ウォーキングデッドのグレンだ! 映画『Z Inc.』レビューとイラスト

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あらすじ

人間のストレスホルモンの濃度を上げて理性と感情のバランスを狂わせる「ID7 ウィルス」が世界中で発生した。感染した者は本能むき出しで欲望のままに行動し、殺人さえためらわない。そんな中、高層ビルにオフィスを構える大手法律事務所の弁護士デレクは、同僚のミスを背負わされ解雇を言い渡されてしまう。彼が荷物をまとめて帰ろうとしていると、ID7 ウィルスが社内で発生。完全封鎖された社内は凶暴化した感染者で溢れかえり、感染したデレクは解雇への不満を爆発させて最上階の社長室を目指す。

映画.comより

感想

82点

こんちゃ!アサミヤです。

今回は『未体験ゾーンの映画たち2018』のラインナップの一つである『Z inc.』を観て参りました。

 

常々この『未体験ゾーンの映画たち』は気になってはいたのですが、中々足を運ぶ機会がなかったんですね。
B級好きを称しながらお恥ずかしい限り。
それがやっと念願叶って行って参りましたよ。

足を運ぶきっかけを作って頂いたのは、岡本健先生。

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さらっと言いましたけど、これとっても有り難くてとってもすごいことよー。
一緒に映画館行ってきたのよー。
鑑賞後は感想言い合ったのよー。
先生と違って明らかに幼稚な感想しか言えない私の恥さらしったらなかったのよー。

それでも行ってよかったですよ。
映画自体も良かったし、岡本先生の貴重なご意見を頂き、このブログに反映できるんですからね。

実はその岡本先生から寄稿して頂きましたよ!

私のレビューの前に先生の文章を載せますのでね。
その方がサクッと全体の内容も入ってくるし、”フェムフェム”と納得して読むの終えちゃうかもしないけど、それはそれで良しとしよう・・・

仕事・会社 ―ストレス社会をサバイブするには

〇感情を操作するウイルス

 『Z Inc. ゼット・インク』は、仕事や会社について考えさせてくれるゾンビ映画である。舞台は高層オフィスビル、主人公はそのビルに入っている企業「タワーズ&スマイス コンサルティング」の社員であるデレク・チョーだ。

 本作では、「ID7」という人間の欲望を解放するウイルスが原因で、人間が凶暴化する。『Z Inc. ゼット・インク』は実は邦題で、原題は『MAYHEM』である。「mayhem」は、「騒乱」という意味で、本作では飲み水に混入したウイルスによって、社内が騒乱状態になる様子を描いている。

 ウイルスが引き起こす症状は、『28日後…』『28週後…』で登場したレイジウイルスに似ている。レイジウイルスに感染した人間は、怒りに支配され、見つけた人間に襲い掛かるようになる。まともな意識はなく、まさにゾンビになってしまうのだ。『28日後…』が強烈だったのは、そんな状態の感染者が全力で走ってくることにあった。本作は、走るゾンビの表象を提起し、広めるのに一役かった。

『Z Inc. ゼット・インク』に登場するウイルスも、同様に怒りや性欲といった本能的な欲求に忠実な状態を作り出す点では共通しているが、異なる点もいくつかある。まずは、意識を完全に失ってしまうわけでは無く、対話などはできる点だ。欲求や感情の高ぶりに忠実になるだけで、会話は成立する。次に、この状態は時間限定である点だ。レイジウイルスは一度感染してしまうと、その状態からは元に戻らない。ID7ウイルスは、作中では、既知のウイルスで、過去にパンデミックを経験しているという設定で、オフィスビルはSWATによって8時間封鎖され、隔離される。ゾンビである時間が限定される設定は日本のマンガ作品『異骸』でも見られる。本作では、無意識で凶暴な人喰いゾンビ状態と、意識を取り戻して普通の人間に戻る状態とを、数時間感覚で繰り返すゾンビが描かれる。

〇半ゾンビ同士のバトルロワイヤル

 またゾンビの表現上も、工夫がなされている。ID7ウイルスに感染すると、片目が赤く染まるのである。作中では、SNSのタグは「赤目ウイルス」だったと説明される。これは、半分人間、半分ゾンビ状態を示していると言えよう。片目だけが変質するという描写は、日本のマンガ作品で実写映画化もされた『アイアムアヒーロー』でも見られる。『アイアムアヒーロー』に登場する比呂美というキャラクターは、他の感染者が両目に異常が見られるのとは異なり、片目だけが変質した。それは見た目だけではなく、他の感染者たちが生きている人間とはほとんどコミュニケーションが取れなくなるのと異なり、主人公の英雄と微妙にコミュニケーションが取れる半ゾンビ状態になった。

