映画『High Life/ハイ・ライフ』概要・あらすじ・キャスト
概要
「パリ、18区、夜。」「ネネットとボニ」などで知られるフランスの巨匠クレール・ドニが描いたSFスリラー。出演は「トワイライト」シリーズ、「グッド・タイム」のロバート・パティンソン、「イングリッシュ・ペイシェント」「アクトレス 女たちの舞台」のジュリエット・ビノシュ、リメイク版「サスペリア」のミア・ゴス共演で描いた近未来。(映画comより)
あらすじ
太陽系を遥かに超えて宇宙へと突き進む宇宙船「7」には、モンテや幼なじみの少女ボイジーら9人の元死刑囚がクルーとして乗り込んでいた。彼らは極刑の免除と引き換えに、同乗する女性科学者ディブスが指揮する実験に参加することになったのだ。やがて、目標地であるブラックホールが少しずつ迫り……。(映画.comより)
キャスト
監督
クレード・ドニ
キャスト(役名/俳優名)
モンテ:ロバート・パティンソン
ディブス:ジュリエット・ビノシュ
ボイジー:ミア・ゴス
チャーニー:アンドレ・ベンジャミン
船長:ラース・アイディンガー
映画『High Life/ハイ・ライフ』感想
80点
2020年9月に公開されたクリストファー・ノーラン監督作品『TENET /テネット』をきっかけに、ロバート・パティンソンファンになりましたアサミヤです。
同じように、劇中でニール役だったロバート・パティンソンに心惹かれた方、多いんではないでしょうか?
特にラストのあの笑顔は犯罪級!
2回劇場に観に行きましたけど、あと10回以上はあの笑顔に会いに行きたいと切に思っております。
さて、そんなにわかロバート・パティンソンファンの私ですが、過去作品を漁るべく某レンタルショップに行って出演作を借りまくってまいりましたよ。
その中の1作品である2019年公開の『High Life/ハイ・ライフ』を今回はご紹介いたします。
死刑囚たちが乗り込む宇宙船を舞台に、ブラックホールからエネルギーを取り出すペンローズ過程
(ペンローズ過程って何やねんて思われるかもしれませんが、あまりそこは焦点でないらしく詳しい説明はありませんので、気になる方はWikipediaをご覧ください)を目的とした旅の末路、残された父と娘の行末を描いたエロティックSF作品なのですが、メタファーたっぷりの重めな展開とロバート・パティンソンの育児姿に悶えまくって想像以上にお腹いっぱいになりましたよ。
※あっ、ちなみに今回ネタバレありで書いておりますので、未見の方はご注意ください。
まずは内容云々カンヌンより、ロバート・パティンソンについて言わせてくださいお願いします。
冒頭からいきなり赤子と触れあうロバート・パティンソンを拝むことができるのですが、まるで壊れ物に触れるような危うさやがあって新米パパって感じで良い!んです。
特にまだ独り立ちできない赤ちゃんに優しく「アップ、アップ」と囁くロバート・パティンソンに悶えまくりな前半30分。
これでもうごちそうさまで良いんでないかい?なんて思ったりもしましたが、ちゃんと最後まで観てよかった。
抑えた演技の中に見える繊細な表情の変化、船員をレイプしようとした男にキレて殴りまくる危うい一面、成長した娘と向き合う父の眼差し・・・『TENET /テネット』で演じたニールとは全く違った人物象がめちゃめちゃハマっていて惚れ直しました。
特に短髪!
坊主に近い短髪姿も良いじゃないの!
頭の形がきれいなのねー。
さ・い・こ・うです。
ロバート・パティンソンは言わずもがなで最高なのですが、この作品をより狂気なものにし、他の出演者を喰ってしまうほどの存在感を見せているのがジュリエット・ビノシュ。
50代とは思えないあどけなさと凛とした美しさを兼ね備えた名女優さんですが、今作ではまるで色情魔の女・・・”魔女“のような女性を演じていて、こちらもまた女性としても惚れ直してしまいましたよ。
彼女が演じる女医は宇宙での人工授精に挑んでいるのですが、その執着心が異常なほどで、禁欲生活を貫くモンテの寝込みを襲って精子を搾取する姿は文字通りの魔女。
その精子を使って勝手に他の船員に受精させて子供を宿す・・・っていうやばいことしちゃう人なんですよ。
勝手にしたことだからまさか船内で生まれた赤ちゃんが自分の子だなんてモンテは思ってもみないし、勝手に宿されたボイジー(ミア・ゴス)は狂ってブラックホールに突っ込んじゃうし(中々衝撃的な映像)、女医のせいでもうめっちゃめちゃ。
でもジュリエット・ビノシュの憑依したような演技がゾクゾクもので、こんなことしちゃう人なんだろうなーってのが納得できちゃうってのもまたすごい。
特に船内に設置された自慰マシーン(!?)に跨がって快楽を貪る彼女の背中の演技よ!
