低予算ながら、90分間呼吸もできないほどの緊張感に包まれる体験は新たなる映画体験とSNSで話題になり、累計興行収入が『ドント・ブリーズ』や『ゲット・アウト』『グレイテスト・ショーマン』を超えるほどの大ヒットに。
監督は主演も務めるジョン・クラシンスキー、妻役は実生活でも夫婦である名優エミリー・ブラントが演じている。
製作には『トランスフォーマー』シリーズのマイケル・ベイの名も連なる。
『クワイエット・プレイス』 概要・あらすじ・キャスト
概要
あらすじ
音に反応し人間を襲う“何か”によって荒廃した世界で、生き残った1組の家族がいた。
その“何か”は、呼吸の音さえ逃さない。誰かが一瞬でも音を立てると、即死する。
手話を使い、裸足で歩き、道には砂を敷き詰め、静寂と共に暮らすエヴリン&リーの夫婦と子供たちだが、
なんとエヴリンは出産を目前に控えているのであった。
果たして彼らは、無事最後まで沈黙を貫けるのか――?(公式サイトより)
スタッフ
監督:ジョン・クラシンスキー
製作:マイケル・ベイ、アンドリュー・フォーム、ブラッド・フラー
キャスト
●ジョン・クラシンスキー:リー
アボット家の父親。
子供思いの優しい父だが、娘のリーガンとはあることをきっかけに関係が悪化している。
●エミリー・ブラント:エヴリン
リーの妻。
優しくも気高い女性。
妊娠中。
●ミリセント・シモンズ:リーガン・アボット
長女。
聴覚障害のある役柄だが、ミリセント・シモンズ自身にも聴覚障害があり、手話で意思疎通をする女優さん。
自分のせいで末っ子を死なせたと自分を責め続けている。
●ノア・ジョプ:マーカス
次男。
めっちゃ臆病者。
『クワイエット・プレイス』感想
79点
こんちゃ!アサミヤです。
今回ご紹介するのは、予告編を観てとーっても気になっていた『クワイエット・プレイス』。
「音を立てたら即死。」というヨダレものの宣伝文句に、B級好きな私は当然飛びつきました。
ところが、出演者を見たらB級どころか一級品。
だって『オール・ユー・ニード・イズ・キル 』(’15)のエミリー・ブラントが出てるんですよ!
ゴールデングローブ賞を獲得した経験を持つ女優エミリー・ブラントは、優れた表現で多様な演技を披露し、現在最もオファーが殺到する女優のひとりである。(公式サイト)
って書かれるくらいの超実力派。
おっと、B級なんてくくりで考えて悪かったな・・・と思って見たら・・・
超絶B級な内容でした(笑)
ツッコミどころ満載だし、鑑賞後はため息つくほど疲れるし・・・。
集中力を保つにはジャストな90分というタイトな上映時間にも関わらず、映画自体が本当にクワイエットなプレイスで展開が進むもんだから、ジュースをドリンクしたりポップコーンをイートする音さえ響き渡る館内。
その日に限って新しく買ったシャカシャカ素材のミリタリージャケット(それもロングだから擦れる面積多め)を着てきたもんだから、姿勢を正す度に「シャカッシャカシャカッ」って音が鳴る。
ホラーな内容よりも、静寂に包まれる館内でいかに音を立てず鑑賞するかという緊張感に包まれた、なんとも肩の凝る90分でした。
賛否両論の本作ですが、発達した聴覚のみを頼りに襲いかかるクリーチャーの造形がとても素敵だったし、ラストのワンシーンで急にB級からC級にランクアップ(ダウン?)するので、私はとっても好みです!
詳しくは後ほど!
ちなみに、なんとなくタイトルの雰囲気が似ている「サイレント・ワールド2013 」(13)っていう映画がありますが、そちらはクソです。
「時間の無駄シリーズ」と銘打って色々紹介していますが、あくまでも斜めの視点から面白がって鑑賞できるレベルであり、この「サイレント・ワールド」はそんな斜めの視点ではなく、真正面から「時間の無駄」ですので、お気をつけて。
惜しい!というか残念映画!!