 本作では、ウイルス感染者たちは、時間限定の半ゾンビ状態になる。そして、本作の登場人物は、そのほとんどが半ゾンビなのだ。時折、社外の人間と連絡は取り合うものの、描かれるシーンのほとんどはオフィスビル内であり、オフィス内の人間は感染者ばかりだ。つまり、ゾンビ同士のバトルロワイヤルを描いた作品なのである。私は『ゾンビ学』(人文書院)で、ゾンビが登場する映画やマンガ、ゲームなどのコンテンツ文化を分析した。その結果、人間が主人公でゾンビに相対するという設定であったのが、現代的なゾンビ・コンテンツの特徴として、ゾンビと人間の「間の存在」に焦点を当てるものが多くなったことを示した。

 その後、小説および実写映画の『ディストピア』では、メラニーという、これまた半ゾンビ状態のキャラクターが主人公である。ハングリーズ(本作のゾンビ)と人間のハイブリッドである少女メラニーたちは、ワクチン開発のためのサンプルとして、軍事基地内の独房に監禁されている。彼女たちは時間になると軍人によって独房から連れ出され、教室に向かう。教室では、「先生」と呼ばれる実験者たちが、学習能力や認知能力、対話能力などを確かめるために「授業」を行う。メラニーは、研究者のヘレン・ジャスティノーになつき、崇拝すらしていた。基地にハングリーズが押し寄せ、人々は基地を捨てざるを得なくなる。メラニーをことさらに気にかけていたジャスティノーは、メラニーを連れ、数名で逃げだす。一行は、途中メラニーの半ゾンビ的な性質にも助けられながら旅を続け…。こうした設定であれば、メラニーは最終的に人間側につくのではという予想もされるのだが(実際、途中までは人間に協力的だった)、本作における「間の存在」であるメラニーの決断は意外なものだ。

 一行の中で、ワクチン開発に人生をかるキャロライン・コールドウェル博士は、敗血症のため、自身の命が残り少ないことを悟り、メラニーを懐柔して、ワクチン開発に協力させようとする。メラニーはハングリーズでは無く、人間の気持ちをわかる人間だと言い、人間を救うためにメラニーを解剖させてほしいと願う。ジャスティノー先生を助けられることが出来るのはあなたの自己犠牲だけだと言って懇願する。ところが、メラニーは、なぜ人間のために自分たちが犠牲にならないといけないのかと、その願いをはねつけ、むしろハングリーズ化を世界的に拡散する行動をとる。

 私は、このような形で半ゾンビとゾンビたちが勝利するラストが描かれる映画が出てきたら、その後のゾンビ・コンテンツはどこを目指し得るのだろうかと常々考えていた。もはや人間とゾンビの対立ではなく、みんなゾンビなのだ。するとどうなるのか…。『Z Inc. ゼットインク』は軽々と「その先」を描いてみせた。答えは、ゾンビ同士のバトルロワイヤルである。そういった意味でも、本作は実に新しいゾンビ映画だ。

〇ストレス社会とシステム社会

 本作がさらに面白いのは、「ストレス」や「システム」について、現代的な諸問題を鮮やかに浮かび上がらせる点である。

 ID7ウイルスは、先ほど説明したように人間の感情や心理に影響を及ぼすウイルスだ。作中での説明によると、感染すると「急激な気分変動」が生じ、「抗うつ剤」や「コーヒー」などは症状を悪化させる。作中では、こうした様々な「感情や心理に作用するもの」が随所に描かれている。コーヒー、禅、瞑想、コカインといったものだ。登場人物たちは、それぞれに自分の気持ちを落ち着ける物を常用しながら働いている。主人公の一人、デレクは姉からもらったマグカップに執着している。

 そこにID7ウイルスのパンデミックが起こる。全員の感情抑制のタガが外れ、「社会人」として通常は考えられないふるまいをし始める。なんせ、主人公の男女が交わす会話が「最上階に行って、社長をブチ殺そうぜ!」である。仕事上で自分を陥れた相手を倒しながら、どんどん上階に上り詰めていく。とはいえ、社長もおとなしく待っているわけでは無い、刺客を送り込み、コカインを吸い、ゴルフクラブで武装し敢然と襲い掛かってくる。ともすれば陰惨な話にもなってしまいかねない設定を、爽快感を持たせて描いた快作だ。仕事をしている人々なら誰もが感じたことのある「抑圧」をぶっ飛ばす、ストレス発散に実に良い設定になっている。

