2018年アカデミー脚本賞 映画『ゲットアウト』レビューとイラスト※ネタバレあり

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『ゲットアウト』概要・あらすじ

概要

『パラノーマル・アクティビティ』シリーズなどを手掛けてきたプロデューサー、ジェイソン・ブラムが製作に名を連ねたスリラー。恋人の実家を訪ねた黒人の青年が、そこで想像を絶する恐怖を体験する。メガホンを取るのはコメディアンのジョーダン・ピール。『Chatroom/チャットルーム』などのダニエル・カルーヤ、ドラマシリーズ「GIRLS/ガールズ」などのアリソン・ウィリアムズらが出演する。(Yahoo!映画より)

あらすじ

アフリカ系アメリカ人の写真家クリスは、白人の彼女ローズの実家へ招待される。過剰なまでの歓迎を受けたクリスは、ローズの実家に黒人の使用人がいることに妙な違和感を覚えていた。その翌日、亡くなったローズの祖父を讃えるパーティに出席したクリスは、参加者がなぜか白人ばかりで気が滅入っていた。そんな中、黒人の若者を発見したクリスは思わず彼にカメラを向ける。しかし、フラッシュがたかれたのと同時に若者は鼻から血を流し、態度を急変させて「出て行け!」とクリスに襲いかかってくる。(映画.comより)

『ゲットアウト』感想

90点

こんちゃ!アサミヤです。

今回ご紹介する映画はスリラーホラー『ゲットアウト』。

 

予告では不気味に「ゲラァーウト」っていう囁きが響き渡る中で、これまた不気味な人たちが泣いたり叫んだりする、正直意味不明な不思議な映像が流れるんで、「なにこれ、なになに!!??」ってめっちゃ気になってた映画なんですよねー。

実際観てみると、一言「めっちゃめっちゃおもしろい!!」。

とってもおすすめな映画なんだけど、なんの知識も入れずに観に行ってほしい!

なので、今回のレビューの前半部分はネタバレなしでご紹介しております。

後半のネタバレは観賞した後で読んでね!

映画『ゲットアウト』おもしろポイント

これって人種差別映画??

主人公のクリスはアフリカ系アメリカ人である黒人の写真家。

彼女は白人で、家族にはまだ彼氏が黒人であることを話してないそうな。

「大丈夫よ、父はオバマの支持者だから」って彼女は安心させようと言い放つんだけど、その言葉から根底に人種差別のニュアンスが含まれているのが伺える。

いざ彼女の家に招かれてからも、白人の家に黒人の家政婦がいたり、彼女の亡き祖父の懇親会に集まった白人の人々が必要以上にクリスに対して「黒人は立派な遺伝子だ」なんとかかんとか賞賛を浴びせること・・・。

『アメリカンヒストリーX』や『それでも夜は明ける」のようなあからさまな人種差別の描写があるわけでもないのに、じわーーーっと滲み出るような気持ちワルーーーイ空気が流れる。

 

映画を観てる方も、たぶん当事者であるクリスも、親類の中の一人くらい白人至上主義的な人間がいても良いんじゃ・・・?って思うんじゃないかね。

ここまで”黒人って素晴らしい”感を押し付けられると、逆に肌の色の違いが明白になるっていうパラドックス・・・・。

そんな空気の中、クリスは予想もしてない事態に巻き込まれていくわけです。
その事態とは・・・・後半のネタバレを読んでね。

 

この映画の監督は黒人のジョーダン・ピール。

黒人が描く”みんなが憧れる黒人ってこんなんだろ?”ってイメージ像が皮肉に満ちてる。

コメディアンでもある彼の初監督作品が黒人差別を根底としたホラー映画ってのもウェットに富んでますな。

 

典型的な脅かし要素もあるけれど、じわじわーっっと精神にくる不穏な空気は観なきゃ伝わんない!ぜひ劇場で味わって!

アサミヤ選!恐怖映像ベスト3!

人種差別という重いテーマがありながら、要所要所でキーーーーン!やらバーーーーーン!やら大きな音が鳴る典型的な脅かしポイントが盛り込まれていて、しっかりホラーしています。

常に不穏な音も流れているから、結構肩に力入るw

人種差別がテーマにあるからといって謙遜せず、気軽にホラーを楽しんで欲しいのです!