浮き上がる筋肉や血管から迸る狂気に怖すぎて笑っちゃいましたよ。
あと、たぶんエクステかなんかだと思うけど、パサついた髪の毛がイヤーな長さなんですよ。
そんなに傷んでんだったら切れば良いじゃんって思うような艶のなさ、でもそれに抗うようにオイルを執拗に付ける仕草、長い髪の毛は女性の象徴とでも言うようにダクトからの風を浴びてなびかせる妖艶な姿・・・・
どれも不快なんですよ!
今作は一応エロティックなSFに仕上がってるんですが、全てのエロスが彼女に起因していて、その彼女が醸し出すエロスが不快なものだから決して興奮するエロスには仕上がっていないのですよ(ゲンナリ)。
普段のジュリエット・ビノシュならもっと美しいものに仕上がるはずなのに、よくぞこうも嫌なー感じに仕上げたよね、監督。
ちなみに監督は女性監督なんで、だからこそここまで不快なものにできたのかもしれませんね。
今作が不穏で不快だと感じる所以は、大きなテーマにも起因しているかもしれません。
そのテーマっていうのが『タブー』。
冒頭でモンテが赤ちゃんに「自分のおしっこやウンチを口にするのはタブーやで。タブゥータブゥー」と繰り返し言うシーンが印象的なんですが、宇宙船の中ではそれが当たり前なことなんですよね。
ウンチやおしっこを濾過して水にすることでまた体内に循環していく、地上ではありえないことでも船内では生命維持のように行われていて決してタブーではない。
つまり、時と場所が違えばタブーと思われるものも絶対的なものとは言えない。
ってことです。
そこでさらに突っ込んで、今作でいうタブーが何かと言うと・・・・(ここ大事なネタバレです)、
近親相姦
です。
モンテと残された娘、この二人で何年も何年も船内で生きながらえているようですが、さて、この後どうなるか?
ブラックホールを見つけた娘は、あそこには希望があるように思うと言い、二人で船を残し突入していきます。
そのブラックホールは通常イメージするような真っ暗な世界ではなく、まるで『ナウシカ』の金色の絨毯のように光り輝き二人を包みます。
それは新しい命の誕生をイメージさせ、つまりは二人によって子孫を反映していくことが暗示されているのです。
もしも地球上でも同じような状況が起こったら?
人々がたくさん存在する今はタブーと考えるかもしれませんが、その時が来たらタブーなんて言ってられない。
そんな問題提起がなされた壮大な映画なのでした。
個人的にもう一つ気になったのは、船の形が正方形なんですよね。
普通宇宙船って抵抗を少しでもなくすように角は丸いものが多いと思うんですが、『High Life/ハイ・ライフ』の船は全くの四角形でどう見ても宇宙には適さないような気がするなーと思いまして。
自分なりに考えた結果、
四角形=箱=ノアの方舟
ってことなのかなーと。
死刑囚でありながら、最終的に禁欲を貫いたモンテと無垢な娘が方舟に乗ることを許されたのではないでしょうか。
知らんけど。
ロバート・パティンソン目当てで観た作品でしたが、意外にも(良い意味でも悪い意味でも)心に残るジトッと重めのSFで、個人的に傑作の太鼓判を押したいと思っております。
ただ精子や母乳といった液体の描写や女医の醸し出すエロスが不快で人を選ぶ作品かもしれないということを添えておきます。
命の重みを感じたい!感動するSFが観たい!何よりロバート・パティンソンが好き!そんな方はぜひご覧くださいませ♪
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●孤独な宇宙で思い出すのはこちら。
『High Life/ハイ・ライフ』とは違った驚きと味わい深さがあります。
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