※ネタバレあり 映画『ドント・イット』レビューとイラスト

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シッチェス・カタロニア国際映画祭で作品賞を受賞していたり、世界のいろいろな(聞いたことのない)映画祭でたくさん賞をとっているこの作品。2018年1月に「未体験ゾーンの映画たち2018」で日本公開され、先日レンタルがスタートしたばかりです。

邦題タイトルの雑さ(ドント・ブリーズとITかな?)とか、各レビューサイトでなかなか壮絶に低い点数を叩き出しているところなどで逆に興味が湧いて拝見しました。

下がりすぎたハードルのおかげか、はたまたあまりジャケット写真やポスターなどをちゃんと見ていなかったからか(後述します)意外とハラハラしながら楽しく見ることができました。

特別面白い映画でもないですが、いろいろ損させられてるかもね・・・。

この映画を観るなら

※現在huluやnetflix等の配信サイトでは確認できませんでした。(2018/4/30)

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映画『ドント・イット』概要・あらすじ・キャスト

概要

復讐のため黒魔術に手を染めた女性を待ち受ける運命を描き、シッチェス国際映画祭やポルト国際映画祭などの映画祭で称賛されたオカルトホラー。

息子を殺されたソフィアは、黒魔術で犯人たちに復讐するべく、オカルト信仰者のソロモンを雇って自宅に招き入れる。しかし拷問のような儀式は半年間も続き、もし失敗すれば魂を奪われるという恐ろしいものだった。ソロモン役に「サイトシアーズ 殺人者のための英国観光ガイド」のスティーブ・オラム。「ブルックリン」のロリー・ギルマーティンと「ONCE ダブリンの街角で」のデビッド・コリンズ製作のもと、これが長編デビュー作となるリアム・ギャビンが監督・脚本を手がけた。ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2018」上映作品。(映画.comより)

あらすじ

息子を殺されたソフィアは、黒魔術を使って犯人たちへの復讐を企てる。

オカルト信仰者のソロモンを雇い、儀式を行おうとしていたソフィアは、彼を家まで連れていく。

しかし拷問のような儀式は半年間にもおよび、もし失敗すれば何者かに魂を奪われるという大変危険な賭けだった……。

(「未体験ゾーンの映画たち2018」より)

スタッフ

監督/脚本:リアム・ギャビン

制作:ロリー・ギルマーティン(『ブルックリン』)・デビッド・コリンズ(『ONCE ダブリンの街角で』)

キャスト

●キャサリン・ウォーカー:ソフィア

本作の主人公。

息子を殺され、黒魔術で犯人に復讐すべくオカルト信仰者ソロモンを雇って借家にこもって儀式に没頭する女性。

●デビッド・コリンズ:ソロモン

ソフィアに雇われ、乱暴ながらも儀式の進め方を導く男。ものすごくキレやすい。

映画『ドント・イット』感想

50点

思ってたんとちゃう(いろんな意味で)

おなじみの「誤解を招くことだけを目的とした」クソタイトルから、どうせ変なモンスターが出てくるB級映画だろうと思って見始めたところ、意外や意外、ものすごく美しい映像が始まりました。

アイルランド(劇中ではウェールズという設定だそうですが実際どこかはわかりません)の荒涼とした風景や、陰鬱な空気の屋内での映像。観客を怖がらせたり驚かせたりするシーンの演出もしっかりしていて、割と引き込まれてしまいました。

アブラメリンという、実際に存在する天使や悪魔を呼び出す黒魔術をテーマに、それを達成するための拷問のような儀式の映像が1時間ほど延々と続きます。

レビューサイトなんかを見ているとこれが退屈だったという意見が多いですが、私はなんだかグッと見入ってしまいました。「そんなことをするのかぁ」とか「黒魔術ってそういう考え方をするのかぁ」と感心していたら、全然退屈には感じませんでした。

が、最後の30分くらいが・・・本当に「どっちらけ」でした。中盤までの静謐ながらも緊迫した展開が嘘のように、突然の超ド級のエンディングを迎えます。

これは後述しますね。

夫は隣で「しょうもな・・・」と言って仕事に戻って行きました。

なにそのタイトル

まず邦題の『ドント・イット』て・・・どういう文法??

