◆ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男(日本公開:2018/3/30)
◆ペンタゴン・ペーパー/最高機密文書(日本公開:2018/3/30)
孤独な人やモンスターへの愛に満ちた作品
この映画に出てくる人物はみんな孤独です。
主人公であるイライザは声が出ず、同僚であるゼルダは黒人であり、ホフステトラー博士はソビエトのスパイであり、イライザの隣人であるジェイルズはゲイで身寄りもない・・・誰もが事情を抱えながら孤独に生きている。
欠点を持ち、社会からはじき出された人々が、これまた孤独な半魚人を起点に繋がり、行動を起こしていくわけです。
ギレルモ・デルトロ監督はモンスター好きで知られていますが、なぜ彼がモンスターが好きかというと「嘘をつかず、あるがままに生きるから」なんだそうです。
ギレルモ監督は言います。
モンスターは完璧であることに迫害された聖人なんだ。
”普通”ではない半魚人は、”普通”に生きようとする人間たちに殺される立場のモンスター。
真のモンスターは誰か?
真実とーーー愛と喪失の物語について
そしてすべてを壊そうとした
モンスターについて
私が初めて彼を目にしたのは『マン・オブ・スティール』のゾット将軍役なのですが、そのときも
高橋一生の私服がダサいって話題のツイートに、私が大事に保存していたシャノン父さんの画像を叩きつける日が来たようだなっ(`・ω・´)キリッ
くらえ!!#シェイプ・オブ・ウォーター
は明日公開🐟 pic.twitter.com/fThL9KPZeW
— ino (@ino_inox07) 2018年2月28日
見事なクリーチャー像
『パンズ・ラビリンス』に出てくる手に目がついた盲目のクリーチャーが見事過ぎてトラウマ級に怖かったのですが、今回の半魚人の造形も見事。
キモさと”思わずキスしたくなる”美しさが同居しています。
まぁ、じつは、一緒にラジオ配信しているPと観に行ったのですが、普通に「キモかった」「くさそう」と言っていました。
「粘膜的なネバネバ系のキモさが無理」とも。
ひょっとしたら、私にとっては「ギリギリの魅力的なキモさ」に見えたクリーチャー造形も、男性陣には「余裕でアウト」のキモさだったのかもしれませんねw
しかしながら、実はこのPの意見の方が正解なのかもしれない、とも思います。
なぜならこの映画は「種族を超えた恋」を描いた作品です。
つまり「こんな人を好きになってしまうなんてありえない」と観客が思わなければストーリーの前提が成立しないのです。「イケるかも」と思ってしまった私は、ちょっとアレなのかもしれませんw
でもほんまに美しかったんやもん!!
ギレルモ監督と、およそ人間を超越した半魚人のしなやかな動きを演じたダグ・ジョーンズに心からの拍手を送ります。
さて、この「種族を超えた恋」のおとぎ話や、「美しくない」(とされる)もの同士の恋の物語というものに関して、少し真面目に考えてみました。
本当の「シンデレラストーリー」
皆様はこんなことを思ったことはないでしょうか?
つーか「シンデレラ」とか
「美女と野獣」って、
美人とイケメンじゃなきゃ
成立しなくね!?wwwww
皆様がギャル語を駆使されているかどうかはわかりませんが、そういう疑問は誰しもふと抱いたことがあるのではないかと思います。
実際に、本作の監督ギレルモ・デル・トロの着想はそういった部分にあったようです。
シンデレラの正体
ギレルモ・デル・トロ監督はインタビュー等で何度も「これは様々な要素を持った新しい”おとぎ話”なんだ」と語っておられます。
確かに、「美女と野獣」や「シザーハンズ」と言った、種族を超えた恋愛ストーリーの系譜が見えますし、「人魚姫」の設定を「声の出ない女性と魚人のお話」へと反転させているのも明らかですね。
しかしおそらく本作の下敷きとして考えるのに最も適しているのは「シンデレラ」であろうかと思います。
特にギレルモ・デル・トロ監督が主人公のイライザ(サリー・ホーキンス)を単調で浮かばれない日々を過ごす清掃員と設定したのは、(もともとは作家のダニエル・クラウスという方のアイデアだそうですが)「灰かぶり姫」=「シンデレラ」に通じるものがあります。
シンデレラといえば「シンデレラストーリー」という言葉に象徴されるように、不遇の日々を送っていた人物があるきっかけで富と幸福を手に入れるというお話ですね。
まぁなんと、画一的で資本主義的で物質主義的で押し付けがましいんだろう、と私は思います。思いません!?
