2017年製作。
「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018」でゆうばりファンタランド大賞受賞。
各国でも受賞している超話題作。
低予算でありながら、口コミで爆発的に上映館数が増え続けていて、チケットがソールドアウトする映画館も多数。
監督、俳優共に無名でありながら、熱意で作り上げられた冒頭の37分ワンカットのゾンビ作品は何度も観たくなる傑作!
『カメラを止めるな!』概要・あらすじ・キャスト
概要
監督&俳優養成スクール・ENBUゼミナールの《シネマプロジェクト》第7弾作品。2017年11月に先行公開。その後、国内及び海外の映画賞を数々受賞[4]し、2018年6月に日本国内で凱旋上映を行った。監督・上田慎一郎にとっては初の劇場長編作品。(wikipediaより)
あらすじ
ゾンビ映画の撮影中に本物のゾンビが襲来する。リアリティーにこだわる監督は撮影を続行しカメラを回し続ける。本気で逃げ惑う俳優陣とスタッフ、そして監督。ありがちな筋立て、いかにも低予算なインディーズ作品。こうして37分の短編映画ができあがった、のだが!?(wikipediaより)
スタッフ
監督・脚本:上田慎一郎
キャスト
●浜津隆之:日暮隆之
映像監督。
「速い」「安い」「質はそこそこ」の映像を作ることで知られ、「ゾンビチャンネル」開局記念としてゾンビドラマを撮ることを提案されるが・・・。
●真魚:日暮真央
日暮監督の娘。
父と同じく映像製作の世界に踏み込むも、熱意がありすぎて現場で浮いてばかり。
●しゅはまはるみ:日暮晴美
日暮監督の妻。
元々女優だったが、役に入り込んで周りが見えなくなりすぎるせいで仕事がなくなり引退。
●秋山ゆずき:松本逢花
ゾンビ映画内でヒロインを演じるアイドル。
アイドル然としたぎこちない演技が、徐々に追い込まれて真に迫った演技に。
●長尾和彰:神谷和明
売れっ子イケメン俳優。
頑固で融通が効かないタイプ。
『カメラを止めるな!』感想
こんちゃ!アサミヤです。
今回ご紹介するのは、口コミで限定地域から全国区にまで上映館数が広がった低予算作品『カメラを止めるな!』。
すでに2018年ベスト映画にあげる人もいるくらい、日本映画界に激震を与えている作品なんです。
なにがすごいって、まず、37分ワンカットでゾンビ映画を撮っていること。
そして、タイトルにもなっている「カメラを止められない」理由があり、その実情が見えたときに恐怖から爆笑へと転換する構成が素晴らしいこと。
個人的に邦画をあまり鑑賞する機会がなく、劇場で邦画を観たのも「シンゴジラ」以来なんですよね。
日本人特有のぎこちない演技や、日常ではありえない発声の仕方でしゃべるむずがゆさに堪えられないところがあって。
「カメラを止めるな!」にも、確かに存分すぎるくらい違和感があるんだけど、実はその違和感にも意味があるっていうプロットで、もはや邦画とか洋画とかの垣根を越えて、なんていうのかわからないけどとにかく「なんかの金字塔」みたいな域に達してしまっている。
ほんまにほんまに面白い作品、もうそれしか言いようがない。
全く情報を入れないで観てほしい作品なので、今回の記事は必ず鑑賞してから読んでね。
ワンカットでゾンビ映画を撮っちゃった。
先にもあげたけど、『カメラを止めるな!』のすごいところの一つ目は、37分ワンカットでゾンビ映画を作り上げているところ。
全てワンカットで作り上げている作品といえば、『ゼロ・グラビティ』(2013年)や『バードマン』(2014年)があるけど、それらはあくまで”ワンカットに見える“ように作っているだけなんですよ。
それはそれですごいのよ、アカデミー賞も獲ってるからね。
だけど、『カメラを止めるな!』は”ワンカットに見える“んではなく、本当にワンカットで撮っってしまっている。
例えば『おとなのけんか』(2011年)みたいな会話劇で展開するお話なら、ワンカットで作り上げることも容易だとは思うんです。
もちろん俳優さんたちのプレッシャーは半端ないと思うけど。
でも『カメラを止めるな!』は、場面の転換がすごく多くて、ゾンビから逃げるために走り回るシーンも多数。
それを全てカメラマンや技術さんたちが追いかけ回すっていう、体力的にも精神的にも大変な作業なんですよね。
パンフレットによると、6テイク目でやっと成功したらしいです。
たった6テイクでよくできたなとも思うし、6テイクも繰り返す体力がすごいなとも思う。
だって血糊とか使いまくるわけで、一度血を浴びたらなかなか次のテイクにいけないわけですよ。
だから1日にできるテイクの回数も限られてくる。
そんな追い込まれるような状況で完成させたワンカットは、奇跡のワンカットとも言えると思います。
3部構成+1
すごいのは、ワンカットだけでない。
そもそもワンカットで流れるゾンビ映画の内容は、「ゾンビ映画を作るために廃墟にやってきた俳優やスタッフたちが、本当のゾンビたちに襲われる」というありがちなもの。
だけど、そこかしこに変な間や絶妙に下手なセリフが散りばめられていて、正直フラストレーションが溜まるくらいに違和感が満載。