登場人物は、荒廃した世界で生き残った、たった1組の家族というミニマル構成。
家族を守ろうと必死な父と優しく子供たちを包み込む母、聴覚障害の長女に小心者の弟、そしてまだ幼く無邪気な末っ子。
予告にもある通り、末っ子がおもちゃの飛行機の電子音を出したが為に何かに襲われるっていうシーンがオープニングにあるんですが、なんとそのまま末っ子、かまきりのようなクリーチャーにサクッと殺されるという、のっけからの衝撃的展開。
「こりゃ期待できるぞーワクワク」と期待値が上がったのですが、その後はワクワクが萎むばかり。
末っ子を死なせたのはおもちゃを渡した自分のせいだと自らを攻め続ける長女と、彼女に優しく接することができず、聴覚障害をカバーする為の補聴器を作り続けることでしか愛情を示せない父親とのすれ違い、これから生まれくる赤ちゃんを守り抜く為に強くあろうとする母親、臆病者の息子の成長・・・これらのストーリーテリングを交えながら、ちょっとした物音にも襲いくるクリーチャー(地球外生命体)との戦いを描いた本作。
こう書くと内容がギュッと詰まった感動のパニック映画っぽいですが、ところどころにツッコミポイントがあり、それにいちいちひっかかってしまって、いまいち集中できないという残念な作品なんです。
その中でもピカッと光っているのが、前述した名優エミリー・ブラント。
産気づいた上に釘が足にぶっ刺さるという痛みに襲われまくる中、バスタブに身を潜めるエミリー・ブラントの悶絶の演技。
クランクイン2日目に撮影されて、なんと1テイクでOKが出たという、こっちまで苦しくなるほどの見事な演技は見ものです。
強く美しい母という理想的な母親像を演じていますが、それだけではございません。
最後の最後で覚醒するんですよ!
詳しくは最後の章にて・・・。
音を立てたら即死・・・って絶対無理!
「音を立てたら、即死」
それが『クワイエット・プレイス』の謳い文句ですが、私なら速攻で物を落として死ぬ自身があります。
告白すると学生時代、某CD屋でアルバイトしてたときに、あまりにも会計中に小銭を落とすことから店長に「邪手リカ(じゃてりか)」と呼ばれてました。
「邪悪」な「手」に「リカ」。
私の名前「かおり」なんで、なぜ「リカ」と付けたのか意味不明ですし、今考えたらパワハラで訴えるぞレベルなんですけど、いじられるの好き人間だからといってヘラヘラして甘んじて受け入れた当時の自らの精神が謎。
とはいえ、言い得て妙なあだ名であり、いまだに物を落とすたびにその名前が頭に浮かぶので、まるで「親にキラキラネームを付けられて腹立たしいけど、その響きに甘美なものを感じずにはいられない」的な複雑な気持ちです。
余談は置いといて、以上の理由で私は速攻で殺されると思います。
でも皆様よく考えみてください。
物音を立てずに生活することがどれだけ大変か。
シャワーだって浴びれないし、トイレを流すこともできないし、お腹壊した時にブリブリできないし、くしゃみだって盛大にできない(わたしくしゃみが騒音レベルなので、これも死亡原因の一つ)。
(今思ったけど、くしゃみとか咳しないようにマスクして生活した方が良いよね、絶対。)
『クワイエット・プレイス』を観て、改めて音と共に生活してるんだなと思い知らされました。
今すぐ夜中に「ぱらりらぱらりら」鳴らしてバイク走らせてる暴走族の方に観て欲しいと、切実に思っています。
「そんな音鳴らしてる奴ら、食べられちゃえばいいんだ(哀川頂風:サンドウィッチマン伊達ちゃん)」(心の声)
ツッコミどころ
こういうのって、粋じゃないと思うんですよ、本当は。
でも、もういろんなことが気になって気になって「いや、なんでやねん」と頭の中で突っ込み出すと止まらない!