 とはいえ、何故こんなにストレスが溜まらなければならないのだろうか。『Z Inc. ゼットインク』では、それが明示的に描かれる。それは、会社や契約、解雇などといった「社会システム」なのだ。

 デレクがゾンビ化して成し遂げようとするのは、自分を理不尽に解雇した会社に、そのことを撤回させることだ。デレクは上司のカラに目をつけられ、いわれのないミスで社長からクビを宣告される。ナインと呼ばれる9人の執行役員たちが、簡単な会議でクビを議決してしまう。即座にデレクのデスクに解雇担当者のレスターが現れ、書類にサインするように言う。それを拒否したら暴行され地下室に閉じ込められてしまう。すべてがシステム化され、実行する人間は責任を感じない。デレクのことを一人の人間として丁寧に扱ってくれる人はおらず、みんなそれぞれの「仕事」をこなしているだけだ。

 感染から8時間後にデレクが下す決断は、実に愉快だ。彼は全てを失ったようで、全てを手に入れて見せる。我々も、ストレス社会を「癒し」だけで乗り切るのは不可能なのかもしれない。『Z Inc. ゼット・インク』は、癒しとは真逆な方向からストレスを緩和してくれる、そんな映画だ。

(岡本健先生)

いやぁ、素晴らしい考察でしたね。
『ディストピア パンドラの少女』のくだりとかさ。
私が言いたいことがここに集約されてとります。

なので今回のレビューは終わり。

 

・・・・・としたいぐらいですが、私の文章も以下に載せますので、お暇な方限定で読んでね。


 

まず主演があの『ウォーキング・デッド』シリーズでグレンを演じたスティーヴン・ユァン

彼が出てるってだけで興奮しましたよ。

だって私、2014年開催のハリコンこと「ハリウッド・コレクターズ・コンベンション」でスティーヴン・ユァンと肩組んで写真撮ってきましたから。
(本当は共にゲストで来てたノーマン・リーダス目当てだったけどチケットなかったから仕方なくだったとは言えない。)

実物の彼は大勢のファンを相手にしてても疲れた顔一つせず、似顔絵をプレゼントしたんですが、今考えたら稚拙な絵だと思うんだけど心底感動したような顔してくれてとてもいい人でしたよ・・・

なんてことは置いといて。

『ウォーキング・デッド』ではグレン役としてシーズン1からシーズン7までの長きにわたって人気者だった彼ですが、惜しくもシーズン7のはじめに死亡してしまい、出番はなくなってしまいましたね。

正直グレンの死亡により、私の『ウォーキング・デッド』への熱は驚くほど冷めましたね。
「あれっ、私こんなにグレンのこと愛してたのね」と失ってから気付くパターンのやつです。

ですから私はしばらく『ウォーキング・デッド』を鑑賞することはないでしょう。

グレンとしての彼を観れないのは悲しむべきことですが、見方を変えれば喜ぶこともできるのです。

それは『ウォーキング・デッド』以外でのスティーヴン・ユァンを目にする機会が増えるということ。

スティーヴン・ユァンが出ている映画って初めて観ましたけど、ぶっとんだ演技が最高で、役者としてもっと評価されるべき人なんだと知りました。

だから今後はもっと映画界で活躍して欲しいですね。

 

共演には『死霊のはらわた リターンズ』のサマーラ・ウェイビング
すんごく小顔でクリクリなお目目とツンとしたお鼻がめちゃかわです。

 

前置き長くなりましたが、この映画、全員がゾンビです。

スティーヴン・ユァンは弁護士であるデレクを演じ、サマーラ・ウェイビングは顧客であるメラニーを演じてるのですが、その二人ももちろんゾンビ。

というのも、今作では『人間のストレスホルモンの濃度を上げて理性と感情のバランスを狂わせる「ID7 ウィルス」』というのがデレクが勤めるビルで発生し、封鎖されるのですが、ビル内にいる全員が感染しちゃうのですよ。

だから「デレクとメラニーがゾンビから襲われながらも戦い生き残る」という王道のゾンビストーリーではありません。

むしろこの映画をゾンビ映画と定義して良いのかも定かではありません。

だってID7ウィルスに感染したからって死ぬわけではないし人肉を食べるわけではない。
ただただ人間としての本能むき出しになって人を殴ったりS◯Xしまくったりするだけなのです。

「えっ!?それって別にゾンビじゃないじゃん」ってお思いの方も多いでしょう。

でも、あなた、例えば会社クビになったからってメリケンサック付けて社長殴りに行きますか?
ネイルガン片手に社員の胸元撃ちますか?
身体中に付箋付けて舞い踊りますか?