ここで観客が耐えられずに席を立ってしまうこともあるんだとか。
だけど、この37分が終わった時点で、『One cut of the dead』というエンドタイトルが流れ、そこから全く様相が変わっていく。
ここで第一部が終わり、第二部に突入し、”1ヶ月前“というテロップが挿入されます。
『One cut of the dead』の中にあった違和感の裏になにがあったのか。
その謎が第二部に入ってからわかるかと言うと、それはまだ先の話・・・。
この第二部では『One cut of the dead』が実は「ゾンビチャンネル」の開局記念として生中継で放送されたゾンビ映画、つまり「劇中劇」だったと判明します。
そして監督役で出ていた俳優さんが、『One cut of the dead』を撮った監督であり、メイク役で出ていた人がその奥さんであったり・・・と色々と裏側が見えてくるんですね。
どういう経緯で『One cut of the dead』が作られたのか、遡って筋が見えてくる。
例えば『One cut of the dead』の中でメイク役の人が合気道が趣味だからとゾンビ役の人にやってみせるシーンがあるんですけど、実際にメイク役を演じた奥さん自身が合気道の映像を観て実践しているシーンが第二部で挿入される。
なんとなく第一部の『One cut of the dead』と第二部の”現実世界“との繋がりが見えてくるけど、だからといって違和感が解消されるわけではない。
ただ、少しずつ繋がっていく快感が散りばめられている。
そして第三部。
『One cut of the dead』の撮影現場の裏側がここで明かされるわけです。
生中継という無謀な挑戦の中で、当然のごとく様々なトラブルに見舞われる。
例えばカメラマン役が酔っ払ってゲロ吐いたり、出演シーンになっても現れないから時間稼ぎに無駄話で時間を稼いだり。
ここで先ほどの合気道の話が繋がってくる。
時間を稼ぐために実際に趣味である合気道の話をして場を繋いでいたっていう裏側が見えて、「あぁ、そんなことが起こってたのね!」と腑に落ちると同時に、ドタバタ劇に爆笑の嵐。
素晴らしいのは伏線の回収の仕方ですよ。
第二部で少しずつ伏線の回収の為の伏線が張られてたわけです。
だからこそ伏線の回収が快感として押し寄せる。
『ユージュアル・サスペクツ』(1995年)や『メメント』(2000)みたいに、遡って真相が明かされる快感ってたまらない!
でも『カメラを止めるな!』はそこに爆笑が生まれるからこそ、今までにない傑作といえるわけです。
そして「3部構成+1」の1が何かというと、エンドロールで流れる実際に『One cut of the dead』を撮っているリアル映像。
監督が頭につけていたGo Proの映像なんだけど、カメラマンが俳優を追い、メイク係が血糊を抱えて走り、スタッフが首のない体(人形)を抱えて放り投げるタイミングを計り、全員がその一瞬一瞬に命をかけている姿が流れる。
そこには熱量しかなくて、クリエイターにとっては号泣必至だし、いち観客としても胸が熱くなって仕方ない。
頭の先からつま先まで、最後の最後まで完璧にエンタメな作品であり、熱量で泣かされる作品ってそうそうない。
低予算だからこそとか、無名の俳優や監督だからこそできたとか、そんなことでは片付けられないエネルギーに満ち満ちた、血の通いまくった作品なのです!
『安楽椅子探偵』を思い出した。
これは余談として聞いてください。
このメタを観て興奮する感じ、何か懐かしい感じがするなぁと思ってたんですよね。
なんだろなぁなんだろなぁと思って記憶をたどっていくと『安楽椅子探偵』に行き着いたんですよ。
絢辻行人と有栖川有栖が書き下ろした殺人事件を2週に渡って放送する、知る人ぞ知るリアル型謎解きシリーズ。
第1週目では殺人が行われるまでのストーリーをドラマ仕立てで見せる出題編が流れ、翌週にはその謎解きが行われる。
視聴者は出題編を見た時点で犯人と、なぜ犯行に及んだかの謎を解いて応募し、両方正解した人には賞金が出るという、ミステリー好きにはたまらない作品なのです。
これまで8シリーズが放送されていて、DVDも出てますよー!
前後半で視点が変わるプロットと、メタな視点で物語を見たときに腑に落ちる爽快感が『カメラを止めるな』と似ているなと思ったんですが、まぁ明らかに余談なんで気になる人は見てみてね!
まとめ
他に類を見ない傑作『カメラを止めるな!』。
同じくホラーモンスター(ゾンビ?)ものである『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(1996年)とかも全く前後半で物語が変わるという構成は同じだけど、快感を得るって意味ではまた違うし、ここまでホラーとコメディが癒合した作品は他にないんじゃないでしょうか。
これ観ないと2018年度の映画作品を語る資格はないんじゃないかと思うくらい、映画好きは観とかなきゃいけない作品だと思うんで、劇場にて観賞してください!お願い!
こちらもおすすめ!
★こっちは2時間越えのワンカット作品!
コメント