大人のお伽話。映画『ザ・クリエイター/創造者』レビューとイラスト

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概要・あらすじ・キャスト

概要

「ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー」のギャレス・エドワーズが監督・脚本を手がけた近未来SFアクション。
「TENET テネット」のジョン・デビッド・ワシントンが主人公ジョシュアを演じ、「インセプション」の渡辺謙、「エターナルズ」のジェンマ・チャン、「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」のアリソン・ジャネイが共演。(映画.comより)

あらすじ

2075年、人間を守るために開発されたはずのAIが、ロサンゼルスで核爆発を引き起こした。人類とAIの存亡をかけた戦争が激化する中、元特殊部隊のジョシュアは、人類を滅亡させる兵器を創り出した「クリエイター」の潜伏先を突き止め、暗殺に向かう。しかしそこにいたのは、超進化型AIの幼い少女アルフィーだった。ジョシュアはある理由から、暗殺対象であるはずのアルフィーを守り抜くことを決意するが……。(映画.comより)

キャスト

監督:ギャレス・エドワース

出演:ジョン・デビッド・ワシントン
   ジェンマ・チェン
   渡辺謙

感想

予告で観て以来、絶対劇場で観ると誓っていた作品。

結果、劇場で観てよかった。いや、劇場で観るべき作品だと思った。

鑑賞時には知らなかったことなのだけど、完璧にも思えるCG、実は通常のハリウッド作品でかかる費用の半分ほどで作っているんだって。

それも普通なら大層なセットを組んでグリーンバックで撮影してると思うじゃない?

今作はなんとセットを組まずアメリカや日本、インドネシアなどの現地で撮影した素材にCGを合成するという、インディペンデントな作り方をしているそうな。

だから身体中に(個人的には見た目に気持ちの悪い)点々を貼りまくってCGの基礎を作るモーションキャプチャも使ってないんだって。

それでこのクオリティかよ!と、鑑賞後に知って驚いた。鑑賞前にそれを知っておきたかった、と後悔。

だからスクリーンで観る機会がある人は、その凄さにまずは注目してほしい。

肝心の物語なんだけど、正直エモーショナルに作られすぎてて最初は少し違和感があった。

死んだはずの妻を探す主人公ジョシュアと、彼と行動を共にする見た目は少女の兵器アルフィー。

彼らの関係性にフィーチャーされたストーリーはまさしく「愛」がテーマで、人類とAIという生命の垣根を超えた家族が形成される瞬間が心揺さぶる。

・・・はずなんだけど、正直鑑賞直後は素直に感動できなかった。

それはたぶん、たくさんの抜け(ツッコミどころ)があるからだ。

人類にとって脅威となる兵器を見つけるために潜入捜査をしていたジョシュアが、情報源として近づいた女性と結婚し子供まで作ってしまっている点、そこまで親密になりながら女性のある秘密に気づけなかったジョシュアのおバカさ。

それ以外にもストーリー展開にご都合主義な点は多々あって、そこにいちいち引っかかってしまったからだと思う。

でも、一夜経って気づいたんだけど、これはお伽話なんだ。

眠れる森の美女が王子のキスで目覚めたり、桃から生まれた男の子が動物を引き連れて鬼を対峙したり。

そんなバカな、と大人は一笑するであろう話も、子供はなんの疑問も抱かず引き込まれる。

今作も大人にとってのお伽話。

そう思ったのには大きな理由がある。

それは善と悪がはっきりしている点だ。

AIを人類の脅威と見做してAI狩りをするアメリカと、AIと共存しAIが進化すらしているアジア。

両国は対立し戦争を始めるのだけれど、戦争をけしかけたのはアメリカでアジアはそれに対抗しているだけ。

驚くほど圧倒的にアメリカが悪く描かれている。

そこまでアメリカを嫌わなくても、とも思うし、アジアを美しく描きすぎている気もする。

でもそれがお伽話たる所以だ。

グローバル化し世界が融合することで薄れゆくアジア文化への理想や移民問題、紛争への監督の思いが極端なほど見えるからこそ、これはお伽話として見る方がいい。

現実でも人間同士の戦争が起こり、そしてチャットGPTなどAIの脅威も顕著となった今だからこそ、『シンデレラ』のような美しいお話として今作を鑑賞してほしい。

時間が経てば経つほど、もう一度観たいと思う。

好きなお伽話を何度も親に読んでもらように、またこの話の中に入っていきたい。

ちなみに、今作を素晴らしいものにしているのはAIであるアルフィーを演じたアルフィー – マデリン・ユナ・ヴォイルズの新人子役とは思えない演技。

AIに命を吹き込む表情豊かな演技で、最後のシーンは感涙もの。

そしてAIをはじめとするビジュアルの良さも必見。

前から見ると人間なんだけど、後頭部の半分が機械で背景が見えるっていうビジュアルが斬新だし、ガジェット好きも観て損はなし。

ストーリー展開に真新しさは正直ないんだけど、前述したようにファンタジーとして見れば完璧で、完全オリジナルのSF作品としてはもっともっと評価されていいはず。

たまに画面に映り込む変なカタカナ語も『ブレードランナー』的。かわいくて好き。

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洋画で出てくると違和感のある日本語。特にホークアイがしゃべってる日本語、聞き取れんかったなぁ。

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