しないよね。
もしするなら尊敬するよね。
実は一番ヤバいのは付箋付けて踊る奴だと思うけどさ。

いくらぶちギレても普通の人間ならそんなことしませんよ。
メリケンサック手にした時点で理性戻ってくるもの。

だけど『Z Inc.』でウィルスに感染した人は先に挙げたようなことを平気でするのよ。
もう人間じゃなくてモンスターよ。

それにね、「目の描き方」が秀逸なのですよ。
ウィルスに感染した人は片目だけが真っ赤に充血するんです。
普段でも眼球の血管切れて目が真っ赤に染まってる人いるけどさ、結構怖いよね?
ちょっと異常性を感じるというか。

途中で少し話は逸れますが、最近私は「歪なもの」に魅力を感じるんです。
人の顔でも絵でも、少し歪んでるものって心に引っ掛かって忘れらんないというか、逆に歪みのない均等なものって引っ掛かりがなくてすぐに忘れちゃうんですよね。
「美人は三日で飽きる」っていうけど、そういうことじゃないかしら。

『Z Ink.』のゾンビも片目だけが異常に赤いから、両目が赤くなるよりもすごく違和感が大きい。
「普通の人間じゃないけど、完全に人間を捨ててるわけではない」という、すごく曖昧なゾーンにいる。
だから完全なるゾンビとして描かれてるわけではないですが、新種のモンスターとして定義しても良いんじゃないかと思います。

本能剥き出しだけど自らの目的を遂行するという(人間性が残ったゾンビ)の姿を描く上でも、両目を赤くしなかった監督にあっぱれと言いたい。

 

そしてもう一つあっぱれなのは、『タイムリミット』という要素を持ち込み、しかもその使い方が想像を超えてきた所。
ビル内で発生したウィルスですが、外から注入された中和剤により8時間でウィルスの力は弱まるという設定。
普通なら「この8時間の間、ゾンビから逃げ回る」という話にしますが、先に言ったようにこの映画はそんななまっちょろい映画ではございません。

逆に「自らがゾンビである8時間の間にどれだけ殺戮しまくれるか」という話なのです。
劇中、ウィルスに感染している間はいくら人を殺しても罪に問われないという前例があり、それなら自分がウィルスに感染している間にヤっちゃおうよ、ということです。
弁護士であるデレクは自分を突然解雇した社長に復讐する為。デレクの顧客であるメラニーはある書類に社長に無理矢理サインを書かせる為、まるで昔のゲームのように各階のボスを倒しながら地下層から最上階のラスボス(社長)を目指すっていう超面白いお話なのですよ。

ゾンビ映画におけるタイムリミットの定義を逆転させた所が面白いんだな。

 

 

長々書きましたが、この映画はストレスが溜まりまくった人にこそ観て欲しい!!

一社員が”自分の下で働く社員のことなんか一切顧みない上司や社長”をどんどんなぎ倒していく姿は本当爽快!

絶対日本人向けだよ、この映画。

今はフリーの私もかつては雇われの身でしたから、観ていてとても気分爽快でしたよ。
当時の私ならID7ウィルス自らぶちまけたいと思ったでしょうね。

 

デレクたちが闘うアクションシーンや血糊もすごいんだけど、実際に痛々しいシーンはほぼないので、ゾンビ映画苦手な方にも是非観て欲しい。
それに映像もカットインやスローモーションを多用したりで結構こだわってるので、ただのB級映画と侮っては欲しくないですね。
特にオープニングのモノクロの画面に赤い血が飛ぶシーンはおしゃれだし、いきなりお◯ぱいも出てくる(私は女だけどお◯ぱい好き。お◯ぱいは世界の始まりであり、世界を救う。)ので「この映画、最高かも」と思っちゃうよ。

 

「あーぁ、明日も仕事やだなぁ」と思ってる社会の波に揉まれまくってるそこのあなた!
仕事帰りにこれ観て帰りな!
劇場出る頃には「明日こそ部長殴ってやるぞ!・・・・
じゃなくて「明日からも元気いっぱい頑張ろう!」って思えるから!!

 


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コメント

  1. […] こんちゃ!アサミヤです。 『Z.inc』『ザ・バトル』に引き続き、「未体験ゾーンの映画たち 2018」の『ゾンビレックス』を観てきました! […]

  2. […] 前回ご紹介した『ZInc.』に引き続き、未体験ゾーンの映画たち2018に行ってきましたよ! […]

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