英語のくだけた言い回しはよくわかりませんが、ちなみにこういう歌があったりするので、間違いというよりは、なんかそういう言い回しがあるのかもしれません。しらんけど。

ちなみにこれは邦題で、原題は『A DARK SONG』というそうです。このタイトルはぴったりです。黒魔術に身を捧げる女性のストーリーとしてハマってると思います。

日本の配給会社がどこだか知りませんし、ある種お家芸ですが、ほんとに残念に思います。映画を作る側にも見る側にも失礼です。

「ドント・ブリーズ」や「IT」を見て面白かった人たちが間違えて観ることを期待してるんでしょうけど、内容は全く違います。

「ドント・ブリーズ」や「IT」が好きな人には、この映画は全く面白くないでしょう。むしろ淡々と進む、ある種ドキュメンタリーのような、カルトじみた密室劇です。

おそらく配給会社の人たちにも「こういうマイナーな作品は、多少タイトルや煽り文句で興味を持ってもらわないと、だれにも手にとってもらえない」という言い分があるんでしょうし、私も実際、このタイトルで(逆に)興味をもって見ました。どんなクソB級映画だろうかとw

が、客を騙して結果残るのって、何? 私は嫌悪感だけが残りました。

いつまでこんなこと続けるんだろう。

普通に、ちゃんとした、真面目に作られた映画でしたよ。好きな人は好きだと思います。

ラストはどうかと思うけどw

とんでもないジャケ写詐欺

各レビューサイトでもほとんどのレビュアーさんがおっしゃっている通りの完全な「ジャケット詐欺」です。ほんとに嘘でしかない。

後ろに写ってるなんか肌がヒビ割れた亡霊みたいなやつ。誰?

出てきません。ていうか、そういう悪霊みたいな世界観の映画ではありません。

前で泣いてる女。誰?

主人公のソフィアはブロンドだし、もっとキツイ顔ですし、こういう「恐怖が迫ってきて泣いちゃう」みたいな女性像ではありません。もちろん怖がることもありますが、むしろ異常な事態を驚くほど淡々と受け入れ、あるいは気に入らなければ激怒するような強い女性像です。

このジャケ写詐欺、何がしたいの?

以前紹介したこちらの『ザ・バトル ネイビーシールズVSミュータント』という作品も同様に、堂々とした「ジャケ写詐欺」です。
清々しいほどにな!

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詳しくは記事を見ていただきたいですが、簡単に言うと、

こんな主人公も、こんな状況(場所)も出てこないし、なんならサブタイトルの「ネイビーシールズvsミュータント」も余裕で嘘です。

「バイオレンスソルジャー降立つ」っていう煽り文とか、最高に笑えます。

しかしこの詐欺は理解できますし、笑って許せます。なぜならこの映画は、このくらいの嘘で煽らないと誰も見てくれないくらいの、見始めても10分でやめるレベルの正真正銘のB級映画だからです。始めからわかってるんです。これが詐欺だって。

でも今回の「ドント・イット」いや「A DARK SONG」は違います。

ちゃんと考えて作られた、映像にもこだわった、見ごたえのある作品で、こういう作品が好きな人が見てくれるようにちゃんと宣伝すれば、ちゃんと届く作品だと思うのです。

いつもは笑って楽しむ配給会社の「詐欺」。今回のそれは、作品の評価をただ下げることにしかなっていません。

日本一の最低な邦題として有名な『バス男』=原題『Napoleon Dynamite』なんてのがあったり、最近は「映画のポスターが現地のものに比べてダサすぎる!」なんていうことが話題に上がるようになりました。

こちらの記事がとっても面白いです。

でもたまに『ランボー』みたいな奇跡を起こしたりしますから、面白いっちゃ面白いですけどね。(『ランボー』は初作で勝手につけた邦題を製作者が気に入って以降そのタイトルが採用されました)

天使と悪魔が丸出しで出てきます

日本の配給会社の「詐欺」への怒りはこれくらいにしといて・・・

ちゃんと内容の話を。

前述の通り、中盤までの1時間ほど、ひたすら過酷な儀式に没頭するシーンは退屈に感じる方も多いでしょうが私は引き付けられ、息がつまるような緊迫感がありました。

しかし終盤、それまでの全てが「どっちらけ」になりました。

なんせ、天使と悪魔が、普通に、バーンって出てくるんです。

前回記事を書いた『バイバイマン』で、「超越的な存在」が普通に映像に出てきちゃうということについての疑問を書かせていただいたところなんですが

http://thegeekstandard.com/2018/04/30/byebyeman/

今回の天使と悪魔は軽々とそれを超えてきましたね。

これって宗教観の違い?