「整合性」「科学的にどうのこうの」とかばっかりいう映画評論家ってあんま好きじゃないですけど、でも確かにたくさん知識のある人ほどいろんなことが気になるんだろうなぁと、今回は思い知らされました。
賢い人はこんなもんじゃないんだろうなぁ、つっこみどころ・・・
ここからは最近よくテレビに出ている芸人さん、東京ホテイソンさんのやり口をお借りしたいと思います。
たくさんの監視カメラ
父親がなんやかんや作業する地下室があるんですが、そこには数十の監視カメラの映像がモニターに映し出されてさながらビルの警備員室のよう。
なるほど、これでクリーチャーが近づいていたらわかるわけね・・・・。
いーーーや、潤沢な電気!!!!
ねぇ!電気はどこから?発電所動いてんの!?世界壊滅してるんだよね!?
発電機?発電機ってすっごい音するよねぇ!?だぁめだよねぇえええ!?
じゃあバッテリー!?あんなにたくさんのモニターを?直流電源で!?何年も!?
また彼らの家の周りにはものすごい数の電球がぶら下がっていて、すっごく幻想的。(しかも色変更機能つき)
LED電球かな?LEDでもあの数はなかなかの電力消費量ですよ。
静かに歩くための砂(灰?)
近くの街にある薬局に行く道は、彼ら自身が撒いたのでしょう、真っ白な砂(もしくは灰?)が一直線に敷かれています。一家はそこを裸足で(劇中ずっと裸足)そろそろと歩くのです
なるほど、確かに静かに歩けそう・・・・。
いーーーや、ダンプカー数台分の量!!!!
どんだけあんねんその白い砂!!
何キロあんねん街まで!!ってかもう街に住め!!なんでそんな辺鄙なとこに住む!?
途中、父親が砂を道路に敷き詰めるシーンがあるのですが、でっかいリュックから砂を出して作れた道はたぶん1m足らず。
作業中に絶対音出るリスク!!!!
轟音を立てる滝
劇中、父親が気弱な息子を連れて滝のある川にいき、仕掛けておいた罠から魚をとるシーンがあります。
そこで父親が「ここならどんなに声を出しても大丈夫だ」とかいって「フォーーーーウ!!!」とか叫ぶんですよ。それで不安だった息子も倣って「フォーーーーウ!!!」ですよ。
なるほど、確かに自然に音が出てる場所もあるよね。そこなら安心だ・・・・。
いーーーや、絶対そこに住むべき!!!!
めっちゃええやんけそこ!!ずっと音出てるんでしょ?普通に喋れてるし!!
そこ住んだらいいじゃない!?そこ住んだらいいじゃない!?
なんで?なんでいちいちすげー危なそうな木造家屋に帰るの?
とんでもない量の砂をまく手間があったら家作ればいいじゃん!?
叫んでも大丈夫なんでしょ!?トンカンやっても大丈夫なんじゃない!?
妊娠
いーーーや、子作りする勇気!!!!
いきなり突っ込んでしまいましたが、この夫婦、「この世界」になる前に妊娠してしまっていたならまだしも、この世界になってしばらく経ってから妊娠しています。
まぁそれは、末っ子の男の子を失ってしまったこともあって、ストーリー上なくはないと思うんです。
音を出しても大丈夫な地下室
危機一髪の出産後、夫婦は赤ちゃんを抱いて、命からがらとある地下室に逃げ込みます。
そこで夫の(普通に声を出しての)一言。
「ここなら音は漏れない」
いーーーや、絶対そこに住むべき!!!!(2回目
なぜ彼らは普通の、地上に丸出しの木造家屋で怯えながら暮らすのか、理解できません。
地下で日光が当たらない生活もストレスがたまるでしょうが、音を出せないストレスが上回るでしょ!?
別にあんだけ外うろついて大丈夫なら昼間ちょこっと外にでる生活にすればいいじゃん。
あ・・・・ひょっとして・・・・ヤリ部屋・・・・
ははーーーーん・・・・
この夫婦・・・やりよんな・・・・
入ってはいけない地下室
この映画、「位置関係」や「空間」「距離」みたいなものがわかりにくいんです。
クリーチャーが迫っている部屋の広さや状況も、よくわからないから危機感が伝わりにくい。
外で別行動している登場人物がいったいどのくらいの距離にいるのかもわかりません。遠くに見えるレベルなのか、隣の納屋にいるレベルなのかわかりません。
劇中、聴覚障がいのある長女がどこかの地下室に興味を持ち、入ってみようかな?としたところで父親に強く止められるというシーンがありました。
「ここには入ってはいけない!」「なんで?」「どうしてもだ!!」とか言って。
ん?ここどこの家?と観客は思うんです。位置関係がわからないから。
で、結局ラストで、その部屋は前述の監視カメラの映像が映るモニターがあったり、父親が長女の補聴器を作ったりしている作業部屋だったことがわかるんですが・・・・
いーーーや、なんで!!??(シンプル)
てか、え、あれ自分ちの地下室やったん!?どっかの廃屋とかじゃなくて?
