『ビデオドローム』概要・あらすじ
概要
デイヴィッド・クローネンバーグ監督の名を一躍有名にしたカルト作品。腹の中に拳銃を押し込んだり、モニターとデッキが呼応しあうかのように鼓動したりといった、彼独自の内臓感覚と、ビデオという1980年代ならではのテクノロジーを融合させた数々のグロテスクな幻想シーンが、いつしか観る者の精神まで惑わせていく。ストーリーを追うよりも、この目で体感していった方が得策といったジャンル映画の代表格。(Amazonより)
あらすじ
ポルノと暴力を売りにしているカナダのテレビ局社長(ジェームズ・ウッズ)の元に、ひょんなことから禁断のビデオテープが届けられる。それは、見続けると幻覚症状が起き、やがてはその人間の身体までをも変貌させてしまうという恐ろしいテープだった…。(Amazonより)
『ビデオドローム』感想
90点
こんちゃ!アサミヤです。
今回ご紹介するのはカルト的人気を誇る『ビデオドローム』です。
これが公開されたのは1983年なのですが、アサミヤが生まれたのも実は(?)83年。
同い年映画ということで気になってはいたんですがね、明らか病みそうな内容だなぁと中々手が伸びなかったんですよね。
今回、なぜか朝一にこれを観ようと思い立ちまして、爽やかな立春の陽気にそぐわない内容ながらも、見終わった後になんだか清々しい気持ちになりました。
なぜなら全く筋道がわからんから。
なのにとても面白かったと胸張って言えるから。
この相反する感情に挟まれるって中々ないことだと思うんですが、最近同じような情緒に浸った記憶が・・・。
そうだ、『スイス・アーミーマン』だ。
『スイス・アーミーマン』は端から物語に理解を求めるような作りではないし、映像の力やアート的要素が強くてジャンルもまた違うんだけど、作り手の熱意が伝わることで感動しちゃってそれだけで満足しちゃうっていう究極の”手作り映画”ってとこは同じなんじゃないかと。
もうね、SFXがすごいんですよ。
なんてったって監督はデヴィッド・クローネンバーグ。
あの頭爆発シーンで有名な同じくカルト映画『スキャナーズ』や男が徐々に蠅になる『ザ・フライ』を撮った監督です。
お腹がぱっくり開いてそこにビデオテープ入れるっつうトンデモ映像を特殊造形で作っちゃうんだもの。
何度も何度も自分のお腹に手を突っ込むもんだから、お前ドラえもんかと突っ込んだり突っ込まなかったり。
内容をご存じない方にはなんのこっちゃでしょうけど、簡単に説明すると、ビデオが普及し始めた時代、ケーブルTV会社の社長であるマックスが刺激的な映像を求めるあまりに謎の『ヴィデオドローム』にたどり着くわけです。
それを観た者はビデオの世界に入り込んで戻れないっていう、一種呪いのビデオですな。
それをマックスが観ちゃったものだから、幻覚を見始めて自分のお腹もぱっくり開いちゃうっていう、幻覚どころかもう体現しちゃってるからよくわからない世界観になっちゃってます。
この作品は難解と言われてるんですが、私もどこからどこまでがマックスの幻覚で現実なのかがわけわからなくなってきて頭ぐーるぐるでした。
なんでも監督も「よくわからん」と言ってらっしゃるらしいじゃないですか。
そりゃぁ受け手もわからんわ。
だから考えることを止めました。
そしたら純粋にエロ・グロ・SFXのB級色に彩られたエンタメ映画として観れるようになりましたよ。
なので深い解説なんてできませんが、軽く注目ポイント書いていきますね!