偶像崇拝を禁じる宗教があるのが、少しわかるような気がしました。

超越者であり、別次元の存在であるはずの姿形を、固定された陳腐なイメージとして表現されてしまうと、「ハァ?」となってしまうんです。

これってキリスト教文化/欧米文化なのかもしれませんね。とにかく彼らの映画は「神」や「霊」、「別次元の存在」に、ハッキリとした姿形を与えないと気が済まないんでしょうか?

ヴォルデモート(ハリー・ポッター)でもサウロン(ロード・オブ・ザ・リング)でもサノス(アヴェンジャーズ等マーベルシリーズ)でもなんでもいいですが、なんで彼らは我々に普通に認知できる、輪郭のある人間の形で登場するんでしょうね。しかも表情豊かに。


普通に「人間」のサノっさん(アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー予告より)

まぁ、アクション映画なら、アクションしないといけないので物理的な形があるのは全然いいと思いますが、もしそれが「恐怖の対象」であるなら、私としてはそういう丸出しの超越者が出てくると急に「あぁ、はいはい」となります。

そういえば「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー2」の敵である「エゴ」は「星の意思」なので、最後の方は人間の姿のない「何か」になりますね。アレもアレでアレでしたが、面白かったです。

「超越者」をどう描くか

宮崎駿監督が『もののけ姫』に出てくる「超越者」である「シシ神(デイダラボッチ)」や「タタリ神」を描く際に、細心の注意を払ったという話を思い出します。

まず、彼らの姿は「よくわかんない」ものになっています。常に変化し続けます。

人間なんかの、三次元で生きる我々ごときの眼球では捉えられない高次の存在です。たまたま彼らがこちらの世界に降りてきたときに「なんかいる」というのがわかる程度です。

まぁ映画ですから、もちろんそれを映像にしないといけないので一応の形を与えなければならないのですが、宮崎駿は「存在しているけど、目的も、何を考えているのかもわからない」ものにしなければならないと考えたそうです。

結果生まれたのが、この絶妙に「何を考えているのかわからない」シシ神さまの顔です。


シンプルに怖い

また、2014年に公開された『インターステラー』という映画では「5次元の存在」というものが出てきました。

我々のような3次元で生きている人間には想像することもできない、時間も空間も超越した高次の存在で、それは実は「神」と呼ばれるものなのかもしれません。その辺はややこしい話だし、この映画が科学的にあってるかどうかは置いときます。わけわかめやし。

主人公のマーフィー(マシュー・マコノヒー)が宇宙をさまよい、なんやかんやで巨大なブラックホール・ガルガンチュアに落ちたあと、5次元の存在と出会います。で、彼らに導かれて、時空を超えて地球に帰ってくるのですがその際マーフィーには彼らの姿は見えません。

「なんかいる」ということは感じるのですが、それを見ることはできないのです。時間と空間が重なり合った「5次元世界」を垣間見るだけです。

例えば宇宙が生まれる前の「無」を映像にするのが不可能なように、「神」や「天使」、「5次元」などを映像にするのは本来不可能なはずで、それを簡単にポイっと映像化されると、こちらとしては本当に
どっちらけなのです。

そこまでは良かっただけにより一層ね。

あと、悪魔の姿がアマゾンのヤノマミ族のような部族の姿として描かれていたのは普通に「くだらない」と思いました。潜在的な差別意識が出てるのかもしれませんね。

長くなるのでこのへんでやめときますw

まとめ

すごく損してる映画

天使と悪魔がバーンって出てきちゃったところはまぁ置いといて、中盤までのとても緊迫した展開は非常に面白かったですし、「こんな世界(黒魔術)があるのかぁ」と、興味深く見ることができました。

「日本の配給会社はちゃんと内容を見ているのかな?」と思うくらいの、内容と乖離した邦題と、ポスター・ジャケット等の詐欺宣伝手法には辟易します。

カルト的な異文化を詳細に映像化した意欲や切迫した映像表現は一見の価値ありです。

そして最後は思いっきり笑ってください!

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