これマジでわからんかったんですけど、誰か教えてもらえます?
なんであそこに入ってはいけなかったのかが全然わからなかったんです。
それでも私は好き!
散々突っ込んでいますが(まだまだあるんですがこれくらいにしておきます)、結論、私は好きです。
なぜならラストシーンの母親の姿がものすごくツボだから。
母親が覚醒すると前述しましたが、別にアベンジャーズばりに何か超人的な能力が覚醒するわけではありません。
娘が付けていた補聴器の周波数が耳の良いクリーチャーにとって弱点だったとわかり、「こりゃ我々の勝利やで!」と銃を構えた母親のドヤ顔が、まるでランボー。
今まで優しく美しい存在だった母が、急にランボー並みにドヤ顔で銃を構えるんですよ?
覚醒以外の何物でもなくね?
しかし、これから人間によるクリーチャー討伐が始まるでー!と思いきや、暗転、エンドロール。
え!??これからやん!ともどかしくなりながらも、エミリー・ブラントのドヤ顔が頭から離れません。
例えば『サプライズ』の女性ヒロインが突如殺人鬼を襲い出す転換期みたいに、「キタキター!!!」ってなる瞬間がB級の醍醐味だったりするわけです。
それが『クワイエット・プレイス』だと、転換期に入った瞬間、ぶつ切りで終わってしまう。
娘が補聴器をドヤ顔でマイクに押し付けてスピーカーから大音量で流し、母親は迫り来るクリーチャーを銃で殺しまくる、という『プラネット・テラー』ばりのC級展開がこれから巻き起こる!かと思いきや、突然のエンドロール。
「こっからがいいとこやのにーーー!」ともどかしい気持ちになりつつ、そのもどかしさが余韻に変わり、「ちくしょう、この映画、粗が多いけど好きかも・・・」と思わせてしまう秀逸なラストシーンだと思います。
これ完璧余談ですが、最近観たモックバスター製作工場アサイラム社が製作した『新・宇宙戦争 』(09)という超絶B級作品のラストを少し思い出しました。
『クワイエット・プレイス』並みにぶつ切りで終わるんだけど、ただただ絶望の展開。
タイトルからもわかる通り、ベースはトム・クルーズが主演の名作『宇宙戦争』なんですけど、ラストはまるで『猿の惑星』。
もちろん『猿の惑星』のラストも当時は衝撃的であり、今でも映画史に名を残すほどの作品ですが、そこはアサイラム社制作、ただただ「投げっぱなしで終らしてみたよ」という感が否めない。
ラストの「ぶつ切り」という意味で思い出しただけで面白さは1000分の1レベルなので、観ないで結構です(じゃぁ書くなよ)。
それと比べても(比べるだけ失礼だけど)、『クワイエット・プレイス』のぶつ切りは最高でした。
私の好きな日本画家の松井冬子さんも昔「美術手帖」でこう言ってました。
「クライマックスを描くのではなく、その一歩手前を描く方が劇的だとかうんぬんかんぬん(うろ覚え)」
まぁ、そういうことです。
まとめ
面白いとか面白くないとか、この映画は結局どうでもいいんです!
散々5000文字くらい感想書いといてなんやねんそれ、とお思いかもしれませんが、『クワイエット・プレイス』は体験する映画なんです。
『ダンケルク』がまさしく体験型戦争映画でしたが、『クワイエット・プレイス』は体験型ホラー映画という新たなるジャンルを築き上げている、と言っても過言ではないでしょう。
お家では決して体験できない緊張が劇場で味わえます!急げ!
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