「なんやかんやいうても最終的にイケメンで金持ちの王子様と結婚したら幸せでっせ」
という価値観を、我々女子軍は幼い頃から植えつけられているような気がします。
でも実は、本当のシンデレラというのはそういう話でもないのです。
シンデレラの原型
シンデレラの元祖とされているお話は実は世界中に不思議なほどたくさんあり、最古のものは紀元前1世紀にまで遡るのだとか。
現在よく知られている「かぼちゃの馬車」やら「ガラスの靴」やらが出てくるお話は15世紀のフランスの作家ペローが作った『Cendrillon ou La Petite pantoufle de verre』というものなのです。
全然余談ですが、日本でよく知られている「おしん物語」は「シンデレラ」のことです。これ、豆知識な。
めんどいので詳しくはwikipediaにて→シンデレラ
そして、人類学者の中沢新一さんによると実はシンデレラの原型はもっと古い起源を持っているのだそうです。なんと数万年前、旧石器時代!
その多くの結末は決して「ハンサムでお金持ちな王子様と結婚できて幸せに暮らしました」といった物質的な幸福ではなく、よりプリミティブな「魂の幸福」を描いているのだとか。
なかでも、中沢先生自身が編集された”ネイティブアメリカンに伝わるシンデレラ”である「モカシン靴のシンデレラ」は象徴的です。
下手に解説すると野暮というか、大事な部分を間違えて伝えてしまいそうなくらい、繊細で抽象的なお話ですので、ぜひご自身で読んでみていただけたらと思います。
現代の我々が知っているシンデレラとは全く違う、本当の幸せとは何かを考えさせられるお話です。
中沢新一先生の、より詳しい文化人類学に関する著書はこちら。世界に伝わるシンデレラとその核の部分についても詳しく解説しておられます。
ギレルモ・デル・トロの描いた「シンデレラ」
ギレルモ・デル・トロ監督自身が語っている通り、本作が「シンデレラ」や「美女と野獣」「人魚姫」といった物語を「反転」させた設定とストーリーであることは明確です。
そしてそれらのさまざまなお話を一度「核」の部分までそぎ落とした上で「ごった煮」にしたような、舌がざらつくような、もしくは目を背けたくなるほど純粋な、”新しいおとぎ話”であるように感じます。
世間から虐げられ、無視される人々が自分自身の力で、たとえ周囲からどう思われようとも「魂の幸福」を見つけ、貫くという「本当のシンデレラ」が語ってきたことを実に先鋭に映像として描き出しているのではないでしょうか。
とまぁ、なんやかんや後から考えることも多かったのですが、アサミヤは映画館では純粋にエンターテインメントとしてハラハラ・ドキドキ・キュンキュンと、楽しめました!
『パンデ・ラビリンス』や『グリムゾン・ピーク』などのダークな世界観でありながら、すごくわかりやすい起承転結や声を持たない主役2人の恋愛模様など、今までのギレルモ監督作品とは違ってエンタメな作品に仕上がってるなと思いました。
しかし、ギレルモ監督らしからぬ作品なのではなく、モンスターの造形や非主流派の人物の描写などがより繊細で美しく仕上がっており、集大成とも言える作品なのじゃないかとも思います。
アカデミーを取ろうが取るまいが、素晴らしい作品です!
ぜひ劇場でご覧ください!
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