 

ということで、アサミヤが選ぶ『ゲットアウト』で恐怖におののいた映像ベスト3をご紹介します!

第3位 「ゲラーーーッウト!!」

ローズの祖父の懇親会に集まった白人たち。

その中でたった一人、黒人の青年が混じっていて、クリスは近づき写真を撮るんですがね・・・・

誤ってフラッシュがピカッと光った途端、その黒人さんは鼻血を出し・・・

 

「ゲラアアアアアアアーーーーウト!!!」と叫びながら飛びかかってくる。

 

それまで穏やかに、というか見るからに張り付き笑いやったんが突然表情一変させて掴みかかってくるんやから、普通漏らすよね。怖いよね。

 

このシーン、後から考えると・・・・

これもネタバレになるから後半でね!!

 

第2位 めっちゃ走ってくるやん!

 

これ、一位にしても良いくらい怖かったシーン。

 

クリスが外の空気を吸おうと真夜中に家から出ると・・・

広ーーーい庭の暗闇の向こうに、何やら動く影が・・・。

徐々にそれはクリスに近づき・・・・いや、徐々なんてもんじゃない!
使用人の黒人の男が全速力でこっち向かって走ってくんだけどさ!
ジョジョなら”ダダダダダダダダ”とオノマトペが付いてくるだろうダッシュの仕方で、こっちに目線を合わせて走ってくんのよ!

これこそチビるよ!!

ぶつかる寸前のところで回避してどっかにいっちゃって終わりっていう意味のわからなさもまた不気味!!

そんで家の窓見たらダダーーーーンッっていう大きな音と共に家政婦がじっとこちらを見てる姿が映る、畳み掛けの恐怖!

恐怖の天丼!

 

第1位 「ノー・・・ノーノーノーノーノーノーノーノー」

これは予告でも流れるんでね、恐怖を感じると共にめっちゃ心掴まれた人も多いのでは。

使用人の一人である黒人のジョジーナ。
「白人だらけの中で辛いんじゃない?」とクリスから言われると、それまでの笑顔が突然崩れて表情七変化。
やっと笑顔を戻したかと思いきや涙がぼーろぼろ。
クリスの問いかけにやっと答えるも、

 

「ノーゥ・・・ノーノーノーノー・・・・ノノノノノノノノノnnnn」

 

こええ!!が並ぶと「ノ」って読めねぇ!

まだ予告も観てない人は観て!
めっちゃ怖いから!
泣きながら笑いながらひたすら「ノノノノノノノ」言われたら、もう最上級にちびっちゃうから!

 

こっからネタバレ注意!

クリスが招かれたローズの家で何が起こっているのか・・・・

ずばり、それは人身売買!

ローズを含め、一家で黒人を誘拐し白人に売り飛ばしていたのだ!!

親類たちの集まりは、実は黒人を売買するオークションの場だったのだ!!!

 

って書くとホラーじゃないよねー。
ただのサスペンスで終わっちゃう?

じゃあ何がホラーかっちゅうとね、

ローズは彼氏(黒人)を実家に招き入れ、ローズの母は催眠術を使って黒人の意識を乗っ取り、ローズの父はオークションで落札者となった白人の脳みそを黒人に移植する手術を行うという一家のルーチンワーク。

脳みそを黒人に移植することにより、白人の意識が黒人の体を乗っ取り、永遠の命が手に入るわけだ!

ちなみに前出した恐怖映像2位の「めっちゃ走ってくる使用人」にはローズの祖父が、そして恐怖映像第1位のジョジーナにはローズの祖母の意識が入ってるっていうオチです。

自分の祖父と祖母が姿を変えて使用人として家に居るってどんな気分だろ・・・

 

 

んで、ちょっと思ったんですけどね・・・

なんかこれ、『マルコヴィッチの穴』っぽい!

そして家族ぐるみで愉快に犯罪犯してるのって『悪魔のいけにえ』っぽい!

でもただの”ぽい”映画じゃない!

見返したときにゾッとして鳥肌が立つくらい、見事に伏線が張り巡らされている緻密なストーリー構成だから!