デボラ・ハリーの存在感
1970年代に活躍したロックバンド、ブロンディのボーカルがデボラ・ハリー。
いかつい骨格にブロンドヘア、濃いアイメイク、そして唇。
その唇には保険がかけられたと言われるほど、彼女のアイコンになっています。
一度見たら忘れられない存在感のある彼女は、ミュージシャンだけでなく女優としても数々の作品に出演していて、その内の一つがこの『ビデオドローム』。
主人公マックスと良いカンケイになるニッキーを演じていますが、「痛み」という刺激を求める過激な女性像は彼女にぴったり。
一つ気にかかったのは、おぱいを執拗に隠すのね。
スケスケの白いワンピースを素肌に着用している彼女の姿がよくファッション誌にも載るのですが、その勇気があるならもう隠すなよ、ってちょっと思うのね。
でもでも、ギリギリのラインでおぱいを隠す姿もまたエロス。
彼女の真のエロティシズムは”顔”だと思うのよね。
決して良いスタイルとは言えない彼女がとてつもないフェロモンを漂わせているのは、過剰なほどのメイクと妖艶な目付き。
だから彼女が画面に映っただけで、心惹かれるのですよ。
女性から見てもビンビン感じるものがあるはず。
耳に針を刺されながマックスと交わる姿はとても刺激的で異常性も感じるんだけど、
デボラが演じているからこそ信ぴょう性もあってよりエロが増している名シーンです。
変態じゃない男性、女性だって興奮するんじゃないかしら?
過剰なほどのエロス
デボラの存在そのものもエロスですが、この映画にはエロのメタファーが沢山。
その一つが先ほども書いたマックスのお腹がぱっくり開いて手を突っ込むっていう描写。
ただのグロ映像としても見れるんだけど、実は女性器と男性器という構図にも置き換えれるんですよ。
どうにしろエグいけどね。
執拗にその描写が繰り返されるのも、やはりその構図あってこそ。
そしてもう一つがテレビが脈打つシーン。
マックスが幻覚を見始めるとドクドクとテレビが脈打ち、マックスを誘うのよ。
そして誘われるがままテレビに頭を突っ込むマックス。
それもそうです、テレビとマックスが交わってるのですよ。
なんてナンセンスなエロ描写!
こんなエログロな描写、観たら吐いちゃう!とか思わないで。
観てると不思議と引き込まれて、少しどこか興奮している自分がいる。
たぶん、もうその時点でこの『ビデオドローム』に取り込まれてるのかもしれないけど。
きっと誰もが変態要素を持っていることをデヴィッド・クローネンバーグ監督はわかっていて、それをくすぐりにきてんじゃないかしら。
時代先取りしすぎな内容
主人公であるケーブル会社の社長マックスは刺激的な映像を求めるあまり『ヴィデオドローム』という謎のビデオに辿り着くわけですが、それを観たものは脳に腫瘍ができて幻覚を見始めるんですね。
そんな危険な『ヴィデオドローム』ですが、それを拡散させることで世界を浄化しようと目論む秘密組織のバリーという男が現れるのです。
浄化てなんやねんて思いますが、「この混沌とした世界を救うには一度破壊するしかない!」という間違った正義的な発想と考えればオケ?
バリーはどう見ても正義という名は似合いませんが。
このビデオというメディアを通じて世界を支配しマインドコントロールしようという発想は、当時よりも今のネット社会に通ずるものがあります。
今やテレビに釘付けになる時間より、パソコンに向かってる時間の方が長いって人も多いよね。
肉体は生きていても脳はネットに支配され依存している。
『ビデオドローム』はもちろん虚構の世界だけど、現実世界でも起こりうることが描写されているような気がしてなりません。
最後にマックスは頭に銃口を突きつけて「ヴィデオドロームに死を!新人間よ永遠なれ!」と叫びながら死んでいくのですが、それは支配された世界からの解放であり、現代を批判する言葉でもあると思います。
約30年前の言葉としてはとても哲学的で、また、早すぎる言葉だったんですね。
今だからこそ胸にずっしり来る言葉です。
まとめ
かなりのエロ・グロ描写により人に簡単におすすめできる作品ではありませんが、個人的にはものすごくお気に入りの作品です。
難解ではありますが、ど迫力の画力に「理解なんて求めてないよ!」と言われてるかのようで妙に心地よさを感じてしまうのです。
この作品を気になってはいても「グロそうだ」「難しそうだ」と敬遠している方がいらっしゃったら、勇気を出して観てほしいです。
あなたもヴィデオドロームの世界に迷い込みましょう。
後悔する間も無く、魅了されて抜け出せないこと間違い無し・・・・。
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