『オリエント急行殺人事件』概要・あらすじ
概要
世界的に有名なミステリー小説の傑作を映画化! 容疑者は乗客全員。列車内密室殺人事件の真相は!?
原作者はギネスも認定した史上最高の“ミステリーの女王”アガサ・クリスティ。彼女の名作を『シンデレラ』を大ヒットさせた名匠にして名優ケネス・ブラナーが映画化。(Amazonより)
あらすじ
エルサレムで事件を解決した名探偵のエルキュール・ポアロは、イギリスでの事件解決を依頼され、急遽、豪華寝台列車オリエント急行に乗車する。アメリカ人富豪ラチェットから、脅迫を受けているからと身辺警護を頼まれるが、ポアロはあっさりと断る。その夜、雪崩で脱線し立ち往生してしまった車内でラチェットが何者かに殺害される。鉄道会社から捜査を頼まれたポアロは、乗客たち一人一人に聞き込みを開始するが、乗客全員には完璧なアリバイがあることが判明するのだった……。(Amazonより)
『オリエント急行殺人事件』感想
85点
『オリエント急行殺人事件』
こんちゃ!アサミヤです。
2018年初めての映画レビューは『オリエント急行殺人事件』。
『ハムレット』『シンデレラ』『マイティ・ソー』などを監督したケネス・ブラナーが主演兼監督を務めた今作。
彼は『ダンケルク』でもボルトン海軍中佐を演じていましたね。
1934年のアガサ・クリスティによる推理小説が原作ですが、何度も映像化されてきた作品なのでご存知の方も多いですよね。
小説としても超有名の為、”今さら?”感も拭えなかったのですが、字多丸師匠が新年一発目に解説するということだったので観てきましたよ。
感想を言いますと、面白かった!
今さらとか言いましたけど、私原作を読んだこともなければ映像作品を見たこともない超素人なので、純粋に楽しめたのです。
今作は原作を知らない人ほど楽しいという前評判を聞いていたのでその通りだなぁとは思ったのですが・・・
色々今作について調べたり考察していくうちに、もしかしたら原作を知ってる人ほど楽しめたんじゃない!?と思うようになりまして。
なんでそう思ったかっていうと、正直謎が解き明かされるカタルシスがすごく少なかったんですよね。
ポアロおじさんの推理がさくさく出てきて頭も追いつかず、犯人を知ってる人向けの展開の速さ。
私のオツムがカタルシスを得るには足りなかったのか、演出上の問題なのか。
それでも面白かったのは、謎解き要素よりもずっと心掴まれるシーンやキャラクターがわんさか盛りだくさんだから。
特に命を狙われるラチェット役のジョニー・デップのクズっぷりはいい意味で心を鷲掴みにされましたよ。
ずっと心の中で「早くズキュンバキュンされろ!」って思ってました、私。
実際は12箇所を無残にも刺されまくって死ぬという、期待以上の仕上がり。
ジョニデファンには申し訳ないけど、こういうクズな役柄、すっごく似合う。
ジョニデ以外にも沢山の豪華俳優が出てまして、新『スターウォーズ』シリーズのレイ役で有名なデイジー・リドリーも友好的でありながらも謎を秘めた人物を見事に演じていたし、
宣教師役のペネロペ・クルスも漏れ出るフェロモンを抑えた影のある陰鬱な役が印象的だったし、
宣教師役のペネロペ・クルスも漏れ出るフェロモンを抑えた影のある陰鬱な役が印象的だったし、
何より主役であるケネス演じるポアロのキャラクターが愉快でありながら思慮深い人間像として描かれていて素敵。
これらの俳優陣を新年早々拝められるのもありがたい。
原作を知っていても、俳優陣のお見事な演技は楽しめるはず。
ちなみにペネロペ・クルス演じるピラール・エストラバドスは原作には登場せず、アガサ・クリスティーの『ポアロのクリスマス』に登場する人物なんだと。
アガサファンにはたまらんクロスオーバー?
