ナイト・オブ・ザ・リビングデッドの主人公が黒人男性だった理由

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アメリカ映画における人種問題とは

こんちゃ!アサミヤです。

現代アメリカ映画でよく問題になるのが「ホワイトウォッシュ」ですよね。

ホワイトウォッシュ
原作では白人ではないキャラクターを映画では白人が演じること

wikipedia:映画におけるホワイトウォッシング

 

映画評論家の町山智浩さんもこのホワイトウォッシュ問題についてよく言及されています

 

町山智浩のアメリカの“いま”を知るTV 第8弾
BS朝日「町山智浩のアメリカの〝いま″を知るTV」の番組サイト。政治や社会情勢とショウビズ界の密接な関係を、辛口だけど解りやすい「町山節」炸裂でお届けします!

 

ハリウッド等アメリカや白人社会の映画では近年まで、ホワイトウォッシュどころかそもそも黒人やアジア人・アラブ人等の「白人以外」の人種が出演しないことは当たり前でした。

しかしジョージ・A・ロメロ監督は「ロメロ三部作」の全てに主人公クラスで黒人男性を起用しています。

特に1968年に公開されたナイトオブザリビングデッドでは主人公は完全に「ベン」という黒人男性一人で、デュアン・ジョーンズという方が演じています。

(他の作品では複数の主人公がいる中の一人として黒人俳優が出演しています)

デュアン・ジョーンズ(wikipediaより)

 

1968年といえば、アメリカにおいては「動乱の年」と呼ばれ、黒人社会にとっても大きな出来事があった年です。

キング牧師暗殺事件

キング牧師(wikipediaより)

公民権運動・黒人解放運動の活動家として日本でも有名な人物で、1964年にはノーベル平和賞を受賞しています。

つまり、人種差別撤廃に向けて機運が高まっていたとはいえ、裏を返せばまだまだ当たり前に黒人差別があった時代です。

ロメロはなぜ黒人男性を起用したのか

そんな年に、ロメロ監督は黒人男性であるデュアンを冷静沈着で勇敢な主人公として据えた、自身の初めての劇場用映画を製作します。

それがこの「ナイトオブザリビングデッド」です。

wikipediaより

 

当然当時の世間や後年の批評家は言ったそうです。

「彼は人種差別に反対しているのだろう」

あるいは嫌な見方をする人はこうも。

「わざわざ黒人を使うなんて、逆にわざとらしい配慮なんじゃないの」(これは現在で言うところの「ブラック・ウォッシュ」批判ともつながるかもしれませんね)

 

さぁそれでは実際にはどうなんでしょうか?

ゾンビに関する著書をたくさん出版されている伊東美和さんが綿密な取材をなさった結果、ロメロが主人公を黒人青年デュアンにした理由がわかっています。

それは・・・

 

 

 

 

いい俳優だったから!!

 

 

 

 

詳しくはこちらの書籍にて

 

伊東さん(あるいは本作の脚本を担当したジョン・ルッソ)曰く、ロメロはシンプルにオーディションの結果、デュアンを主人公に選んでいます。

というか、この映画を現代の目から(当時の社会を取り巻くややこしい目線から離れて)見れば明らかなんです。

長身で生気にあふれ、冷静であり時に激昂するベンの姿はまさに、クールで無骨な雰囲気を持った「個人としての」デュアン・ジョーンズが演じてこそなんです。

 

しかし、もう一つ、公開後にごちゃごちゃと邪推がなされたポイントがあります。

それは本作の衝撃のラストシーン。

ゾンビ狩りをする白人の集団に、ゾンビと間違われた主人公ベンがあっけなく射殺されてしまうという皮肉な展開です。

これも、いろんなことが言われてきました。

「黒人差別に対する皮肉なんだろう」とか「ほら白人は何もわかっていないと言いたいんだろう」とかね。

しかしこれも今作の脚本家ジョン・ルッソによって簡単に片付けられてしまいました。

 

 

「観客を驚かせたかっただけだ」

「イエイ」な感じのジョン・ルッソさん

 

 

シ・シンプルゥ〜〜〜〜!!!

 

 

ロメロの信念とは

さて、ここからは私見ですが、ジョージ・A・ロメロや脚本家のジョン・ルッソ、特殊メイクを担当したトム・サヴィーニが目指していたのは実にシンプルな「ホラーエンターテインメント」なのではないでしょうか。

ロメロ自身、インタビュー等で「チケット代を出す価値のあるコンテンツをつくる」ということを何度も語っています。

余計な意味づけなんてなく、またとんでもない低予算の中で、ただただ撮影の仕方や演技、特殊メイクにこだわり抜いたからこその強度がこの映画にはあると思うのです。

だからこそそのような「邪推」をされてしまうほどの影響力を生み出せたのでしょう。

いい映画じゃなかったら、そもそもそんな推論すらでてこないですもんね。

 

他の作品を見ても、ジョージ・A・ロメロ監督のエンターテインメントにかける思いやサービス精神、またはちょっとしたいたずら心をひしひしと感じます。

 

人種差別・黒人差別問題は様々な作品でも描かれてきました。

最近では、これまでのステレオタイプな「人種差別反対!」的なスタンスではなく、現代におけるもっと内在的な黒人差別のあり方を前提とした衝撃的なストーリー展開を見せてくれる作品が作られています。これは黒人の監督だからこそ、なのでしょうね。

ゲットアウト(2017年公開)

https://thegeekstandard.com/2017/11/20/post-1942/

人種問題に日常的に触れる機会の少ない私たちも、しっかりと考えていかなければならないですよね。特に、映画を愛する者としては。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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