息子はいずれは巣立つもの、そして死を思え。映画『28年後・・・』(2025)レビューとイラスト※ネタバレなし

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概要

人間を凶暴化させるウイルスが蔓延した世界を舞台に繰り広げられる死闘を描いたサバイバルホラー。「スラムドッグ$ミリオネア」のダニー・ボイル監督、「シビル・ウォー アメリカ最後の日」のアレックス・ガーランドによる脚本でスマッシュヒットを記録した第1作「28日後…」、その続編である第2作「28週後…」に続くシリーズ第3作となり、第1作以来ダニー・ボイル監督×脚本アレックス・ガーランドのタッグが復活した。
「TENET テネット」「クレイヴン・ザ・ハンター」のアーロン・テイラー=ジョンソンがジェイミー役を務め、「教皇選挙」のレイフ・ファインズ、「最後の決闘裁判」のジョディ・カマーらが共演。シリーズ第1作「28日後…」で主人公を演じ、「オッペンハイマー」でアカデミー主演男優賞を受賞した俳優のキリアン・マーフィも製作総指揮として参加した。(映画.comより)

あらすじ

人間を凶暴化させるウイルスが大都会ロンドンで流出し、多くの死者を出した恐怖のパンデミックから28年後。生き延びるために海を隔てた小さな孤島に逃れた人々は、見張り台を建て、武器を備え、身を潜めて暮らしていた。ある日、島で暮らすジェイミーと、島を一度も出たことのない12歳の息子スパイクは、ある目的のために島の外へと向かい、本土に渡る。彼らはそこで、人間が人間でなくなった感染者だらけの恐怖の世界を目の当たりにする。(映画.comより)

キャスト

監督:ダニー・ボイル

出演:アーロン・テイラー=ジョンソン
   ジョディ・カマー
   レイフ・ファインズ

感想

あの『28日後・・・』を観た時の衝撃をいまだに忘れられないアサミヤです。こんちゃ。

ついに『28日後・・・』『28週後・・・』に続く最新作が公開されましたので、初日の初上映回に行ってまいりましたよ。

もうね、前作2作品を凌ぐオリジナル展開満載で、さいっっっっっっっっっっこうでした。

前作ともに「(擬似)家族」の繋がりがベースになっているのだけれども、今作はよりミニマムに、一つの家族、息子と父、息子と母という繋がりにフォーカスされていて、ゾンビものというよりはファミリーものと言っても過言ではないほどの感涙ストーリーに仕上がってましたよ。

パンデミック後、英国全土に広がった感染のために見放された本土を離れ、離島で暮らす人々。

その島で生まれ育ち、携帯も化粧というものも知らない12歳のスパイクは、母の病気を直すために母を連れて本土へと足を踏み入れる。

このスパイク、ただの無謀な行動にも見えるけれど、ちゃんと通過儀礼として父親から本土での身のあり方を事前に教え込んでもらっている。

そのシーンというか、父親と息子の関係性がすんっごく良くて。

父親のジェイミーは元々はどうやらひょうきんな人間だったらしいんだけども(嫁談)、スパイクを一人前の男に鍛え上げるため、あえて厳しい漢であろうとしている。

それでいて、スパイクがちゃんと矢でスローロー(地を這うのろまゾンビ)を射止めた時はしっかり褒める。

その緩急に「良い教育してんなー」と、息子を持つ母の私はめちゃめちゃ感心し、我が旦那よ、見習えよ・・・と心で思ったのであります。

でも、ジェイミーの魅力はそれだけではない。

島に帰って息子の勇姿を人々に伝えるのだけれど、酒が入って調子に乗ったジェイミーは息子が全てのゾンビを倒したことに仕立て上げ、息子から怪訝な顔をされる。

それどころか、島の若い女性からアプローチされてそのまんまイチャイチャ良いことしちゃって、なんとそれを息子に目撃される。

いや、これ、あかん父親やん。

とお思いになるかもしれませんが、このくらい欠けたところのある不完全さが魅力なのですよ。

うちの旦那も常々言ってます。

「もっと理不尽な扱いしなあかんかな(息子に対して)」と。

完璧に包み込み、全てを受け入れてくれる親しか見ずに育った時、理不尽さ満載な社会に放り出された時に対処できるのか、と。

女遊びしたり酒飲んでちょっと暴れるくらいの親を持った方が、荒波に揉まれても生き延びるんじゃねえかってね。

まぁ、実際私の父親がそうでしたけど、なんだかんだ好きですもんね、父親。

そして荒波に揉まれても、「そんなもんやで」っていい意味で諦める力はつきましたもんね。

だから、ジェイミーみたいな父親って結構理想的なんじゃないかって、私は思うわけです。

実際、父親の教育はしっかり受け継ぎつつ、父の失態を目にしたスパイクは自立していくわけです。

素晴らしき父と息子の物語がぎゅっと詰まっているんです。

そして、中盤からは母と息子の物語になっていく。

病気を患っている母、父と決別を決めたスパイクはなんとしても彼女を守り生かしたいという思いで本土を訪れる。

痴呆の入った母は本土へとやってきたことに混乱するも、息子の説得に頷き、強く息子を抱きしめる。

息子を持つ私、もうここで号泣やで。

その後もロードムービーのように様々な土地で危険な目に遭いつつも、目的地へ辿り着く二人。

母の病は治るのか・・・

今作のキーワード『メメント・モリ』が響くシーンはものすごくファンタジックで、「あれ、私ゾンビもの観にきたんやんな?」って疑ってしまうほどに美しかった。

いやぁ、ラストに交わす母と息子のシーン、もう最高に胸にきて、まさか『28日後・・・』シリーズで泣くとは思ってませんでしたよ。

こりゃあ息子を持つ全世界の母親に観て欲しいわ。

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もちろん、そんな家族のストーリーを凌駕するほどゾンビの存在は大きいわけで。

『28日後・・・』で疾走するゾンビが物議をかもしたけれど、あれから28年が経ったゾンビはさらに進化を遂げ、地を這うなめくじのような「スローロー」、ウィルスがステロイドのように作用し肉体が増強されまくった「アルファ」と、ゾンビが細分化されているのが厨二心をくすぐる。

そして、映像や音楽にもダニー・ボイル監督お得意のおしゃれサイケ演出が光りまくってる!

画角が斜めってたり、ゾンビが襲ってくるシーンでゴリゴリのラウドロックかけたり、不穏な映像を挟み込んだり。

もうそれ自体がMVかのような、ダニー・ボイル節が効いてて「なんかわたし今おしゃれなもの観てるー!」って気分になって最高にテンション上がりましたよ。

ゾンビものでありファミリーものであり時にファンタジーものであり・・・アート作品とエンタメ作品の間に存在する、超カルトな印象もあり。

もう最高すぎて、2025年個人的ナンバーワン(あと半年残ってるけど)。

そうだ、ラストに出てくるパルクール集団、あれにも度肝抜かれたな・・・これ続編ありですか!!!
って期待しるんだけど、どうだろう・・・

シリーズ進むごとにパワーアップしてるから、ぜひ『28年後の28日後・・・』作ってください!

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こっちは父と娘のゾンビもの。

アサミヤカオリ

イラストレーター/造形作家/映画コラムニスト/漫画家

大阪出身。
2018年より徳島に拠点に移して活動中。

AWAP『映画コラム』/ BRUTUS『赤恥研究所』連載中
B級映画/ラジオ/観葉植物好き。最近は20時半就寝4時起きで制作がんばってます。メキシコ行きたい。

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