破壊!破壊!破壊! -映画「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」感想とイラスト- ※ネタバレあり

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2015年 アメリカ製作

監督:ジャン=マルク・ヴァレ
キャスト:ジェイクギレンホール
ナオミ・ワッツ
クリス・クーパー
ジューダ・ルイス

超カンタンあらすじコチラ↓

妻を交通事故で亡くしたデイヴィス(ジェイク・ギレンホール)。
普通であれば悲しみにくれるはずが、彼は一滴の涙も流せずにいた。
自分がおかしいのか?
一心不乱に”破壊”という活動をし始めるデイヴィスは徐々に周囲との溝を深めていく。
そしてあるクレームをメーカーに送ったことがきっかけでカレン・モレナ(ナオミ・ワッツ)やその息子と交流を持つようになる。
デイヴィスは本当に妻を愛していたのだろうか?
破壊活動はどこまで続くのだろうか。

喪失と虚無、そして破壊と再生を描いた衝撃の物語。


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映画『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』感想

89点

 

※ネタバレ出てきますので、未見の方はご注意ください。
※この映画はなるべく予備知識なく観て頂きたいので、やっぱり未見の方はご注意を!!

 

皆様こんにちは。
ゾンビとジェイク・ギレンホールが大好きなアサミヤです。

今回は久々にレイトショーで観てきました。
全くの予備知識なしでいったもので、

正直こんなに「破壊」を観ることになるなんて、ビツクリしちゃった。

一癖ある映画が多いジェイク氏なだけに、

ずっと破壊し続けていれば、いずれ破壊神になれる

という結末を見せられるんじゃないかとヒヤヒヤしとったんですがね。

予想裏切られてめっちゃエエ映画でした。

邦題だけ見てると「この映画エエでしょー。めっちゃ泣けるでしょーー。」と押し付けがましい感じがしますが、中身は決してそんなことありまへん。
原題「Demolition」ですから。
そのまんま「破壊」って意味ですから。
マット・デイモンの「We Bought a Zoo(邦題:幸せへのキセキ)」もあまりのあっさりさに逆に感動すらしましたが、海外の方の潔いネーミング・センス、回りくどくなくて大好き。

さて、この映画はいきなし交通事故で妻がなくなるところから始まります。
夫のデイヴィス(ジェイク・ギレンホール)は妻が死んだことを嘆くことも悲しむこともなく、いつも通りの生活を送る。
お葬式で鏡に向かって泣き真似をするんだけれども、すぐに真顔に戻るシーンはゾッとするくらい冷淡。
銀行員として富を得て人が羨む生活をする中で、妻にも周りの景色にも関心を持てなくなっていたんですね。

”本当に妻を愛していたんだろうか?”

デイヴィスは思い悩む中で、あることをきっかけに出会ったカレン・モレナ(ナオミ・ワッツ)とその息子と交流を持ちます。

そのきっかけっていうのが一風変わっていて、妻が死んだ10分後に買おうとした自販機の不具合をメーカーに手紙でクレームを入れたことから始まります。
そのクレームの手紙に妻が死んだことや、クレームに至った経緯などを書くんやけども、顧客担当係のカレンがその内容に泣いて午前2時に電話をよこすんです。

午前2時に?

って感じはしましたが。
でも少しずつカレンを知るにつれて、彼女もデイヴィスと同じく社会という枠の中で生き辛さを感じている人間なんだとわかってきます。
二人は急速に距離を縮めるけれども、一度も体の関係を持たない。
プラトニック・ラブともなんか違う、ただただ心で繋がり癒し合う存在。

そんな二人は電話でやりとりをする内に、お家にもお邪魔する仲になります。
その家族との交流で少しずつ人間らしさを取り戻していく・・・・なんていうありきたりな映画ではございません。
ジェイク氏がそんな映画に出るわけないだろ(知らんけど)

一番のきっかけは亡くなった妻の父がデイヴィスにかけた言葉。

「心の修理も車の修理も同じことだ。

 まず分解しろ。

 隅々まで点検して、組み立て直すんだ。」

その言葉通りに、デイヴィスは水漏れのする冷蔵庫、立て付けの悪い会社のトイレのドア、切れかけの妻の実家の電気などなど、どんどん分解していく(お義父ちゃんが言うてること、そういうことやないけどな)
しまいには解体作業中の現場に乗り込んで見知らぬ家をぶち壊す。
その姿を見ているとこちらは「何の映画を観てるんだコレ」という不安を覚えてしまうわけです。
特に私予備知識なく観ちゃったから。