私も「あっ、この人物違う小説に出てるやつやん!」って劇場で叫びたかったぜ。
これからネタバレありきでレビューするので、鑑賞後に読んでね!
計算された華麗なカメラワーク
見所の一つがカメラワーク。
はじめに”おっ”と思ったのが、ポアロが駅構内からオリエント急行に乗り込み車両を歩く長回しのシーン。
車両に乗り込んでからはカメラが外からポアロを追うんだけど、ポアロとミシェル・ファイファー、ジョニー・デップとの掛け合いがちらほら車窓の隙間から見えて面白いシーンでしたよ。
そしてジョニー・デップ演じるラチェットの死体が発見されるシーン。
ポアロが最初に死体を発見するんだけど、ハイアングルで廊下を映すだけで一切死体が映らないんですよ。
医者や他の発見者がわーわー騒いでいるのを見せられるだけ。
これはケネスがヒッチコックの『ダイヤルM』を参考にしたカメラワークらしくて、
観客にも”何がおきているんだ”と乗客に同調させて不安にさせる意図らしいです。
実際もどかしい気持ちになりましたよ。
”本当に殺されたの?実は生きてんちゃうん!” ”12箇所刺されたっつうけど、どんな感じ!?”なんて好奇心全面に出してる自分がお恥ずかしい。
まんまとケネスの手中で踊らされました。
一番感動したのが最後、ポアロが乗客を集めて謎解きをしだすシーン。
それまで車中の狭い額面だったのが、雪山で12人全員が横に並んで座るワイドな画面に切り替わる。
まるで「最後の晩餐」のようなとても厳粛なシーン。
終焉と憂愁の空気が漂っていて、無性に切なくなりました。
『ダンケルク』と同じ65ミリのカメラを使っているので、スケールの大きい美麗な映像が魅力そのものなので、ぜひ劇場の大きなスクリーンで観て欲しいです。
ポアロの新たなるキャラ
やはりこの映画で特筆すべきなのはポアロのキャラクター。
面白いのはアンバランスを許せない強迫性パーソナリティ障害の人物として描かれてる点。
二つの卵の大きさをミリ単位で測り、大きさが不揃いだと手をつけなかったり、
ロバの糞に片足を突っ込むがバランスが悪いからともう片方も突っ込んだり。
かなりの変人っぷり。
そして原作との違いであるポアロの性格。
原作では冷静沈着ですが、今作では人情味溢れるキャラクターになっています。
善と悪についてグレーなことは許さず、理非曲直を正そうとする人物なのは原作と同じですが、徐々に善と悪の基準が曖昧になってきます。
もちろん殺人は許されるべきではないですが、もしも殺された人物が最悪の犯罪者だったら?
そうです、ジョニー・デップ演じるラチェットは過去に子供を誘拐し殺害しているのです。
そしてその事件により人生を狂わされたのが今回の事件の犯人。
その犯人とは乗客である12人全員だったのですね。
正義による犯行を許すべきか?裁くべきか?
迷い苦悶するポアロと犯人である12人の悲しみに感情移入し涙する人もいるのでは。
実際劇中ですんすんする音が聞こえてきましたよ。
はじめは偏屈おじさんだったポアロも段々渋いおじさまになってたので、
地味に恋しそうです。
あっ、でも寝てる時ポアロおじさんはヒゲマスクをするので、それを目にしたらちょっと恋も冷めるかもです。
まとめでーす。
寒々とした美しい雪山と俳優陣の悲しみを湛えた見事な演技も相まって泣ける探偵物になっています。
でも決して暗い気持ちにはならず、寝台特急というノスタルジーな世界観に不思議と心が落ち着く作品でもあります。
お正月に観るにはぴったりだったなと、きっかけをくれた字多丸師匠に感謝しております。
ぜひ2018年映画館に足を運ばれる予定がございましたら、ポアロおじさんと一人のクズと12人の正義に生きる者たちを刮目せよ!です!
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★同じくアガサ・クリスティ原作の探偵物。キャリー・フィッシャー出てるよ。
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