すんごいB級な展開なのに、もう一度観たくなる素晴らしい映画なのです!

では、今思えばあのシーンって・・・・

な、シーンをご紹介します!

見返すとゾッとするシーン3選!!

鹿を轢いたあのシーン・・・そこから全てが始まっていた!

序盤にクリスとローズが乗った車が鹿を轢いちゃうんですね。

B級映画とかホラー映画ではよく目にするシーンです。
ゾンビ映画だと、轢かれた鹿が内臓出しながら蘇ったりして一つの盛り上がりポイントですが、
『ゲットアウト』ではこのシーンがはっきり回収されることなく、ただの脅かしポイントのようにも見える・・・。

でも、よくよく考えると、実は大きな意味があるんですねーーー。

 

まず、この映画での大きなキーワードが「催眠術」。

ローズの母に催眠術をかけられた者は”意識の沼”に落ちることで自らのコントロールを失い、最終的には脳も体も乗っ取られちゃうわけですが、クリスもその対象になるわけですね。

で、どんな方法で催眠術をかけるのかと言うと、ローズの母がマグカップを持ってスプーンでそれを”チンチーン”と鳴らすことで対象者は見事に”意識の沼”に落ちちゃうわけですよ。

クリスの禁煙治療と称して向かい合った母に、意図せず催眠術をかけられることからクリスの”奴隷”への道は始まるんですが・・・。

実はそれ以前から催眠術がかけられていた可能性が・・・!

 

それが序盤の鹿轢き事件です。

 

実はクリスの母は轢き逃げ事件により死去していたのです。
幼き頃のクリスは、いつまでも帰らない母を探そうともせず、ただテレビを観て帰りを待っていただけだったと後悔の言葉を何度も口にしています。

母への後悔の念が鹿を轢いたことにより喚起され、彼の意識が少しずつ”意識の沼”に落ちる準備をしていた・・・と考えられるのです。

 

彼女は優しき・・・悪魔!?

鹿を轢いたクリスとローズは警察を呼ぶのですが、その際、運転せず助手席で座ってただけのクリスにも運転免許を見せろと警察は言います。

「なんでよ!彼は関係ないじゃん!」とローズは断固として免許書を渡そうとはしない。

”人種差別を許さない、なんてかっこいい彼女なんだ!”とクリスも観客も感動の嵐ですよ。

 

・・・でもこれ、見返すと結構怖い。

彼女も人身売買の一味であったわけで、ただ単に警察にクリスの存在を知られなたくなかっただけなんですよね。

悪と戦う女ってかっこいい!!と思ったのに・・・彼女こそ一番の悪だった!!

「ゲットアウト!!」の意味

恐怖の映像ベスト3位の「ゲラアアアアアアウト!」と叫ぶシーン。

あれも見返すと違う意味にとれるのです。

 

クリスに写真を撮られて黒人青年は激昂したのではなく、彼の中に眠る本当の”黒人青年”がフラッシュによって催眠から目覚めて「ゲットアウト」と叫んでいたのです。

つまり、クリスに「ここから出て行かないと同じ目に合うぞ!」と忠告してたわけです。

この恐怖映像、実は結構悲しくて痛々しいシーンだったんですな。

 


総評:一度見終わってから「もっかい!もっかい観たい!」となる見事なプロットがてんこ盛り。

人種差別に対するメタファー・・・メタファーどころか行き過ぎた奴隷制度を描いているわけですが、決して重くなく普通にホラー好きな方も心底楽しめる映画になってます。

重くならない要素として、クリスの友人であるロッドの存在が大きい。

クリスと同じく黒人さんですが、見るからにお調子者な感じ。
クリスからローズ一家の気味の悪さを聞いた途端、「性奴隷にされるぞ!!」と決めつけるシーンとか、一番の笑いどころを作ってくれていますw

クリスを何とか助けようと奔走する姿も、気持ちをほっこりさせてくれる。
一番のお気に入りキャラだわ。
ってか、彼とクリス以外、気が狂ったようなキャラしか出てこないからそりゃそうなんだけど。

入念に練られた物語と伏線の数々をぜひ、劇場で楽しんでみてください!!

 


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 以外と真面目に面白い。

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コメント

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