感情をなくしたデイヴィスはきっと自らを取り戻す為の破壊をしているんだろうな、と先の言葉からもわかるんだけど、それにしても壊しまくる。
本当に破壊神かキミは。

この一連からもこの映画が一筋縄ではいかない映画だとおわかり頂けると思います。
パンフレット中の監督のインタヴューでも「どんな展開になるのか脚本を読んでいても先がわからんかった。ぶっ飛びー!!なんてこと書いてましたから。

その破壊神デイヴィスの、わけわからん世界も、カレンの息子クリスと心を通わせていくことで更なる変革期が訪れます。
クリスは15歳の多感でイタい時期。
爪を黒く塗り、鏡に口紅で的を描いては本物の銃を突きつけてバァーンなんてマネやっちゃったり、大音響の中で鏡に向かって踊り狂ったり・・・。
イタいよね、イタすぎるよね。
無駄にファックを連発するところも、日本のなんも症状出てないのに眼帯とかしちゃいがちな中学生みたいでイタいよね!?
最初は”イタいわぁ、この子イタいわぁ”を心で連発してた私ですが、デイヴィスがクリスの叩くドラム(Mr.Bigという男臭い曲なのがまた良い)に合わせて踊りまくったり、クリスが俺ゲイかもとカミングアウトをしたりする内にデイヴィスと同様に観客である私もクリスとの距離を縮めていくわけです。

小さな頃からなんでも一番になることを求め、周囲の期待通りに生きてきたデイヴィスにとって、クリスは眠っていた感情や人間らしさを思い出させてくれる”象徴”。
問題児であるクリスと共にハチャメチャな破壊行動を取ることによってデイヴィスは無邪気な一面を取り戻していくのです。

そんなクリスと一緒に、築き上げてきた富や権威の象徴であるマイホームをぶち壊し始める。
「なんでもネットで買えるのさ」なんつってブルドーザーきちゃったときは度肝抜かれたけどさ。

そしてデイヴィスは、寝室から出てきた写真を見て妻が妊娠していたことを知るんです。
妻の両親はそのことをデイヴィスに隠していた。
なんで隠してたかっていうと、妻はが浮気をして出来た子供だったから。
打ちのめされるわー。
それでも涙を流さないデイヴィス。
本当に妻のことを何もしらずにいたんだなとわかります。

しかしある日、一度グチャグチャにして捨てた車の日よけの裏に貼られた妻からの付箋に改めて目を向けます。
そこにはこう書かれていました。

「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」

この字幕だけを見ても全然ピンと来ずでした。
パンフレットで星野概念氏の文を読んでやっと意味がわかりました。

「晴れの日は日よけをおろすから私(付箋)に気付くよね」という、”私のこと、たまには見てね”という妻からのメッセージ。

冒頭からずっと妻に無関心なシーンが続いていたのですが、やっとデイヴィスは妻の存在にちゃんと目を向けたのです。
そして初めて涙を流す。
デイヴィスを再生させた一番の存在が、今まで心で封印していた妻だったのですね。
心が壊れるくらいに悲しい出来事である妻の死を心の奥底に封印していた。
本当はあったんです、ちゃんと”愛”が。
その奥底に閉まった箱の鍵を、妻が開けてくれた。
デイヴィスは破壊活動を終え、修復されていくのです。

 

そこからラストシーンにかけて、もう大泣き。
冒頭の能面のように感情の見えないデイヴィスが、子供のように無邪気に走る最後のシーン。
破壊と再生というテーマを爽やかに感動的に締めくくるラストでした。

 

突然ですが骨には破骨細胞なるものが存在するのご存知ですか?
私たちの骨はずっと同じ状態ではありません。
古くなった骨を破壊して新しい骨が生まれるのです。
この映画を観て真っ先に思い出したのが、この骨の破壊活動
人生に於いてもやり直しには「破壊」必要なんだなと骨と絡めて身に沁みました。

今ある生活にすがり付くなかれ。
全部ぶち壊してでも前にススメーー!
という力強いメッセージが込められた映画でしたよ。

もう一回観よ。

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コメント

  1. […] にむせび泣きましたよ。゜゜(´□`。)°゜。ワーン!! 先日鑑賞してきた「雨の日は会えない、晴れの日は君を思う」では妻を亡くした男が身の回りのものを破壊していく中で徐々に感情 […]

  2. […] にむせび泣きましたよ。゜゜(´□`。)°゜。ワーン!! 先日鑑賞してきた「雨の日は会えない、晴れの日は君を思う」では妻を亡くした男が身の回りのものを破壊していく中で徐々に感情 […]

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